各種検査
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妊娠・出産には、女性の体の中にあるさまざまなホルモンが多様な形で関わっています。そのため、不妊治療を行う際には、妊娠するために必要なホルモンが基準どおりに分泌されているかどうか、ホルモン検査を行って確認する必要があります。
この記事では、不妊治療で行われるホルモン検査について、内容や目的、検査結果として示される数値の意味などをわかりやすく解説します。
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ホルモン検査は、最適な治療を選択するために必要な検査ホルモン検査の実施時期ホルモンや基礎体温の理想的な推移ホルモン検査の種類と内容月経周期中のホルモンの推移にしたんARTクリニックでは、ホルモン検査の内容や結果を詳しくお伝えします不妊治療では、ホルモン検査で不妊の原因を特定し、的確な治療を進めます。
そもそもホルモンとは、人間の体においてさまざまな機能を調節したり、制御したりするために分泌されている化学物質のことです。中でも女性特有の女性ホルモン分泌は月経周期に合わせてダイナミックに変化することがわかっており、採血をして血中にあるホルモンの分泌量を調べることによって、不妊の原因となる子宮や卵巣の問題、排卵の問題などを把握することができます。
不妊治療を進める上で、女性側に不妊の原因があるかどうか、あるとすれば何が原因なのか、さらにはどんな治療が適しているのかを知るうえで、ホルモン検査は欠かせない検査です。そのため、不妊治療専門クリニックでは、周期ごとに数回にわたって採血によるホルモン検査を実施します。
女性ホルモンは周期によって異なる働きをします。そのため、検査の時期によって目的は変わり、別の検査をしているときや治療中に何度かホルモン検査を行うこともあるでしょう。不妊治療専門クリニックでは、大きく下記の3つのタイミングで必要なホルモン値を測定し、その推移を確認します。
1周期内でも数回のホルモン検査を行うほか、治療を継続する限り、妊娠が成立するまではホルモン検査も何回も行うことになります。体調が日々変化するように、ホルモンを分泌する卵巣の状態も変わっていくためです。
使用する薬の種類や投薬・治療のタイミングは、検査で判明したホルモン値によって調整されます。また、治療のタイミングもホルモン検査の結果を踏まえて決定します。
健康で妊娠が可能な女性では、ホルモンはどのように分泌されているのでしょうか。次に基礎体温とホルモンリズムの標準的なグラフを示します。
生理周期や排卵・妊娠の有無、排卵日などを知るために有用な基礎体温は、下垂体から分泌されるLH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、および女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)によって変化します。
FSHの働きで卵胞が育つと排卵が起こり、プロゲステロンの分泌によって基礎体温が高温期に移行します。高温期の体温は低温期よりも0.3〜0.5℃ほど上昇し、期間は通常約2週間です。月経開始とともに、低温期に移行します。もし、2週間経っても高温期が続く場合は、妊娠の可能性があります。
月経開始から2週間経っても低温期が続く場合は、排卵が起きていないかもしれません。
ホルモン検査は、採血によって実施されます。確認するホルモンの種類と、検査によってわかることについて解説します。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは、卵胞から分泌されるホルモンで、卵巣に残っている卵子の数の目安を知ることが可能です。いわゆる卵巣予備能や卵巣年齢のことで、毎月AMHを確認することでリアルタイムの状況を把握します。AMH値が低い場合は、卵巣に残された卵子の数が少ないといえます。
AMH値は年齢ごとに基準値があり、年齢を重ねるごとに低下していきます。自身の卵巣の状態をこの数値から推測することが可能です。
FSHとLHは、いずれも下垂体で分泌され、卵巣に働きかけるホルモンです。FSHは卵胞を刺激して成長を促し、一定の大きさになるとLHが分泌されて排卵が起こります。FSHとLHはどちらかが高値でも低値でも卵胞が発育しないため、バランスが重要です。
LHの数値が高くFSHが正常な状態で月経周期が不順であれば、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の可能性があります。
E2(エストラジオール)は、子宮内膜の充実や妊娠確率の向上に欠かせないエストロゲン(卵胞ホルモン)の一種です。卵胞の発育に伴って分泌が増え、LHの分泌を促すため、不妊治療では大切な指標になります。
排卵誘発剤を使用した場合には、エストラジオールの値を調べることで卵胞の発育具合がわかり、薬の効果を確認できます。
PRL(プロラクチン)とは脳の下垂体から、妊娠中や産後に多く分泌されるホルモンで、母乳をつくるのが本来の働きです。ただし、大量に分泌されると、無排卵や無月経などの原因になります。妊娠していないときに分泌が確認できた場合、排卵や月経の異常があるかもしれません。
プロゲステロンは排卵後の黄体から分泌されるホルモンで、子宮内膜を受精卵が着床しやすい環境に整えます。プロゲステロンが十分に分泌されていない場合、黄体機能不全となって妊娠の難度が上がるため、排卵後に確認します。
甲状腺ホルモンは、首の前側にある甲状腺から分泌され、全身の代謝をコントロールするホルモンです。
甲状腺の機能に異常が見られる甲状腺機能低下症などの治療が不十分だと、流産率が高くなるため注意しなければなりません。また、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される甲状腺機能亢進症も、流産や早産を引き起こす可能性があります。
検査では、TSH(甲状腺刺激ホルモン)、FT3(遊離トリヨードサイロニン)、FT4(血中遊離型サイロキシン)といった甲状腺ホルモンを確認することが多いでしょう。
ここからは、月経周期中のホルモン値の推移と、検査によって確認する事項について、詳しく見ていきましょう。ホルモン検査を実施した際の指標にしてください。
なお、ホルモン検査の結果用紙にはホルモンの名称がアルファベットのみで記載されていることが多いので、少し難しいですが改めて理解を深めておきましょう。
測定項目 | ホルモンの名称 | 役割や数値の意味 |
---|---|---|
FSH | 卵胞刺激ホルモン | 卵胞を刺激し、排卵を促進する |
LH | 黄体形成ホルモン | 成熟した卵胞に排卵を働きかける |
P4 | プロゲステロン | 子宮内膜の状態を整える |
E2 | エストロゲン | 卵胞の成熟度を示す |
PRL | プロラクチン | 排卵や月経の異常時を検知する |
AMH | 抗ミュラー管ホルモン | 卵巣予備能を示す |
TSH | 甲状腺刺激ホルモン | 甲状腺の異常を検知する |
FT3 | 遊離トリヨードサイロニン | 甲状腺の異常を検知する |
FT4 | 甲状腺ホルモン | 甲状腺の異常を検知する |
βHCG | ヒト絨毛性ゴナドトロピン | 妊娠診断の指標になる |
低温期は、卵巣の機能を知るのに適した時期です。この期間にFSH、E2などを調べ、基礎値を下回るようなら薬剤で刺激を与えます。
FSHの基礎値は3-10m|U/mlで、15-20 m|U/ml以上の数値が出た場合は卵巣機能の低下が考えられるため、卵巣刺激法を行う際にFSHの投与量を減らしてコントロールします。
また、E2は基礎値70pg/ml以下が理想です。基礎値を上回る場合、前周期の卵胞が残っている可能性があります。
排卵期にしっかり卵胞が育っていれば、E2の分泌量が増えてLHの分泌が促されます。E2が上がりきると、LHが一気に上昇するLHサージが起こり、約36~38時間後に排卵が起こります。
LH、E2、P4を検査することによって、正確な排卵日を把握することが可能です。
排卵後の高温期は黄体期とも呼ばれ、P4の分泌が盛んになって子宮内膜が厚みを増す時期です。P4、E2が十分に分泌されているかどうかを確認し、分泌量が不十分であれば投薬をして着床をサポートすることを検討します。
ホルモンは妊娠・出産と密接な関わりがあり、不妊治療では周期に合わせた血液検査が必須です。アルファベットや数字、カタカナ表記が多く理解しにくいかもしれませんが、ホルモン値には体の状態が映し出されているといっても過言ではありません。
にしたんARTクリニックでは、わかりづらいホルモン検査の内容や結果を丁寧に説明し、検査をする意味や検査結果が示す意味を患者さんご自身で把握できるようサポートしています。わからないことがあれば、医師や看護師、カウンセラーにお気軽にご質問ください。
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