顕微授精(ICSI/イクシー)について

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顕微授精(ICSI/イクシー)は、体外受精(IVF/ふりかけ法)で受精することができない場合に、精子を1個選別し、細いガラス管を用いて卵子に直接注入して受精させる方法です。にしたんARTクリニックで行っている顕微授精について詳しくご紹介します。

顕微授精(ICSI)とは

生殖補助医療(ART)には、濃度を調整した精子を卵子にふりかけて受精させる「体外受精」と、「顕微授精」の2種類があります。

顕微授精は、体外受精で受精することができない場合に、精子を1個選別し、細いガラス管を用いて卵子に直接注入して受精させる方法です。正式名称を「卵細胞質内精子注入法(IntraCytoplasmic Sperm Injection)」といいます。

Doctor's Message

顕微授精を行うのは、体外受精を実施しても受精が成立しなかった場合や、体外受精をしても受精しないと判断される場合です。具体的には、女性の年齢が高い場合や卵子の数が極めて少ないケース、男性の精液中の精子濃度や運動率が低く、顕微授精以外では受精の可能性が極めて低いケースで、次のステップとして顕微授精を行います。
にしたんARTクリニックでは、患者さまが希望される場合も顕微授精を行うことも可能です。カウンセリング時に、ご相談ください。

顕微授精(ICSI)の費用

顕微授精(ICSI)をおすすめするケース

顕微授精は、体外受精よりも妊娠率が高い治療方法です。そのため、不妊治療を始める患者さまの中には、高齢で妊娠のタイムリミットが近づいている方だけではなく、「最短で妊娠したいから」と、20代でも顕微授精を希望されるご夫婦(カップル)もいらっしゃいます。にしたんARTクリニックでは、卵子や精子の状態、過去の治療歴、検査結果を踏まえて患者さまとともに最善の受精方法を決定しています。

にしたんARTクリニックで顕微授精をおすすめする主なケースは下記のとおりです。

調整後精子の運動量が規定を下回る場合

精子の事前検査で、運動精子500万/ml以下、運動率50%以下の場合は顕微授精をおすすめしています。

ただし、精子の運動量は体の状態などによっても異なります。男性の精液検査時は、体調などを整えた上でご来院ください。その際、2~3日の禁欲期間をとるようにしてください。検査結果が望ましくない場合には、期間を置いて再検査をご案内しています。

受精障害が予想される場合

体外受精を数回行ったが受精率が低い、または一度も受精しないなどの受精障害が見られた場合に、顕微授精をおすすめします。

精子正常形態率が低い場合

精子正常形態率とは、見た目が正常な形の精子の割合のことです。顕微鏡で精子を見る検査では、精子の頭部、尾部、中片部を観察しますが、いずれかに異常が見られた場合、奇形精子と判断します。奇形精子の割合が多い場合、受精能が低下するため、顕微授精をおすすめします。

顕微授精(ICSI)の流れ

顕微授精は体外受精とは、受精の方法が異なります。顕微授精の流れを詳しく見ていきましょう。

1. 採取した卵子を培養液で待機させる

排卵直前に経腟的に吸引して採取した卵子を培養液に移し、洗浄して培養器に入れ待機させます。

2. 精子を選別する

採卵日と同日に、精液を胚培養士に提出します。胚培養士が洗浄処理・良好運動精子の分離を行って、良好な精子を選別します。患者さまのご都合に合わせて、凍結精子を利用する場合もあります。

3. 精子を卵子に注入する

体外受精の場合は、専用の器官培養用ディッシュ内で精子と卵子を混合して受精させますが、顕微授精の場合は、卵子に針を刺して良好な精子を1匹だけ注入します。

にしたんARTクリニックの顕微授精(ICSI)は、全例でPIEZO-ICSIを導入

PIEZO法(ピエゾ)法とは、細胞膜を軽く押してパルス(微細な振動)をかけることで卵子へのダメージを軽減することができる顕微授精法のことです。微細な振動でインジェクションピペットの先端を前進させるので、透明帯を変形させずに、細胞質と透明帯の間にある囲卵腔にピペットを入れることができます。卵子に与えるダメージを極めて少なくできるため、受精率の向上が期待できる方法です。にしたんARTクリニックでは、顕微授精全例でPIEZO法を採用しています。

4. 胚の培養をする

受精後の受精卵を体内と同じ環境の培養器に入れ、受精卵(胚)に成長するのを待ちます。採卵の翌日にはお電話にて、胚培養士より受精結果をご報告しています。

胚は最長6日間培養します。にしたんARTクリニックでは、「タイムラプスインキュベーター」という培養器を導入しているので、受精卵を取り出すことなく観察することが可能。受精卵にストレスのかからない培養を行っています。

5. 胚移植する

良好な受精卵を子宮内に移植します。原則として移植する受精卵は1つです。複数の受精卵が育った場合は、凍結して次の胚移植の機会まで保存します。詳細を見る

体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)のメリットとデメリット

体外受精と顕微授精について、それぞれのデリット・デメリットで比較してみましょう。

体外受精(IVF)のメリット

精子の力で受精し、卵子のストレスが低い

体外受精は、不妊治療法の中で、卵子に対して最もストレスが少ない受精方法です。

生殖補助医療の中では最も安価

保険診療1回の料金は12,600円です(培養費除く)。自費診療の場合は4倍以上の費用がかかります。

体外受精(IVF)のデメリット

受精が成立しない可能性がある

卵子と精子どちらかに受精障害があった場合、受精率の低下が見られます。

どの精子が卵子に侵入するかはわからない

体外受精では、精子自身の裁量に任せて受精させます。もちろん、受精時に使用する精子は胚培養士が、運動性が良好な精子を選別しますが、複数ある精子の中には形態的に異常な精子なども含まれている可能性もあります。そのため、どの精子が卵子に侵入するかはわかりません。基本的に、形態的に異常を持った精子は受精しないとされています。しかし、必ずしも受精しないかというと、その可能性は0ではありません。初めての患者さまの場合、まずはやってみないとどのような反応があるかはわからないともいえます。

多精子受精が起こり胞状奇胎となる可能性も

本来なら卵子1個には精子1匹がたどり着き受精に至りますが、卵子1個に2匹以上の精子が侵入することがあります(多精子受精)。多精子受精を生じた場合、卵子は核の数が異常になり、無事に着床したとしても胞状奇胎になる可能性があります。

顕微授精(ICSI)のメリット

精子の所見不良でも受精させることが期待できる

顕微授精は、1個の卵子に1匹の精子を注入します。そのため、精子の所見が不良でも、不良ではない精子が1匹あれば、受精することが期待できます。

形態、運動性の良い精子を選別して受精できる

顕微授精を行う際には、胚培養士が顕微鏡下で精子を1匹ずつ確認します。そのため、形態・運動性の良い精子を選別することが可能です。

受精の確率がアップする

顕微授精では、胚培養士が顕微鏡で確認しながら卵子に1匹の精子を注入します。つまり、受精率がと比べて高く、確実性も期待できます。

顕微授精(ICSI)のデメリット

卵子にとってはストレスになる

顕微授精では、卵子に針を刺して精子を注入します。さらに、膜を破り細胞質内に針が侵入するため、卵子にとっては少なからず負担がかかります。卵子の膜が弱い場合は、それらの負担で卵子が変性し、受精が叶わない可能性があります。

体外受精(IVF)よりも料金がかかる

顕微授精は、体外受精に比べ、治療費用が高額になります。にしたんARTクリニックでは、体外受精の費用は採卵の個数にかかわらず12,600円です。一方、顕微授精の費用は、採卵1個につき14,400円です(いずれも保険診療)。

そのため、採卵の個数が多いほど費用がかかってしまい、結果的に治療費が高額になってしまう可能性があります。

タイムラプスインキュベーターについて

にしたんARTクリニックでは、「タイムラプスインキュベーター」を導入しています。タイムラプスインキュベーターは、受精卵を培養するボックスに混合ガスを流し続け、培養に適した気層環境を維持する培養器です。

従来、胚の成長を確認するため、胚培養士は定期的に胚を培養器から持ち出す必要がありました。タイムラプスインキュベーターは、胚を持ち出すことなく観察ができるため、胚に与えるストレスを最小限にとどめることができます。また、培養するボックスは9つの個室に分かれているので、受精卵を個別に管理し培養できます。それぞれの個室にはカメラが取り付けてあるため、受精卵をモニターしながら、一定の間隔で画像を記録し、受精卵の成長をまるで動画のように見ることも可能です。詳細を見る

カウンセラーからのメッセージ

気軽に相談できる無料カウンセリング

不妊治療を迷っていたり、顕微授精について詳しく知りたいと感じていたりする患者さまには、まずはカウンセリングのご利用をおすすめします。
にしたんARTクリニックでは、全ての院にカウンセラーが常駐しているので、お気軽にお問い合わせください。

顕微授精(ICSI)の妊娠率について

卵子に精子をふりかけて受精を待つ体外受精で成果が得られない場合、顕微鏡下で卵子に精子を注入する顕微授精が選択肢になります。
顕微授精になると費用も上がるため、成功率が気になるところではないでしょうか。ここでは、顕微授精の成功率についてご紹介します。

公益社団法人日本産科婦人科学会が2020年に発表したデータによると、顕微授精による胚移植での妊娠率は全国平均19.9%。出産率は14.2%でした。一方、生殖補助医療に強みを持つ、にしたんARTクリニック神戸三宮院では、顕微授精における胚移植での妊娠率は平均61.01%と高い水準となっています。

顕微授精(ICSI)の妊娠率の比較

全国平均 19.9%
にしたんARTクリニック神戸三宮院 61.01%
※出典 日本産科婦人科学会「体外受精・胚移植等の臨床実施成績」2020年

にしたんARTクリニックでは、ご夫婦(カップル)の望みを最短で叶えるために、お二人に寄り添いながら最善の治療をご提案します。

顕微授精(ICSI)の成功率を上げるために当院が重視すること

顕微授精の成功率を上げるために、にしたんARTクリニックでは下記の3点を大切にしています。高い妊娠率を叶えているポイントを見ていきましょう。

適切な卵巣刺激法を選択する

質の良い受精卵(胚)を得るためには、患者さまの卵巣機能に応じた適切な卵巣刺激法を選択することが重要です。
にしたんARTクリニックでは、患者さま一人ひとりに合った正しい卵巣機能の評価と、多様な卵巣刺激法を実施できる体制を整えています。

質の良い精子を回収する

顕微授精では卵子の質が注目されがちですが、妊娠率の向上には精子の質も欠かせません。
にしたんARTクリニックでは、採取した精液を精査し、質の良い精子のみを回収。選りすぐりの質の良い精子を、卵子に注入しています。
IMSIやPICSI、Zymotなど保険診療に組み合わせて行う先進医療に加えて、新たな精子選別法であるFelix(自費診療)も導入しており(現在は神戸三宮院にて実施)、ひとつでも多くの移植胚を得るための選択肢を準備しています。

質の良い胚を選定する

胚移植する際、複数の胚の中から最も着床できる胚を選定することも大切です。受精卵の分割が進んだ胚は、その形状によって複数のグレードに分類されます。ほぼ同じ大きさできれいに分割された胚が最も妊娠率が高く、大きさや形にばらつきがあると妊娠率が低くなります。
顕微授精を経て得られた受精卵からグレードの良い胚を選別することが、妊娠率を大きく向上させるために重要です。

にしたんARTクリニックでは、培養器から胚を出さずに観察できるタイムラプスインキュベーターを使用し、胚へのダメージを最小化。医師と胚培養士が連携し、質の良い胚を選定し、着床につなげています。

顕微授精(ICSI)の成功率を上げるために患者さまができること

妊娠成立に向けて、患者さまとパートナーの体の状態がとても大切です。食生活を見直してバランス良く栄養をとり、適度な運動を取り入れて、健康的な体を作りましょう。質の良い睡眠をとり、ストレスを溜めないようにすることも、妊娠に向けた体づくりには有効です。

にしたんARTクリニックではご夫婦(カップル)と共に、早期の妊娠を叶えるために最大の努力を続けます。治療中に悩んだり、迷いがあったりする場合は、カウンセラーまでお気軽にお問い合わせください。

治療・検査メニュー

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