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不妊治療と一口に言っても、そのレベルや方法はさまざまです。大きく分けると、一般不妊治療と生殖補助医療(ART)があり、まずは医療介入レベルが低い一般不妊治療からスタートするのが一般的です。ここでは、不妊治療の最初の一歩といえるタイミング法(タイミング指導)について詳しく解説します。
タイミング法とは、最も妊娠しやすいといわれる排卵日を把握し、その周辺時期に性交渉のタイミングを合わせるよう医師が指導することで妊娠の確率を上げる方法です。
女性の身体は月経周期に合わせてホルモンが変化し、妊娠に備えています。明らかな不妊の原因がない健康な男女が避妊をせずに1年間夫婦生活を送っていれば、だいたい90%ほどの確率で自然妊娠するといわれています。
そのため、一般的な不妊検査の結果、男女ともに明らかな不妊の原因がなく、女性側に自発的な排卵があることがわかれば、タイミング法から始めるのが一般的です。医療介入レベルが低いうえ、心身の負担も経済的な負担も少なく試しやすいため、「不妊治療の第一歩」と呼ばれることも。「最初から生殖補助医療はハードルが高い」と感じる方もトライしやすい治療です。
基礎体温を記録したり、排卵検査薬を用いたりする自己流のタイミング法を実践している方は多いですが、どうしても正確性に欠け、予測している排卵日と実際の排卵日がずれてしまうことがあります。クリニックで行うタイミング法の場合、検査で排卵日を正確に把握できる点が自己流との大きな違いです。また、クリニックでは排卵の有無や排卵された卵子の質、排卵後の子宮内膜の状態などを細かくチェックし、妊娠率を高めます。
投薬による排卵コントロールを行わない自然周期のタイミング法では、スムーズに排卵日予測ができない場合があります。女性の身体は繊細なため、ホルモンバランスが崩れると排卵が早まったり、遅れたりすることがあります。こうした場合、排卵誘発剤を併用して複数個の卵胞の発育・排卵を促し、スケジュールを正確に合わせてタイミングを取って受精の確率を高める方法を検討することもあります。
卵胞が育ちにくい、排卵がないといった排卵障害がある場合にも、排卵誘発剤は有用です。
タイミング法はあくまでも不妊治療の入り口であるため、排卵誘発剤を用いた治療でも妊娠に至らない場合には、体外受精(IVF/ふりかけ法)をはじめとした治療法へのステップアップを検討する必要があります。
タイミング法は、妊娠しやすいタイミングで性交渉をすることで自然妊娠の確率を高める手法です。そのため、対象となるのは体内での自然妊娠が可能で、避妊をせずに半年間性交渉をしても妊娠に至っていないご夫婦(カップル)となります。
自然治癒が見込めない医学的な不妊要因がある場合は、タイミング法の対象にはなりません。また、ご夫婦(カップル)のどちらかが単身赴任や出張が多く、タイミングを合わせることが困難な場合、また、そもそも性交渉が難しいご夫婦(カップル)の場合は、タイミング法は不向きです。
女性と男性、それぞれのタイミング法を行うための条件を下記でご紹介します。
卵管は卵巣と子宮を結ぶ通路で、妊娠を成立させるために不可欠な器官です。ごく細い管状の器官のため、詰まったり閉塞したりしていることもあり、不妊の原因になりやすい器官でもあります。卵管の片側、もしくは両側に閉塞や狭窄が見られる場合、受精卵を子宮へ運べない、運べても着床しないといった問題が起こるからです。
タイミング法を行う際には、左右の卵管に異常がないことを確認します。
卵巣に小さな卵胞が多発するPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)に罹患している場合、また強いストレスや、過度な体重の増減、環境の変化などが原因の排卵障害がある場合も、タイミング法による自然妊娠の可能性は低くなります。月経が停止する無月経、排卵までに長い時間がかかり、その影響で月経周期が長引く稀発月経などがある場合は、内服薬や注射剤、手術などで改善を図るか、より生殖補助医療から始めることが必要です。
不妊治療を開始する際は患者さま全員にスクリーニング検査を実施します。検査のひとつである精液検査では、精子の量、濃度、形態、運動率などを確認します。検査の結果、自然妊娠をするために十分な数の精子が存在しない、正常な形態の精子が少ない、運動率が悪いといった結果が出た際には、タイミング法を行うことはできません。男性不妊症外来診療を行っている泌尿器科専門医を受診するか、タイミング法以外の不妊治療を選択することになります。
にしたんARTクリニックでタイミング法がどのように行われるのか、治療の流れを下記でご紹介します。
まずは受診をしていただき、男性・女性それぞれの不妊の医学的な原因をスクリーニングするための検査を行います。1回目の受診は、月経周期のことは気にせずにいつでも都合の良いときで構いません。
・血液検査:PRL(プロラクチン)、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、fT3・fT4(甲状腺ホルモン)、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査
・内診:クラミジアPCR検査 子宮腟部細胞診 超音波検査
・風疹抗体検査
・HIV(感染症検査)
・感染症検査(B型・C型肝炎、梅毒)
・精液検査
上記のそれぞれの検査の結果、自然妊娠が可能であることがわかったら、法的な婚姻関係があるご夫婦(カップル)、事実婚のカップルそれぞれに必要な書類をご提出いただいた上で治療計画書を作成します。
にしたんARTクリニックで必要な書類はこちらをご確認ください。
これまでの月経周期や、ホルモン検査、超音波検査などから排卵日を想定します。黄体ホルモンの寿命は約14日ですから、月経周期が28日型で規則的な場合、月経周期の14日目が排卵日となります。
タイミング法を行う月経周期には、月経開始から10~12日目から通院を開始し、経腟超音波検査で卵胞をモニタリングします。医師が必要と判断した場合は、排卵まで内服薬を使用することも。卵胞の大きさが18mm~22mm程度になると排卵されるため、大きさや頸管の状態から総合的に判断して排卵日を推定します。
卵胞の成長が遅い場合や、元々卵胞が育ちにくい場合などは、排卵日の2日前くらいを目安に排卵誘発剤を処方します。
排卵日の1~2日前をピークとして、排卵4日前から排卵前日までが最も妊娠しやすい時期です。モニタリングで推定された排卵日にもとづいて、医師が指定する日時にご夫婦(カップル)で性交渉をします。
にしたんARTクリニックでは、自然妊娠を補助する場合は妊娠成立までの期間は通院する必要はありません。妊娠がわかる時期まで、通常通りお過ごしください。
次の月経予定日に月経が来なければ、市販の妊娠検査薬でチェックし、妊娠反応があればご来院ください。受診時には、妊娠初期の判定に有用なhCGホルモンの値を血液検査で測定します。hCGホルモンは妊娠している女性の体内でのみ生産されるため、一定の量が確認できれば妊娠確定となります。
なお、月経が来た場合も、次の計画のため受診していただく必要があります。タイミング法を行うのは3~4回が目安ですが、ご希望に応じて相談しながら治療計画を進めていきます。
タイミング法は、保険診療が可能で、人工授精(AIH)や体外受精(IVF)などに比べて比較的安価です。通院回数や、実施する検査などによって異なりますが、にしたんARTクリニックのタイミング法でかかる費用は下記のとおりです。
■診察料 | ||
---|---|---|
保険診療 | 自費診療 | |
初診料 | 870円 | 3,300円 |
再診料 | 380円 | 1,100円 |
一般不妊治療管理料 | 750円 | - |
※一般不妊治療管理料は3ヶ月に1度の算定
※超音波エコー 1,560円
※ホルモン検査の費用は検査項目による
にしたんARTクリニックでは、当事者であるお二人のご意見とご希望を最優先にしながら、スクリーニング検査の結果も加味してより良い治療をおすすめしています。
タイミング法でうまくいかない場合にも、人工授精(AIH)の準備をしながら体外受精(IVF)へのステップアップの準備を進めることが可能です。平日は夜22時まで診療しているので、仕事と不妊治療の両立に悩まれている方もぜひご相談ください。妊娠という目標に向けて、最短かつ最善の治療を提案してまいります。