胚凍結

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胚凍結とは?Embryo Freezing

体外受精(IVF/ふりかけ法)や顕微授精(ICSI)では、女性の体から卵子を取り出す「採卵」というプロセスが欠かせません。できるだけ多くの質の良い卵子を取り出すことが、不妊治療の成否を決めるカギのひとつになるからです。
といっても、採取できる卵子の量や質には個人差があり、特に獲得できる卵子の数は年齢とともに減っていきます。
採卵の回数を減らして肉体的・精神的な負担を軽減し、妊娠率向上にも寄与するのが「胚凍結」です。

胚を凍結保存する理由

採取した卵子と精子が体外受精(IVF)、あるいは顕微授精(ICSI)を経て受精卵となり、細胞分裂を経て「胚」と呼ばれる状態に成長します。生殖補助医療(ART)を行うと、1度の採卵で多くの卵子が採取でき、たくさんの受精卵(胚)ができることがあります。

しかし、できた受精卵(胚)をすべて移植すると多胎妊娠のリスクが高くなり、母子に与える影響が大きくなります。そのため、 35歳未満の初回治療や良好な胚盤胞の場合は一度の胚移植で移植する胚は1個とすること、そのほかのケースでは最大2個とすることが公益社団法人日本産婦人科学会の見解として明示されています。この場合、移植しなかった胚は、たとえ良好であっても余剰胚として廃棄するしかありません。そこで、良好な余剰胚を活かす方法として確立されたのが胚凍結です。

胚を凍結させることにより、1回の採卵で複数回の胚移植ができるようになり、妊娠率の向上や、何度も採卵をすることによる肉体的・精神的ストレスの軽減が図れるようになりました。
子宮内環境不良やOHSS(卵巣過剰刺激症候群())などの場合は、採卵でダメージを受けた子宮を休めることで着床率が上がるため、採卵から胚移植までの期間を空けられる胚凍結が必須です。

胚凍結の手順

胚は、細胞分裂開始後の時期によって「分割期胚(受精後2~3日目)」「桑実胚(受精後4日目)」「胚盤胞(受精後5~6日目)に分けられます。
どの時期に胚凍結を行うかは、余剰胚の質や数などを見極めて医師と胚培養士が決定しますが、胚盤胞期に凍結することがほとんどです。胚凍結は、下記の流れで行います。

1. 胚を保護し、デバイスに入れる

胚が凍結によってダメージを受けることがないよう、凍結保護剤に浸した後、専用のデバイスに封入します。

2. 液体窒素の中で保存する

デバイスを-196℃の液体窒素の中に入れて凍結し、液体窒素タンクで保存します。液体窒素タンク内では、胚を半永久的に保存することができます。

胚凍結のメリット

胚凍結は、患者さまにとってメリットの多い方法です。主なメリットは下記のとおりです。

1回の採卵で妊娠率の向上が見込める

1回の採卵で得られた複数の胚を凍結しておくことにより、採卵を繰り返さずに複数回の胚移植を実施できることは大きなメリットです。1採卵あたりの妊娠率向上が期待できます。

保存した胚を第2子以降の妊娠に活用できる

胚は、原則として生殖可能年齢までは保管することができ、融解すれば治療に使用することができます。
1度目の移植で妊娠が成立して残りの胚を使わなかったとしても、数年後に第2子の妊娠のために凍結胚を使用することが可能です。排卵誘発や採卵をせずに、胚移植から不妊治療をスタートすることができます。

身体的・精神的・金銭的負担が軽くなる

採卵回数が減ることで、心身ともに負担が軽くなります。また、採卵のたびにかかっていた費用が1度の凍結費用に圧縮され、金銭的な負担も軽減されます。

子宮内環境が最も良い状態で移植できる

排卵誘発剤を使った周期の子宮は子宮内膜が十分に厚くならなかったり、腫れたりするなどし、移植に適さない状態であることが少なくありません。
胚をいったん凍結することで、子宮を休ませることができ調整する期間が作れることも大きなメリットです。妊娠に適した、最も良い状態で胚を移植できます。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の重症化を予防できる

排卵誘発剤を使用する不妊治療では、卵巣の腫れや下腹部の痛みなどを引き起こすOHSSの発生リスクがあります。
OHSSは胚移植後、妊娠成立時に多く発生するため、卵巣の腫れの状態を見ながら胚移植できる胚凍結が重症化予防に有効です 。

移植スケジュールを立てやすい

胚凍結後は、ホルモンを補充せず自然排卵を待って胚移植をする方法と、卵胞ホルモンを投薬して自然周期を抑えて移植する方法があります。
後者の場合、排卵のコントロールが効くため、自然周期に比べてスケジュールが立てやすいでしょう。通院回数も自然周期より少なくて済みます。仕事やプライベートの調整が必要な患者さまには、メリットが大きいといえます。

胚凍結のデメリット

メリットがとても多い胚凍結ですが、デメリットもあります。胚凍結のデメリットは下記のとおりです。

凍結、融解する際にダメージを受ける胚もある

胚凍結の結果、すべての胚が正常に治療に使用できるとは限りません。胚を凍結したり融解したりする際に、低い確率ながら変性したり、破損したりして死滅してしまうこともあります。こうした場合、移植をキャンセルしなくてはなりません。

採卵から、最低1ヵ月以上空ける必要がある

採卵から胚凍結を経て移植を行う場合、採卵と同じ周期内で胚移植を行うことはできません。採卵と同じ周期で行う胚移植は、「新鮮胚移植」と呼ばれるとおり、凍結をしていない新鮮な胚を使用します。
そのため、移植まで最低でも1ヵ月、長くて2ヵ月の期間を空けることになります。場合によっては、妊娠成立までの期間が長くなる可能性があることは把握しておきましょう。

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