不妊治療

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不妊治療で休職できる?期間や必要書類について解説

不妊治療で休職できる?期間や必要書類について解説

不妊とは、健康な男女が避妊をせずに一定期間性交渉をしても妊娠に至らないことをいいます。不妊にはさまざまな原因がありますが、加齢も大きな原因のひとつであることから、早く不妊治療をスタートさせるに越したことはありません。
とはいえ、不妊治療と仕事との両立に悩む人が増えているという現状もあります。不妊治療は、治療のスケジュールに応じて不定期に休暇を取らざるをえないなど、職場での立場やキャリア形成に大きな影響を及ぼすからです。
「産休・育休のように、有給で足りない部分を補う休職制度が欲しい」というのは、不妊治療中の女性たちの切実な願いなのではないでしょうか。
そこで本記事では、不妊治療と仕事を両立するための手立てについて、休職する方法を含めて詳しく解説します。

不妊治療で生まれる子供は増加している

現在、国内で不妊を心配したことがある夫婦は、全体の39.2%に上るといわれ、2023年8月発表の国立社会保障・人口問題研究所のデータでは、約4.4組に1人が実際に不妊の検査や治療を受けています。
実際に不妊治療を経て子供を授かるケースも増加しており、厚生労働省の調査によれば2020年に約6万人が生殖補助医療(ART)によって誕生しました。これは、全出生児の約7%にあたり、おおよそ14人に1人の割合になります。

不妊治療と、不妊治療による出生数の増加の背景には、女性の社会進出が進んでいることのほか、精神的・物理的・経済的な負担に対する漠然とした不安から、結婚や妊娠・出産を希望する年齢が高くなっていることがあると考えられます。
「人口動態調査 人口動態統計」によれば、2020年の平均初婚年齢は夫が31.0歳、妻が29.4歳でした。1985年に比べて夫が2.8歳、妻は3.9歳も上昇しています。
また、同じく2020年における出生時の母親の平均年齢は、第1子が30.7歳、第2子が32.8歳、第3子が33.9歳でした。これも1985年と比較すると、第1子で4.0歳、第2子で3.7歳、第3子で2.5歳の上昇となっています。晩婚化・晩産化の進行が、不妊治療に取り組む人の増加につながっていることがわかるでしょう。
こうした現状から、今後も不妊治療に取り組む夫婦と、不妊治療によって生まれる子供は増えていくと考えられます。

不妊治療と仕事が両立できない人は3割強

不妊治療は、近年の夫婦が妊娠・出産を実現するためのごく一般的な選択肢になりつつあります。
そこで、重要な課題となっているのが「不妊治療と仕事との両立」です。不妊治療そのものや出産・育児にかかる費用、そして自身の産後のキャリアのため、仕事と治療を両立したいと考えている人が多くいる一方、「不妊治療と仕事が両立できない」として離職したり、治療をあきらめたりする人も少なくありません。

厚生労働省の調査では、「不妊治療をしたことがある(または予定している)」と答えた働く人のうち、「仕事と両立している(または両立を考えている)」とした人の割合は53.2%、「仕事との両立ができなかった(両立できない)」とした人の割合は34.7%でした。
ここからは、「両立できない」「できなかった」理由について、代表的なものをご紹介します。

※出典 厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査研究事業」(2018年3月)

精神面での負担が大きい

不妊治療は、子供を授かるための前向きな行動です。しかし、治療を受ければ必ず妊娠できるわけではありません。なかなか治療の成果が出ず、残念ながら喪失体験を繰り返すこともあります。期限が決まっていればなんとか気力を振り絞ることができても、ゴールの見えない状態で走り続けるのは精神的にきついものです。

しかも、治療に終わりがないということは、仕事との両立の工夫にも終わりがないということです。周囲に迷惑をかけ続けているという罪悪感や、このままでは自分のキャリアが失われてしまうという焦燥感が募り、次第に精神的なダメージとして蓄積していく可能性は大いにあるでしょう。
実際、治療が長期化するほど抑うつ傾向になる人が多いともいわれています。

通院回数が多い

一般不妊治療では、月経1周期ごとに1回1~2時間程度の通院が2~6日必要です。さらに、不妊治療が体外受精(Conventional-IVF/ふりかけ法)や顕微授精(ICSI)に進むと、月経ごとに1回1~3時間程度の通院を4日~10日、1回あたり半日~1日程度の通院が1~2日程必要で、通院の頻度が増すことになります。

スケジュールは個人の状況によっても異なりますが、「不妊治療をしていることを知られたくない」として公表を控えている場合、これだけの日数を半休や有休で乗り切るのは困難でしょう。治療を公表していても、休む回数が多いと周囲の目が気になったり、過度な気遣いを負担に感じたりします。
頻繁に通院することに対して、パートナーをはじめとした家族、医療施設、職場などの理解が得られず、心ない言葉をかけられることをつらいと感じる人もいるでしょう。

体調、体力面での負担が大きい

不妊治療は、人によっては体力的な消耗が激しいと感じることもあります。特に体外受精(C-IVF)では、女性の排卵を促すべく排卵誘発剤が使われるため、副作用のリスクがあります。薬剤の進歩によって副作用は出にくくなっており、すべての女性に重い副作用が現れるわけではありませんが、母体の負担が大きいことは事実でしょう。
具体的には、下記のような副作用が起きる可能性があります。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)は、排卵誘発剤によって卵胞が過剰に刺激されることにより、一度にたくさんの卵胞が育つことによって起こる症状の総称です。
卵巣が腫れたり、おなかや胸に水が溜まったりするほか、頭痛や吐き気などが起こることもあります。こうした不快な症状が続けば、集中力が削がれて仕事に影響を及ぼしたり、体調によっては休まざるをえなかったりする可能性があります。

多胎妊娠

体内に戻した胚が自然分裂して、多胎妊娠となることがあります。赤ちゃんを望んでいる人にとって、妊娠することそのものは喜ばしいことですが、多胎妊娠は妊娠高血圧症候群や切迫早産などのリスクが高まることに注意しなくてはなりません。
母体と胎児の安全を優先して高次医療機関での特別な管理が必要になると、仕事との両立はより難しくなります。

不妊治療のスケジュール

仕事と不妊治療の両立を考えるには、実施する可能性がある治療や、大まかな通院日数の目安を把握しておく必要があります。ただし、不妊の背景には夫婦固有の事情があり、検査方法や治療方法は個別に大きく異なります。男性にのみ不妊の因子がある場合と女性のみにある場合、双方にある場合で、検査や治療の選択肢が変わってくるからです。

不妊治療は、大きく一般不妊治療と生殖補助医療(ART)に分かれます。

一般不妊治療

一般不妊治療とは、排卵日を推定して妊娠しやすい時期を指導するタイミング療法と、排卵時期に精子を子宮内に注入する人工授精(AIH)のことです。どちらも、受精以降は精子と卵子の力にかかっているため、自然妊娠にごく近い方法であるといえます。

生殖補助医療(ART)

生殖補助医療(ART)は、一般不妊治療で妊娠に至らない場合に選択される体外受精(C-IVF)と顕微授精(ICSI)です。体外受精(C-IVF)は、卵子と精子を外で受精させ、培養してから体内に移植する方法になります。顕微授精(ICSI)は、細いガラス針の先端に精子を1つ入れ、顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入する方法です。

一般不妊治療から生殖補助医療(ART)にステップアップした場合、男性の通院頻度はほぼ変わりませんが、女性はより頻繁に通院しなくてはなりません。1回あたりの診察時間も長くなります。

あくまでも目安ですが、タイミング療法、あるいは人工授精の場合、女性の場合で診療時間が1回につき1~2時間、回数は2~6回程度です。体外受精(C-IVF)と顕微授精(ICSI)では、女性の場合で診療時間が1回につき1~3時間、回数は4~10回程度となり、それ以外に半日から1日程度の通院が1~2回ある場合もあります。

不妊治療と仕事を両立するには?

不妊治療中の負担を軽減し、うまく両立を図るにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは、2つの方法をご紹介します。

自分の会社の制度を調べる

厚生労働省の「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査研究事業」によれば、不妊治療中、治療経験者、治療予定者が会社に希望することとして、「不妊治療のための休暇制度」「柔軟な勤務を可能とする制度」「有給休暇を時間単位で取得できる制度」が多くを占めています。

2020年5月29日に閣議決定した「少子化社会対策大綱」では、仕事と不妊治療の両立に役立つ制度の導入に取り組む事業主を支援し、不妊治療と仕事の両立のための環境整備を推進することが示されました。
これを受けて、柔軟な働き方を可能にして両立しやすくしたり、不妊治療を理由として休暇を取れる(休職できる)制度を設けたりといった独自の取り組みをする企業も増えてきています。
また、にしたんARTクリニック各院では、仕事帰りでも通院しやすいように、平日は22時(神戸三宮院のみ20時)まで診療を行っているほか、土日祝日も診療を行っています。通院しやすいクリニックを選ぶのも、不妊治療と仕事を両立する選択肢のひとつです。

不妊治療を目的とした休職・休暇制度例

不妊治療休職制度

生殖補助医療(ART)を行う場合に、最長1年間休職できる。休職期間は無給。

出生支援休職制度

不妊治療を行う場合に、最長1年間休職できる。休職期間中、社会保険料に相当する額を会社が補助する。

上記のように、不妊治療に特化したものではなくても、既存の制度が不妊治療に活用できることがあります。不妊治療と仕事の両立を希望する場合、まずは自社の制度や就業規則を確認しましょう。使い方や使える範囲、使用可能な回数などに疑問がある場合は、人事労務などの担当者に相談するのもおすすめです。

例えば、下記のような制度が不妊治療に活用できる可能性があります。

不妊治療に利用できる可能性がある休暇・休職制度

フレックスタイム制度

1ヵ月以内の一定期間における総労働時間を定めておき、その中で始業・就業を自由に決定できる。

半日単位、あるいは時間単位で使用できる年次有給休暇制度

年次有給休暇を半日単位で使用する。または、5日以内であれば時間単位で使用することができる。

失効年次有給休暇の積立制度

自動で消滅する年次有給休暇を積み立てておき、必要なときに使用できる。年4日を限度に最大40日まで積み立てが可能。

所定外労働を制限する制度

あらかじめ就業規則に規定されていれば、所定外労働の免除・時間外労働の制限をすることができる。

短時間勤務制度

何らかの事情がある従業員が、所定労働時間よりも短い時間で勤務することができる。

テレワーク

オフィス以外の自宅などで、出勤せずに勤務することができる。

不妊治療連絡カードを活用する

厚生労働省が作成した「不妊治療連絡カード」は、不妊治療を受ける、または今後予定している労働者がスムーズに企業に事情を伝えたり、制度を利用したりするために活用することを想定しています。厚生労働省のウェブサイトからダウンロードして利用しましょう。

カードの項目を埋めて担当者に提出することで、「不妊治療の実施時期(予定時期)」「特に配慮してほしい事項」などをわかりやすく示すことができます。
また、裏面には、不妊治療の現状や不妊治療のスケジュール目安などが記載されており、企業側の理解を促すためにも有効です。

※出典 厚生労働省「不妊治療連絡カード

不妊治療に適した制度を上手に活用しよう

不妊治療と仕事を両立するには、企業側の協力も不可欠です。行政の働きかけもあって企業側の制度も充実してきているため、まずは自社にある制度を確認しましょう。法律による休暇・休業制度はありませんが、企業が制度として定めていれば、不妊治療を目的とした休職が可能です。
不妊治療に特化した制度がない場合も、応用できる制度がないか、またその使用が可能かどうか、担当者に確認してみることをおすすめします。キャリアも妊娠もあきらめないために、制度を上手に活用して治療に取り組んでください。

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