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着床前の胚に染色体あるいは遺伝子の異常がないかを調べる医療技術です。
不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査はPGT-A(着床前胚染色体異数性検査)とPGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査)とに区分されます。
にしたんARTクリニックの神戸三宮院は、日本産科婦人科学会が認める「PGT-A・SR承認実施施設」で、新宿院・日本橋院・品川院は「PGT-A承認実施施設」です。
これまでPGT-Aを受けられる対象者は、不妊治療を繰り返しても妊娠に至らない方(反復着床不全)や、流産を繰り返された方(反復流産)に限定されておりましたが、2025年9月に日本産婦人科学会より対象を拡大するとの発表があり、「女性年齢が35歳以上」という条件を満たせば誰でもPGT-Aを受けられることになりました。
これにより、より多くの患者様に有効な選択肢としてPGT-Aをご案内することが可能となりました。
にしたんARTクリニックでは、新宿院、日本橋院、神戸三宮院でPGT-Aを受けることができます。また、11/1(土)より品川院でも受けられるようになります。
(2025/10/24現在)
PGTでは通常の生殖補助医療に加え、胚生検、染色体検査という技術が用いられます。
胚生検とは胚から検査のために一部の細胞を採取する方法です。
当院では、受精後5~7日目に胚盤胞まで成長した受精卵の、将来胎盤など胎児以外の組織になる部分(栄養外胚葉)の細胞を5個程度採取しています。
染色体検査は次世代シーケンサー(Next Generation Sequencer)を用いたNGS法を行っております。
胚生検で胚から採取した細胞からDNAを抽出し、全ゲノム増幅と呼ばれる方法で何万倍にも増やします。増幅したDNAの塩基配列を解析して染色体の本数を推定する技術です。
検査結果は染色体番号順にグラフとして表します。例として、図の結果は3番染色体が3本あり、11番染色体は1本しかない数的異常が認められます。
染色体異数性がないと判定された胚を子宮に移植することで、通常の生殖補助医療に比べて、胚移植あたりの妊娠率を上げて流産率を下げることができます。
具体的には日本産科婦人科学会ホームページに掲載されている『「不妊症および不育症を対象とした着床前遺伝学的検査(PGT-A・SR)」について』にて、動画で詳しく説明されています。
体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)、胚の凍結とは別に、下記費用がかかります。
| 保険診療 | 自費診療(税込) | ||
|---|---|---|---|
| PGT-A(着床前胚染色体異数性検査) ※新宿院・日本橋院・神戸三宮院で実施 |
- | 110,000円/個 | |
| PGT-SR(着床前胚染色体構造異常検査) ※神戸三宮院で実施 |
- | 110,000円/個 | |
| ※にしたんARTクリニックでは男女の産み分けは受け付けておりません。 | |||
①染色体異数性胚の移植を避けることで、移植をしても着床しないという治療の不成功や、移植後の流産を減らし、生殖補助医療を受ける患者さまの負担を軽減することができます。
通常の生殖補助医療では、全ての胚盤胞をグレード順に移植していきます。たくさんの胚盤胞がとれる方の場合、移植を繰り返すだけで何年もかかる場合があります。その間に流産、死産をすればさらに時間が費やされるということになります。PGT-Aをして移植可能胚が得られれば、1つ目から妊娠継続可能な胚が移植できるわけですから、流産の心配も減り、早期の出産につながることが期待されます。
もし、移植可能胚が見つからなくても、次の月には新たな採卵へ向けての準備に取り掛かることができます。少しでも若いうちに採卵を繰り返すことにつながります。
②染色体正常胚を移植してもうまくいかない場合には、着床不全、不育症がないかなど他の要因を追求する必要があることに気づき、治療結果の改善につなげることができます。通常の生殖補助医療では着床しなくても、「きっと染色体異常が原因だと思いますよ、次は上手くいくでしょう」と見逃されがちですが、PGT-Aをしていれば、染色体正常胚を移植したのにうまくいかないということがはっきりしますから、次にどのような検査が必要かをすぐに考えていけるでしょう。
③移植可能胚を見つけることができない場合も、PGTをすることで、自身の状況を知り、自身のデータをもとに納得してその後の治療選択をすることができます。
沢山の方から取った沢山の胚盤胞をグレード順に並べれば、グレードの高いものの中には染色体情報の良いものが多いです。しかし、一人の方からとった胚盤胞をグレード順位に並べても、染色体との関連性はありません。グレードトップの胚が染色体異常胚で、グレードの低い胚が正常胚ということは普通です。
染色体情報が良いと診断されたものが複数ある場合には、グレード順に移植していくということになります。グレードの良い胚は着床しやすい胚です。
30歳の方の場合、胚盤胞の染色体の数的異常率は30%くらいです。今までの流産の原因が染色体異常であった可能性はあまり高くはありません。したがって、生殖補助医療をして、PGTを受け染色体正常胚を移植しても流産になる可能性もあり、慎重に考える必要があります。まずは不育症などの検査を受けられることをお勧めします。
ご夫妻の染色体検査をして染色体構造異常が見つかればPGT-SRの対象になります。PGT-SRが必要な方の場合には、特に移植可能な胚の割合が低いので、染色体異数性の割合が低い若い年齢でのPGT-SRをお勧めします。