コラム

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「臨床と研究を繋ぐ発生工学の世界」セミナー参加レポート

「臨床と研究を繋ぐ発生工学の世界」セミナー参加レポート

にしたんARTクリニック名古屋駅前院副院長兼培養室長の糟井です。
2025年12月3日(水)に、岐阜大学高等研究院にて『臨床と研究を繋ぐ発生工学の世界』というタイトルのもと学生を対象とした体験型セミナーで講師を務めさせていただきました。そのセミナーの内容をこちらに報告したいと思います。

にしたんARTクリニックの胚培養士と岐阜大学との関りについて

にしたんARTクリニック名古屋駅前院では、私を含め2名の胚培養士が岐阜大学の職員(研究員)として、不妊治療の発展には欠かすことのできない生殖学分野の研究活動に参加しています。私はこの活動について、岐阜大学にも、胚培養士にも、しいては患者さまにも相互に良い影響を与える「三方良し」の関係だと信じ活動しています。

胚培養士にとってのメリット

私たち胚培養士は不妊治療の現場で卵子・精子・胚を専門に取扱うプロフェッショナルですが、その技術や知識の多くは、動物生殖学や発生工学、生体医工学など、大学で積み重ねられてきた研究成果に支えられています。
そのため、臨床業務に従事する胚培養士にとって、日々進歩する技術や新しい研究成果を継続的に学ぶことはとても大切なことです。
岐阜大学の研究室での活動は、単なる学術交流にとどまらず、臨床の質を高めるための重要な基盤になりえます。

岐阜大学にとってのメリット

我々にしたんARTクリニックの胚培養士は、卵子・精子・胚を専門に取り扱うスペシャリストでありテクニシャンでもあります。
大学で研究を行う上で、技術レベルの高さは良いデータを得るために欠かせない要素となっているので、我々の技術力が役に立ちます。
胚培養士として研究活動に参加することは、技術を提供することで研究を効率的に行うようにし新たな知見を得る手助けともなりますし、それが臨床の現場に応用できる可能性も秘めています。また大学としても胚培養士の実践的な技術を学生が学べるということは、研究の推進と人材育成の両面で価値があることだと思います。

まさに「三方良し」の関係

にしたんARTクリニックの胚培養士が、岐阜大学の研究に参加することで、胚培養士側は技術を提供し新たな知見を得られるメリットがあり、大学側は研究活動が加速するメリットがあります。そして、にしたんARTクリニックに通われる患者さまにとっても、常にアップデートされた培養技術や提案を受けられるというメリットにもなる『三方良し』の関係だと信じて研究活動に参加しています。

第一部 講演『胚培養士の職務と臨床課題への研究的アプローチ』

本セミナーの第一部として講演のお時間をいただき、獣医学部や農学部の学生の皆さんに加え、教職員の先生方にもご参加いただきました。
日本が直面している少子化の現状を切り口に、不妊治療の必要性や医療としての役割、胚培養士のおかれている現状から日々の臨床業務について、そして、なぜ胚培養士に研究活動が大切なのかをお話させていただきました。
日本の少子化は深刻な社会問題となっておりますが、少子化の背景には晩婚化やライフスタイルの変化、日本の不十分な性教育による性知識レベルの低さなど、様々な要因が複雑に絡み合っており、単純に解決することが非常に困難な問題です。しかし、その一方で妊娠を望んでいるのに授かることができずに悩んでいる方も多くいるのが現状です。
そこで不妊治療とはどのような医療であり、その中で胚培養士が卵子・精子・胚の管理や培養を通してどのようにかかわっているのかを、にしたんARTクリニックでの実例を交えて紹介させていただきました。
胚培養士に限らずどの職種でもいえることですが、私たち胚培養士も今後のキャリア形成を考えたときに『人と異なる自分の強み』をもった人材にならなければなりません。その一例として大学での研究活動があり基礎研究と臨床研究の橋渡しができることで技術的にも知識的にも強みができることを伝えました。
研究経験を通じて得られる思考力や課題解決力は、臨床だけでなく教育やセミナー活動など多方面でも活かすことができるからです。
今回の講演が、学生の皆さんにとって不妊治療や胚培養士という職業に対する理解を深めるきっかけになっていれば幸いです。

実験体験『ブタ卵子・精子を用いた発生工学体験プログラム』

第二部の実験体験では、岐阜大学 高等研究院 生体医工学研究室の高須正規准教授にご協力いただき、研究室の機器を使用して、卵子・精子の取り扱いや、にしたんARTクリニックの胚培養士が実際に行っている手技を体験していただくプログラムが行われました。
今回はブタの卵子や精子を用いて実験を行いました。動物種によって特徴が違いますが形態的には似ているところが多いため人の生殖医療や不妊治療における胚培養のイメージを具体的に持っていただけたのではないかと思います。
顕微鏡下で細胞を観察し、ピペット操作を行うことで、繊細さと集中力が求められる胚培養士の仕事を実感していただきました。
私たち人間も、こうした小さな細胞同士が出会って生命が始まります。教科書や講義などでは知っていたとしても、実際に自分の目で見たり、自分の手で取り扱ったりという経験は、なかなかできる事ではありません。参加された方にとって貴重な体験になったのではないかと思います。
発生工学を学んだ際には様々な展望があり、活発なディスカッションがいたるところで行われており非常に有意義で楽しい時間となりました。体験型ならではの学びがあったと感じています。

今後の活動と展望

2022年4月に生殖補助医療が保険適用の対象となってから、不妊治療に対する認知度が上がってきています。
そして、胚培養士にフォーカスした漫画や、雑誌の特集なども増えてきてメディアで取り上げられることが多くなってきました。
そのおかげで、職業としての知名度は以前と比べて着実に高まってきています。不妊治療が社会的に注目される機会が増えたこともあり、胚培養士という医療を支える専門職の存在が少しずつ可視化されてきたのだと感じています。
私が学生の時代は同じ学部の友達でさえ知る人が少ない職種だったと記憶しています。
今も昔も、胚培養士が不妊治療において重要な役割を担っている事や、仕事の内容、責任の重さなどに変わりはありませんが、あまり表に出る職業ではないため十分に理解されていなかったという背景があると思っています。


にしたんARTクリニックは、日本最大規模の不妊治療クリニックとして、このような専門職の存在を医療の根幹と捉えています。そして、患者さまにより良い医療を提供していくためには優秀な胚培養士の確保は必須になります。
今回のような岐阜大学でのセミナー活動を通じて、将来、医療や研究に携わる学生の皆さんに対し、にしたんARTクリニックの思いや、胚培養士の実情を知っていただくことができたのではないかと思っています。
そして、この活動が巡り巡って、将来的に不妊に悩む患者さまを一人でも多く手助けできるようになると信じています。
また、大学研究室と胚培養士が協力し基礎研究と臨床研究の発展に貢献していくことができるのであれば、不妊治療のみならず畜産等の幅広い分野でも良い影響をもたらすことができると思います。
今後も大学研究室との連携やセミナー活動を通じて知見を積極的に共有し、胚培養士という専門職の価値を社会に伝えていくとともに、患者さまへ常にアップデートされた培養技術・知識をご提供できるよう努めてまいりたいと思います。
引き続き、にしたんARTクリニックをよろしくお願い致します。

この記事の監修者

にしたんARTクリニック
名古屋駅前院副院長/培養室長

糟井 翼

2014年に北里大学大学院獣医学系研究科修了し、胚培養士として経験を重ね、2023年にしたんARTクリニック名古屋駅前院の副院長兼培養室長に就任。高度な培養技術の研鑽に加え、臨床とマネジメントの両面を担う。患者さまとの会話を最も大切にしており、不安や疑問に寄り添い、治療内容を分かりやすく伝えることを大切にしている。

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