妊活
公開日: 更新日:
昔から「赤ちゃんは授かりもの」といわれるとおり、自然妊娠は決して当たり前のことではありません。晩婚化が進み、妊娠・出産を希望する年齢が高くなっている現代では、自然妊娠が難しい傾向があるといっても過言ではないでしょう。
加齢とともに妊娠のハードルは上がるため、「赤ちゃんが欲しい」と思ったら、できる限り早く動き始めることが重要です。妊活を始めるタイミングと、妊活から不妊治療へシフトするタイミングを逃さないようにしましょう。本記事では、妊活の定義や内容を踏まえて、不妊治療を始めるべきタイミングなどについて解説します。
近年、メディアなどで芸能人が妊活に取り組んでいることを公言したり、一般の人が妊活の記録をブログなどで公表したりすることが増えました。そもそも、妊活とはどのようなものなのでしょうか。
妊活は「妊娠活動」の略で、妊娠・出産に向けて行う活動全般を指します。例えば、下記のような活動が該当します。
健康な男女の多くは「望めばすぐに妊娠できるはず」「避妊をしなければすぐに赤ちゃんができる」と思いがちですが、実はそうではありません。一般的に、女性は20代後半から少しずつ妊娠する力が弱まり、35歳を過ぎるとさらに妊娠しにくくなるといわれています。もちろん女性だけでなく、男性の生殖機能も年齢とともに衰えていくものです。
また、近年の晩婚化の動きによって、妊娠を望んでいるのにできず、より能動的な妊活に取り組む夫婦は増えているといわれています。特に、医療が介入する不妊治療のニーズは高まっています。
公益社団法人日本産科婦人科学会は、「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないもの」を不妊と定義し、一定期間を1年としています。
不妊の要因は女性にあると思われがちですが、原因は男女それぞれに存在します。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
女性の不妊は主に4つの要因が考えらえます。タイミング法や人工授精(AIH)などの不妊治療の成功率を上げるためにも、まずは不妊要因を特定し、早急に治療をスタートさせましょう。
月経が規則的であれば、月経の2週間前に排卵が起こり、子宮内膜は妊娠に向けた準備を開始します。しかし、月経不順や、女性ホルモンの分泌に影響を及ぼす甲状腺疾患、ホルモンバランス異常などがあると、排卵が起こらないことがあります。
排卵がなければ妊娠は成立しないため、原因となる疾患をまず治療しなくてはなりません。場合によっては排卵を誘発する薬を使うなど、排卵を起こす治療を行うこともあります。
卵管は精子と卵子が出合って受精したり、受精卵を子宮に運んだりする場所です。この部分に狭窄や閉塞があると、受精や着床ができず妊娠が成立しません。卵管閉塞の原因はクラミジア感染症や子宮内膜症などであるため、まずはこうした症状を取り除く治療を行います。
子宮頸管は子宮から腟につながる筒状の部分です。排卵が近くなると子宮頸管に粘液が増え、精子が子宮に入るのを助けます。そのため、子宮頸管が狭窄していたり、粘液の量が少なかったりすると、精子が通ることが難しくなるのです。原因として考えられるのは、先天性の子宮頸管の異常や、クラミジアや細菌感染による炎症などが挙げられます。
不妊につながる子宮の疾患には、精子の移動や受精卵の着床を妨げる子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどがあります。ただし、子宮筋腫やポリープがあっても、問題がなく妊娠できる場合も少なくありません。位置や大きさが妊娠を妨げている場合や、子宮内腔の変形の原因になっている場合は、治療を行う必要があります。
卵子の元になる「卵母細胞」は、女性が胎児のときに作られ、成長とともに数が減少します。卵母細胞は37歳を境として急激に減少していき、1,000個以下になると閉経します。
卵母細胞が新たに作られたり、補充されたりすることはないため、体内にある卵母細胞は出生したときから老化し続けていることになります。
男性の不妊は、主に下記の4つの要因が挙げられます。治療は泌尿器科やパートナーと共に婦人科で行えますが、最近では男性不妊治療専門のクリニックもあります。
精子がいない無精子症、存在はしているものの数が少ない乏精子症、精子の運動性に異常がある精子無力症などの場合、精子の数や機能に問題があるため、卵巣に到達できる精子が非常に少なく、自然妊娠に至る可能性が低くなります。
これらの要因には、先天的な精巣の機能異常によって精子が作られない場合と、成人後の精巣炎や精巣がん、およびその治療のための抗がん剤によって無精子症になったり、精子の数が減ったりする後天性の場合があります。
精管の狭窄や詰まりは、精巣で精子は作られているものの、精子の通り道である精管に何らかの問題があり、射精できないことが原因の不妊です。
原因としては、先天的な奇形のほか、精液が逆流する逆行性射精、鼠径ヘルニアの手術による影響などがあります。
性機能障害とは、性交渉を行うための機能に障害がある勃起障害・射精障害(ED:Erectile Dysfunction)のことです。妊活で計画的に性交渉をすることへのプレッシャーなど、ストレスが原因であることが多いといわれていますが、加齢や糖尿病が原因のこともあります。
精巣で精子を作る機能は、加齢とともに低下します。同時に、精子の運動率や正常形態率も加齢とともに低下することがわかっています。
妊活の中でも、医療が介入するものを不妊治療といいます。生活習慣を見直したり、基礎体温から妊娠しやすい排卵日を予測し、その前後に性交渉を行ったりしても妊娠の兆しが見えない場合、妊活のステップアップとして不妊治療を検討するといいでしょう。時期に明確な決まりはありませんが、不妊の定義である1年を目安にすることが多いようです。
妊孕性(にんようせい:妊娠する力)に問題がない健康な男女が避妊をせずに性交渉をした場合、1年で8割、2年までに9割 が妊娠すると一般的にはいわれているからです。しかし、最近では3組に1人以上の夫婦 が1年を超えても妊娠に至らず、不妊を心配しているともいわれています。
国立社会保障・人口問題研究所が行った「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によれば、4.4組に1組の夫婦が不妊の検査や治療を受けていました。 夫婦ともに年齢が高い場合や、女性の年齢が30歳代後半である場合、40歳代で初めて妊娠を考えている場合は、1年の区切りを待たずにクリニックを受診することをおすすめします。
※出典 国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」(2023年8月)
不妊治療を受けることについて夫婦間で合意したら、まずは婦人科を受診して検査を行います。男女共に仕事との両立を考えるためにも、大まかな不妊治療の流れを把握しておきましょう。
初めての受診診の際は、検査・治療の流れや不妊治療の種類、料金などについて説明を受けます。説明に納得したら、問診票にもとづいて行われる医師の診察を受けます。ただし、不妊治療で選択される治療やその期間には個人差があり、料金も大きく異なります。初診の段階で受ける説明は、ごく一般的な内容であることを理解しておきましょう。
初診時では、主に下記のような質問が想定されます。不安な方は、メモなどを用意していくと落ち着いて回答できるのでおすすめです。
初診時は月経中であっても問題ありません。不妊治療の開始が遅れて妊娠の可能性が低下するのを避けるためにも、「思い立ったが吉日」で早めの受診を心掛けてください。
不妊の原因はひとつではありません。女性と男性、それぞれに原因がある可能性があり、複合的な要因が絡み合っている可能性もゼロではないのです。
そのため、まずは不妊の原因について詳しく調べる必要があります。女性の場合、一般的に行われる検査は下記のとおりです。
低温期なら子宮卵管造影検査が追加されることもあります。
こうした基本検査で要因が特定できない場合は、卵管や卵巣の機能や状態などをさらに詳しく調べていきます。
検査で原因がわかれば、原因に応じた治療をスタートします。検査で要因が特定できない場合は、排卵日を診断して性交渉を行うタイミング法から試していくことが多いでしょう。主な治療法は下記のとおりです。
排卵日を診断し、妊娠しやすいタイミングで性交渉を行うよう指導します。医療機関のタイミング法は、超音波検査やホルモン検査で正確に排卵日を推測するため、個人で行うよりも確率が高くなります。
男性の精子には問題がなく、女性側に軽度の排卵障害がある場合などに選択される治療法です。
タイミング法で妊娠が成立しない場合や、精子の数が少ない、運動率が低い、性交障害があるといった男性不妊の場合、精子が子宮に向かう子宮頸管に問題がある場合には、男性の精子を採取して女性の子宮に直接注入する人工授精(AIH)が行われます。
人工といっても、人の手がサポートするのは精子の採取と注入のみです。受精するか否かは精子の力と、女性の妊娠する力にかかっているため、ほぼ自然妊娠と変わらないといえます。人工授精までは、「一般不妊治療」の領域です。
男性の精子と女性の卵子を採取し、体外で受精させて培養してから子宮に戻す方法を、体外受精(C-IVF)といいます。2022年4月から、保険適用で治療が受けられるようになりました。女性に不妊要因がある場合や人工授精を試した後に行われます。
卵子を多く育てるために排卵誘発剤を使ったり、採卵時に麻酔をしたりといったプロセスがあるため、女性の身体的負担が大きいという側面があります。体外受精(C-IVF)からは「生殖補助医療(ART)」の領域になります。
顕微授精(ICSI)は、選んだ精子を直接卵子に注入する方法です。精子の量がかなり少ない場合や、体外受精(C-IVF)で妊娠しなかった場合に選択されます。
不妊治療を行うにあたり、最も気になるのは費用面ではないでしょうか。
不妊治療に高額なイメージがあり、踏み出せずにいる人も多いかもしれません。こうした経済面のハードルを下げ、不妊治療に取り組みやすくするため、2022年4月から人工授精(AIH)などの「一般不妊治療」および体外受精(C-IVF)・顕微授精(ICSI)といった「生殖補助医療(ART)」の保険適用が決まりました。
先にご紹介した治療法であれば、通常は保険が適用されると考えて良く、以前に比べて格段に負担が軽減されます。
ただし、誰もが無制限に保険適用の対象となるわけではありません。保険適用の条件は、下記のように決められています。
治療を開始するタイミングにおいて、女性の年齢が43歳未満であること
40歳未満の場合は通算6回まで、40歳以上43歳未満の場合は通算3回まで
なお、医療機関などの窓口で支払う金額が一定の金額(自己負担限度額)を超えて高額になった場合、超過した分の金額を支給する「高額療養費制度」も利用することができます。
制度をうまく活用して、経済的な負担を軽減しながら不妊治療を受けましょう。
不妊検査に漠然とした不安や抵抗がある方は多いものです。しかし、漫然と先延ばしにしていると、不妊治療の難度が上がったり、治療期間が長引いて心身の負担や経済的な負担が増したりする可能性があります。 妊活のスタート後、「もしかして不妊かな?」と思ったら、できるだけ早く不妊治療にステップアップすることをおすすめします。
にしたんARTクリニックでの
治療をお考えの方へ
患者さまに寄り添った治療を行い、より良い結果が得られるよう、まずは無料カウンセリングにてお話をお聞かせください。下記の「初回予約」ボタンからご予約いただけます。