不妊症
更新日:
不育症とは、妊娠後、流産や死産を2回以上繰り返し、出産に至らないことをいいます。自然流産を繰り返す反復流産や習慣流産だけでなく、生殖補助医療(ART)で良好な受精卵(胚)を何度か移植しても妊娠が成立しなかったり、ごく早期の流産を繰り返したりするといった場合も不育症に含まれます。
不育症は、原因に応じた治療をすれば妊娠・出産に至る確率が上がるため、タイミングを逃さず検査をすることが大切です。
この記事では、不育症の定義や治療法、注意したいリスク要因などについて詳しく解説します。
ページコンテンツ
不育症とは、妊娠成立後の流産や死産で赤ちゃんを得られない状態のこと不育症は高頻度で流産・死産を繰り返すことがある不育症のリスク要因不育症の検査不育症は生活習慣の見直しも必須不育症を心配される方もにしたんARTクリニックにご相談ください不育症は、妊娠は成立するものの、流産や死産を繰り返し、出産に至らない状態です。具体的には、以下の場合を総称して不育症と呼びます。
このほか、不妊症で生殖補助医療を実施し、良好胚を移植しているのに妊娠が成立しない「反復着床不全」を含めることもあります。
流産は妊娠で最も生ずる合併症といわれ、1回の妊娠で全体の約15%が流産することから、決して珍しい事象ではありません。また、そのほとんどが偶発的であり、治療をしなくても次の妊娠では無事に出産に至ることがほとんどです。
ただし、妊娠したときの年齢が上がるにつれて流産の確率は増加します。赤ちゃんの染色体異常が増える40歳前後では妊娠したうちの約半数が流産するといわれています。また、男性側、女性側それぞれに何らかのリスク因子が潜んでいる場合には、治療をしない限り妊娠に至らない不育症になる可能性が高まります。
3回以上続けて流産する習慣性流産も全体の1〜2%に上り、そのうち半数が次の妊娠でも流産することがわかっています。
不育症は原因が明確であれば治療によって妊娠できる確率が高まりますが、いまだ解明されていないことも多く、検査をしても原因を特定できないことも少なくありません。
しかし、不育症と診断された人の多くが共通して持っているリスク因子を特定できれば、治療によって妊娠・出産を望める場合もあります。リスク因子とは、特定の病気や問題が発生する可能性を高める要因を指します。
不育症の代表的なリスク要因は、下記の4点です。
先天性の子宮形態異常は、胎児を育てるためのスペースの形に異常があったり、着床部に流れる血液が不十分になったりすることによって、習慣流産や子宮内胎児死亡の原因になります。子宮形態異常の種類は、双角子宮、中隔子宮、単角子宮、重複子宮などです。粘膜下筋腫などによる後天性の器質性疾患の場合もあります。
甲状腺異常とは、甲状腺をはじめ副腎、膵臓などの内分泌臓器から分泌されるホルモンのバランスが崩れることを指します。ホルモンは体の機能を調節する物質で、分泌が多すぎたり、少なすぎたりすると全身にさまざまな異常が表れ、流産もそのひとつです。
特に、甲状腺機能が活発になりすぎる甲状腺機能亢進症、甲状腺機能の働きが落ちる甲状腺機能低下症などは注意が必要です。血糖値を上げるホルモンの急激な増加でインスリンの働きが追い付かず、血糖値が異常に高い状態が続く糖尿病も、不妊症につながりやすい内分泌異常として知られています。
夫婦(カップル)のどちらかに染色体異常があると、卵子や精子がつくられる際にも染色体の構造的な異常を起こす確率が高くなります。染色体異常は胎児の発育不良、妊娠の継続を困難にする母体のホルモンバランス異常などを引き起こし、流産や染色体異常につながる可能性も否定できません。
抗リン脂質抗体とは自己免疫疾患のひとつで、この抗体が陽性の場合、自分の体の中にあるリン脂質やその関連たんぱく質に対して免疫系が異常に反応し、攻撃します。それによってさまざまな部位で動脈血栓症や静脈血栓症が引き起こされ、習慣流産などの妊娠合併症の原因のひとつとなってしまいます。日本人では10,000~20,000人の患者がいると推定され、約半数が全身にさまざまな炎症が起こる全身性エリテマトーデスを合併します。
そのほか、同様の血液凝固に起因する疾患として知られているのが、若年層に重篤な血栓症が起こるプロテインS欠乏症、先天性も多いプロテインC欠乏症、出血を増大させる第Ⅻ因子欠乏症などです。
ここからは、不育症が疑われる場合に行われる検査について解説します。科学的根拠のある検査を「一次検査」として実施します。なお、十分な科学的根拠があるとはいえないものの、不育症との関連性があると考えられる検査は、「選択的検査」です。
不育症は検査で必ずリスク因子が特定できるとは限らないため、不安や疑問がある場合は必ず医師に確認してください。
不育症の主な一次検査の種類と、リスク要因であると診断された際の治療について見ていきましょう。
抗リン脂質抗体検査とは、血液凝固異常につながる抗リン脂質抗体の有無を調べる血液検査です。特定の数値が高い値を示した場合に陽性となり、12週間後に再検査をして再び陽性が出た場合、確定診断されます。
日本国内の治療としては、妊娠初期からの低用量アスピリンによる抗血小板療法や、ヘパリン療法が標準的です。ヘパリン療法は一般的に自己注射となり、妊娠中のヘパリン自己注射は保険が適用されます。
子宮形態検査とは、子宮の形を診る検査です。内診や経腟超音波検査、卵管造影検査などで子宮形態異常が疑われるときなどに、腟から内視鏡を挿入して直接子宮の形を観察する子宮鏡検査が行われます。
特に、MRI検査との一致率が高い3Dエコーを使った経腟超音波検査は、日本産科婦人科学会と日本婦人科腫瘍学会が中心となって作成・発表している「産婦人科診療ガイドライン」で推奨されています。
子宮形態異常と診断された場合、ホルモン療法や手術療法などが施されます。子宮の内部が2つに分かれている中隔子宮は、子宮鏡で中核を切り離す低侵襲の手術が主流です。
なお、先天的な子宮形態異常は珍しくなく、出産に際して問題がない場合、リスクベネフィットを考慮して経過観察になることがほとんどです。
内分泌検査とは、甲状腺機能の状態を確認するための血液検査です。糖尿病についても、血糖値を判定するHbA1cを調べることで判定できます。
甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症と診断された場合は、甲状腺の働きを抑制したり、補ったりする薬を投与します。糖尿病の場合は、血糖値を下げる薬の服用と併せて、食事や運動習慣など生活習慣の改善が必要です。
夫婦(カップル)それぞれの血液検査を行うことで、染色体異常の有無がわかります。この検査は、夫婦(カップル)のどちらに遺伝子異常があるかを確認するための検査ではありません。あくまでも不育症の治療方法を検討するために行う検査であることを理解し、事前に遺伝カウンセリングを受けることをおすすめします。異常が認められた場合も、すみやかに専門家に相談してください。
夫婦どちらかに染色体異常があると、受精卵にも一定の確率で染色体異常が発生しますが、根本的な解決法は残念ながら現在のところありません。ただし、2種類以上の染色体の一部が切断されて遺伝情報の場所が入れ替わった均衡型転座といわれる染色体異常であれば、遺伝子に過不足はなく、妊娠できる可能性は十分にあります。
また、胎児の染色体異常は女性の出産年齢が上がると頻度が高まるため、着床前診断検査も有用です。着床前診断検査は、体外受精で得られた胚の染色体を移植前に調べ、染色体に異常がない受精卵(胚)だけを選別して移植する方法です。これにより、次の妊娠での流産の確率が減り、全体的な流産の回数も減らすことができます。
ただし、適応は不妊症治療や不育症の状況によって異なり、実施しているクリニックも限定されるため、検査を希望する場合は事前に調べてから受診するようにしてください。
もしも死産した場合、亡くなった赤ちゃんの「絨毛(じゅうもう)」を詳しく検査することで、リスク因子の判明につながるかもしれません。絨毛は将来胎盤になる組織の一部で、染色体に異常がないかを確認することができます。
検査によって染色体異常が判明すれば、今回の流産は偶発的なものであるといえ、特に治療を必要としません。次の妊娠が出産につながる可能性は高いといえます。
不育症には、生活習慣も大きく影響します。妊娠・出産を望む場合、下記の4点については早急な改善が必要です。
不育症を改善し、妊娠が継続するためにも、夫婦(カップル)で生活習慣の見直しに取り組んでください。
妊活中に流産を経験すると、ご自身が不育症なのではないかと不安に思うこともあるかもしれません。しかし不育症は、検査をすることによって次の妊娠への希望につながることも少なくありません。
にしたんARTクリニックでは、不妊治療中に繰り返す流産に対するつらさや悲しみ、これからの妊娠に対する不安に寄り添うカウンセリングも無料で実施しています。お近くのにしたんARTクリニックにご相談ください。
にしたんARTクリニックでの
治療をお考えの方へ
患者さまに寄り添った治療を行い、より良い結果が得られるよう、まずは無料カウンセリングにてお話をお聞かせください。下記の「初回予約」ボタンからご予約いただけます。