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精子の寿命は1週間?精子と卵子の関わりや妊娠の仕組みを解説

精子の寿命は1週間?精子と卵子の関わりや妊娠の仕組みを解説

「精子と卵子が出会うことで受精卵ができ、受精卵が育っていずれ赤ちゃんになる」というと簡単なようですが、妊娠に至ることができる精子と卵子はごくわずかです。そもそも、精子と卵子が出会うことさえ、奇跡であるといえるかもしれません。

「子供が欲しい」「そろそろ妊娠を考えたい」という妊活中の方でも、性交渉をした後の精子の寿命や卵子との関わりなどについては、知らないことも多いのではないでしょうか。妊娠の詳しい仕組みを知ることは、妊活の第一歩です。
この記事では、約1週間といわれる精子の寿命や妊娠の仕組みのほか、精子と卵子との関わりなどについて詳しく解説します。妊娠の仕組みについて正しい知識を身に付けて、妊活や不妊治療にお役立てください。

精子は射精された後、女性の体内で5日間生きる

精子の寿命は、射精されなかった場合と、射精されて腟に到達した場合で異なります。射精されなかった場合、精子は精巣の中で、約1週間で寿命を迎えます。一方、射精されて女性の腟内に入った精子は、女性の体内で約5日間生き続けます。

卵子の元となる細胞は、女性が産まれてきたときに一生分の総数が卵巣内に蓄えられていますが、精子は毎日精巣内で作られ、精巣の上に位置する精巣上体と呼ばれる場所に蓄積されていきます。毎日性行為をして射精したとしても、次々に造精されるため、健康な男性の場合は基本的に精子が枯渇することはありません。
ただし、射精せずに体内に溜まった精子はどんどん古くなっていき、造精されてから1週間を迎える頃には老廃物として男性の体内に吸収されてしまいます。また、外の空気にふれた精子は、ほんの数時間しか生きられません。

性交渉や人工授精(AIH)を経て腟内に入った精子も、酸性に保たれた腟内では長く生きることができず、多くの精子があっという間に運動性を失います。しかし、子宮頸管に溜まった頸管粘液は精子にとって居心地が良く、ここに移動できた精子は5日程生きることができます。

この間、頸管粘液から卵管へ向けて少しずつ精子が供給されているため、排卵された卵子に出会えれば受精する可能性が高まるのです。

精子の寿命=受精できる期間ではない

射精された直後の精子は、卵子を受精させる力(受精能力)を持っていないといわれています。卵管や子宮を通っていく過程で女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)にふれることにより、卵子の中に入り込んで受精させる力をつけていくとも考えられているのです。

そのため、精子が最大の受精能力を持つのは、腟内に入ってからおよそ6時間後と考えられています。受精能力は射精後72時間まで維持されますが、48時間を超えたくらいから動きが弱くなります。体外に出て72時間を超えた精子は、元気に動いていてもほぼ受精能力はありません。

精子の受精タイミング

このことから、精子の寿命である1週間のうち、最も受精する確率が高いのは、射精後6~48時間であるといえます。

卵子と精子のタイミングが合わなければ受精に至らない

健康な男性の場合、1回の射精で排出される精子は2億~3億個に上るといわれていますが、酸性の腟内から子宮頸管へとたどり着ける精子はごくわずかです。6~48時間のあいだに卵管で卵子に出会える確率は、さらに低くなります。

一方、女性側の体内で精子が卵子に出会うためには、排卵が起こることも必須です。排卵が起こるのは、4週間に1度だけ。さらに、卵巣から飛び出したたった1つの卵子を、卵管の先端にある卵管采がうまくキャッチしなくてはいけません。しかも、排卵後の卵子の寿命は24時間です。

妊娠が成立するためには、卵子が生きている24時間のあいだに、受精能力を持つ射精後6~48時間の精子と出会うという、厳しい条件をクリアする必要があるのです。

受精のメカニズム

ここで、受精のメカニズムを確認しておきましょう。下記で紹介するプロセスの中で、ひとつでもうまくいかないことがあると、妊娠は成立しません。

1.卵巣から卵子が排卵する

卵巣の中で育った卵子のうち1つが、4週間に1度の排卵日に卵巣から外に飛び出します。

2.卵管采が卵子をピックアップする

卵管の先にある、ラッパのような形をした卵管采が卵子をキャッチし、卵管内に取り込みます。卵子はここから24時間生きることが可能です。

3.精子が子宮内、さらに卵管内に入る

性交渉によって精子が女性の腟内に入り、頸管から卵管へと移動します。射精後5~6時間以内に卵管に到達できると、妊娠の確率が高まります。

4.受精する

卵管で待つ卵子のもとに精子が到着します。1回の射精に含まれる精子は2億~4億個ですが、ここまでにかなりの数の精子が減り、卵管にたどり着くのは数百個程です。
卵子のもとにたどり着いた精子は卵子の周りを囲み、卵子を覆っている殻を溶かすための酵素を排出します。殻が溶けると、数百個程のうち1つの精子が卵子の中に入り、受精します。卵子の中に精子が入った後、ほかの精子が入り込むことはできません。やがて、受精卵は細胞分裂を始めます。

5.受精卵が細胞分裂しながら子宮内へ移動する

細胞分裂を始めた受精卵は、そのまま7日から10日程かけて子宮内へ移動します。

6.子宮内で着床する

子宮内に移動するあいだに受精卵は孵化し、ふかふかのベッドのようになった子宮内膜にくっついて潜り込んで着床、つまり妊娠が成立します。受精卵ができてから着床するまでにかかる日数は、12日前後です。

妊娠に適した精子の質

妊娠に至るプロセスを問題なくクリアすれば、理論上は妊娠が可能です。しかし、排卵がなかったり、精子の動きが悪かったり、卵子・精子それぞれの質が悪かったりすると、着床までに問題が生じ、妊娠できないことがあります。
ここからは、妊娠に必要な精子の条件と、精子に問題がある場合の解消法について解説します。

自然妊娠が期待できる精子の量や濃度

精子の量や質には、精液量、精子濃度、精子運動率、精子正常形態率の4つの項目において、自然妊娠が期待できる基準値が設けられています。不妊治療クリニックや泌尿器科などで精液検査を受ければ、これらの値を知ることができます。

精液量

精液量とは、射精された精液の総量です。2021年に基準が変わり、現在は1.4mL以上が、自然妊娠が期待できる基準値となっています。

精子濃度

自然妊娠が期待できる1mLあたりの精液に含まれている精子の個数は、1,600万/mLが目安です。

精子運動率

自然妊娠が期待できる精子運動率の基準値は、42%以上となっています。

精子正常形態率

1回の射精で採取できる精子のうち、正常な形をした精子の割合が4%以上であれば、自然妊娠が期待できます。
極端に小さい精子や大きい精子、変形や分裂が見られるものなどは奇形精子といわれ、妊娠は可能ですが正常精子に比べると確率が低くなります。精子は頭部、中間部、尾部に分かれていますが、それぞれ正常な形状をしているのが理想です。

男性側の不妊原因

不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性交渉をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態をいいます。公益社団法人日本産科婦人科学会は、この一定期間を一般的には1年としています。
不妊にはさまざまな原因があり、男性が原因のものを「男性不妊」といいます。不妊症は女性に起因すると思われがちですが、男性側にも原因がある可能性があり、場合によっては男女双方に原因があることもあります。ここでは、男性不妊の主な原因について見ていきましょう。

乏精子症

乏精子症とは、精巣内で精子は作られているものの、射精までの通路に障害があって射精できない精路通過障害のひとつです。標準的な量に比べてかなり精子が少ない場合、この障害が疑われます。
後述する精索静脈瘤が原因の場合、治療をすれば大幅に状態が改善する場合もあります。

無精子症

無精子症とは、精液検査で精子がほとんど存在しない、あるいはまったく確認できない場合に診断される疾患です。無精子症は、精子は作られているものの、通り道が詰まっていて出てこない「閉塞性無精子症」と、精子を作る機能に問題がある「非閉塞性無精子症」に大別されます。

精子無力症

精子無力症とは、精液に含まれる精子の動きが非常に悪く、卵管に向かって移動できない状態です。
精子運動率が40%以下、前進運動率が32%以下の場合に精子無力症と診断されます。受精能力が落ちるため不妊の原因になりますが、運動率だけで妊孕性(妊娠する力・妊娠させる力)を測ることはできず 、良い精子を鑑別することで治療できることがあります。

精索静脈瘤

精索静脈瘤とは、卵巣から伸びている血管やリンパ管、神経などが束になった精索と呼ばれる部分の静脈の機能が悪くなり、血液が逆流することによって瘤のようになる疾患です。精索静脈瘤が精巣の周辺にできると、精巣の温度が高くなり、精液の状態が悪化します。男性不妊の中では最も多く、男性不妊の80%近くは精索静脈瘤が原因だともいわれています。
精索静脈瘤は手術が可能な疾患です。精索静脈瘤を治療した場合、50~70%の確率で精液の状態が改善し、自然妊娠に至る確率も上がるとの報告もあります。病院によっては日帰り手術も可能なので、精液検査で乏精子症や精子無力症と診断された際は、泌尿器科への受診を検討してください。

造精機能障害

造精機能障害とは、精巣で精子を作る機能に何らかの問題があり、精子が十分に作られなかったり、精子の状態が悪かったりする状態です。造精機能障害が乏精子症や精子無力症の原因であることもあります。
生活習慣や食事の見直しで改善する場合もあります。

質の良い精子を作る方法について、詳しくはこちらのページをご覧ください。
精液量を増やすには?妊活のために質の良い精子を作る方法を解説

射精できる力と受精能力はイコールではない

自分の精子が妊娠可能かどうかは、精液検査を受けることで判明します。勃起障害がなく射精できている場合、精子に問題があることに気づくのは困難です。「ちゃんと射精できているから、自分は不妊ではない」と思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、射精で精液が出ているからといって、不妊原因がないとはいえません。精液が出ていても中に含まれている精子が少なかったり、運動率が低かったりすれば、妊娠には至らないからです。そもそも精液のほとんどは液体成分の「精漿(せいしょう)」であり、精子はわずか1~5%程にすぎないのです。

不妊が疑われるときは、まずは男性も精液検査を受けましょう。原因が特定できれば治療できるものが大半です。

自然妊娠しない場合は、原因を調べて不妊治療を検討しよう

健康な男女が、避妊せずに1年間性交渉をしても妊娠しない場合、不妊の可能性を考えて、男女双方が検査をすることが大切です。男性側に原因が潜んでいることも多いため、気になる場合は泌尿器科などで検査することをおすすめします。

にしたんARTクリニックでは、治療前にパートナーとのスクリーニング検査を実施しています。 「不妊かもしれない」という場合はもちろん、「男性側に不妊の心配がある」という場合も、安心してご相談ください。

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