不妊治療

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妊娠時に産生されるhCGとは?不妊治療での役割も解説

妊娠時に産生されるhCGとは?不妊治療での役割も解説

妊娠と深い関わりがあるホルモンのひとつに「hCG」があります。妊活や不妊治療をしている方は、hCGについて知っておいて損はありません。しかし、普段の生活ではなじみのないhCGとは、どのようなホルモンなのかわからない方も多いでしょう。

そこで本記事では、hCGがどのようなホルモンなのか、不妊の検査や治療に必要な理由を解説します。安心して治療や分娩に臨めるよう、知識を身につける際の参考にしてください。

hCGとは妊娠中に産生されるホルモンのこと

hCGは、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin)と呼ばれる性腺刺激ホルモンです。受精卵が子宮内膜に着床して定着し、母体から胎児へと栄養や酸素を送る胎盤が作られると、その一部である絨毛組織からhCGが分泌されます。

hCGと妊娠との関係性

hCGは、主に妊娠が成立したときに分泌されるのが特徴です。胎盤絨毛組織から分泌されたhCGは、黄体を刺激して女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌を促します。プロゲステロンには、基礎体温を向上させると同時に、受精卵が子宮内膜に着床しやすい状態に整える働きがあり、特に妊娠6~8週までの妊娠維持には欠かせません。つまりhCGは、妊娠の維持・成立を助けるホルモンなのです。

なお、hCGの値は妊娠週数によって変化します。数値の変化は、下記のとおりです。

自然妊娠の場合のhCG値の変化

妊娠週数血中hCG値(mIU/ml)     母体の変化     
3週目0~50
4週目20~500妊娠発覚
5週目500~5,000胎嚢確認、つわり開始
6週目3,000~1万9,000胎児の心拍確認、胎盤形成開始
8週目14,000~16万9,0008~10週:つわりがピークになる
12週目16,000~16万15週頃:胎盤形成完了
16~22週:胎動確認、安定期突入
24週目2,500~8万2,00028週頃:胎位確定
36週目2,400~5万

妊娠が確認されると、妊婦健診で継続的に血液検査を行い、hCGの値が正常な範囲内に収まっているか、伸び率はどれくらいかといったことを確認します。妊娠判定時のhCGの値が低くても、その後にしっかりと伸びていけば問題ないことがほとんどです。

一方、不妊治療の場合、受精や着床のタイミングが自然妊娠よりもはっきりしているため、より厳しくhCGの推移を見る傾向があります。原則として、妊娠4週で100mIU/ml以上、妊娠5週で2,000~9,000mIU/mlの範囲であれば、落ち着いて経過を見守って良い数値だといえるでしょう。

妊娠にまつわるさまざまな場面での判断材料になるhCG

hCGは、その特性を活かして、妊娠初期のさまざまな検査の判断材料として活用されています。hCGの数値が妊娠初期症状の判断材料として使われる具体的なシーンは、下記のとおりです。
不妊治療を行う際にもhCGは使用されますが、そちらの活用方法については後述します。

妊娠の判定

hCGは、妊娠が成立したときにだけ分泌され、つわりがピークに達する妊娠8~12週頃に最も増加します。 そのため、時期を見て尿中や血液中のhCGの数値を測定することで、妊娠の有無を判断することができるのです。

一般的に、市販の妊娠検査薬は「月経予定日の約1週間後」から使えるとされており、適切な時期に正しく使用すれば精度の高い結果を得ることができます。hCGが25~50mIU含まれていれば陽性ですが、hCGの出方には個人差があり、分泌量が少ない場合は陰性になることもあります。そのため、もし陰性反応が出たとしても、妊娠の疑いがある場合は産婦人科を受診してみましょう。

妊娠初期の異常診断

妊娠初期は、胎児の主要な器官が作られる時期であり、早めの診断が必要な異常妊娠を察知できるタイミングでもあります。経過観察時の経腟超音波検査で、胎囊が見えないのにhCGの値が高い場合、異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性があります。ただし、hCGの値が高く、胎嚢が見えなくても正常妊娠の場合もあるため、一概にはいえません。

また、経腟超音波検査を行っても胎囊が見えず、hCGの値も低い場合は、初期の流産の可能性もあります。

出生前診断

胎児が21トリソミー(ダウン症候群)などの染色体疾患があると、hCGの値が上がることがあります。母体血清マーカー検査では、PAPP-A(妊娠関連プラズマタンパクA)とhCGの数値を測定し、数値に異常がないかを判断するのです。
もし、胎児が21トリソミーである場合、正常妊娠と比べてhCGの値が約2倍高く、PAPP-Aは半分程低くなるとされています。このような結果が出た場合は、確定的な診断のために羊水検査や絨毛サンプリングなどの検査をすすめられることもあります。

悪性、または悪性が疑われる腫瘍の診断

hCGは、胎盤由来腫瘍をはじめとした多くの悪性腫瘍において、 産生が認められることがあります。具体的には、胞状奇胎や侵入奇胎、絨毛癌などの病気を発見できる可能性があるのです。そのため、悪性腫瘍の診断や治療効果の判定などにも使われます。

不妊治療とhCGの関係性

hCGは、妊娠の維持や妊娠にまつわるさまざまな判定で力を発揮するだけでなく、不妊治療でも使用されています。
女性の体内では、月経周期の初めから中頃にかけてエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌され、一定の量に達したときに黄体化ホルモン(LH)が急激に増加するLHサージが起こります。LHサージは、妊娠のチャンスである排卵が間近に迫っていることを表すもので、妊活中の女性にとって重要なサインです。
不妊治療の初期段階では、基礎体温を計ってLHサージを予測し、性交渉のタイミングを見極めて妊娠の確率を上げます。

しかし、卵巣の機能低下やホルモンバランスの乱れなどで正常な排卵ができていない場合、なかなか妊娠に至りません。そこで、LHに似た働きをするhCGを薬剤として投与することで、排卵を誘発して受精を促すのです。hCGを投与すると、およそ34~36時間後に排卵が起こるとされています。
また、黄体機能不全など、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌に不妊の原因がある場合には、基礎体温の高温期を狙ってhCGを投与することによって、プロゲステロンの補充を行うこともあります。

不妊治療でhCGを投与する場面

前述のとおり、hCGは妊娠だけでなく不妊治療の際にも重要なホルモンです。では、不妊治療のどのような場面でhCGが使用されているのでしょうか。大きく下記の4つに分けられます。

タイミング法(タイミング指導)

タイミング法(タイミング指導)は、排卵のきっかけであるLHサージの時期を特定し、その前後に性交渉を行うよう医師が指導するものです。より確実に排卵を起こしたい場合には、hCGを投与してLHサージを起こします。

卵巣刺激法(排卵誘発法)

卵巣刺激法(排卵誘発法)は、質の良い卵子を一定数確保するため、排卵誘発剤を使って卵巣に刺激を与える方法です。通常、女性の体内で作られる卵子は毎月1個ですが、高度不妊治療にあたる生殖補助医療(ART)では、妊娠の確率を上げるために採卵する卵子を増やす必要があります。
そこで、卵子を育てるための薬を処方した後、排卵するタイミングをコントロールして確実に卵子を採取するためにhCGを投与します。

人工授精(AIH)

人工授精(AIH)は、排卵日から予測される妊娠の可能性が高い日に、洗浄・濃縮した精子を子宮内に直接注入する不妊治療の方法です。超音波検査で卵胞の成長をモニタリングし、卵胞が成熟しても自然排卵が始まらない場合には、hCGを投与して排卵を人工的に起こし、予測される排卵の前に人工受精を行います。

体外受精(IVF)

体外受精(IVF/ふりかけ法)は、排卵近くまで十分に発育した卵子を体外に取り出して受精させ、培養した受精卵(胚)を子宮内に戻す不妊治療です。排卵誘発剤を用いて複数の卵子を育てたのち、hCGを投与します。hCGは、卵子の成熟を促し卵巣から放出されるのを助けてくれるのです。
なお、hCGの投与後、約36時間で卵子の回収手術が行われます。このタイミングで手術を行うのは、卵子が排卵されずに卵巣内で最も成熟している状態とされているからです。

なお、hCGの投与は、自己注射で行うことができます。正しい方法で行えば、クリニックで行う注射も自己注射も、効果や副作用に差はありません。注射が苦手な場合は点鼻薬での投与も可能です。

自己注射について、詳しくはこちらのページをご覧ください。
不妊治療で行う自己注射とは?

hCGの投与を含めた不妊治療を検討の方は、
まずはにしたんARTクリニックでカウンセリングを

hCGは妊娠と深い関わりがあるホルモンで、不妊治療においても重要な役割を果たします。「1年程避妊をせずに性交渉をしているが、なかなか妊娠に至らない」「タイミング法(タイミング指導)を試してもうまくいかない」といった場合、hCGを活用した不妊治療で前進が期待できるかもしれません。まずはクリニックで検査を行い、適切な治療で妊娠を目指しましょう。

にしたんARTクリニックでは、無料カウンセリングも行っていますので、妊娠に関するお悩みや不安があればお気軽にご相談ください。

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