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ERA検査(子宮内膜着床能検査)とは?対象者や費用と検査の流れを解説

ERA検査(子宮内膜着床能検査)とは?対象者や費用と検査の流れを解説

生殖補助医療(ART)で胚移植を繰り返しても妊娠に至らない場合は、受精卵(胚)が着床に適したタイミングとずれている可能性があります。そのような場合に有効なのが、子宮内膜が胚移植に適した状態に整うタイミングを見つけるERA検査(子宮内膜着床能検査)です。ERA検査を行うと、胚移植の最適なタイミングを知ることができ、大切な胚を無駄にすることなく、妊娠の可能性を高めることができます。

この記事では、ERA検査の基本情報や対象者、費用、検査の流れについて詳しく解説します。妊娠を目指す方法のひとつとして、参考にしてください。

ERA検査とは、着床に適したタイミングを調べる検査

ERA検査とは、胚の着床に適したタイミングを調べる検査です。生殖補助医療において、良好胚移植を複数回行っても妊娠が成立しないときに行う場合があります。ERA検査の目的は、子宮内膜が受精卵(胚)を受け入れる時期である「着床の窓(インプランテーションウィンドウ)」を調べることです。

胚を受け入れる時期を表す「着床の窓」には個人差がある

妊娠過程において、子宮内膜が受精卵(胚)を受け入れることができる時期や時間は決まっており、これを「着床の窓」といいます。着床の窓は排卵後5日目から2~3日間が定説でしたが、近年の研究により、着床の窓の時期は人によって前後し、個人差があるとわかりました。

着床の窓が想定期間からずれている場合、生殖補助医療の一環で一般的なタイミングに正常な受精卵(胚)を移植したとしても、妊娠は成立しないか、成立しても初期の流産となってしまう可能性があります。胚移植で妊娠の可能性を高めるには、自身の着床の窓を知り、適切なタイミングで胚移植を行うことが重要です。

遺伝子の発現パターンを調べることで着床の窓がわかる

胚移植を複数回行っても妊娠に至らない方に有効なのが、ERA検査です。ERA検査では、着床の窓に関連する236個の遺伝子の発現パターン(動きの度合い)で調べることで、自身の着床の窓を特定します。

ERA検査では、生殖補助医療の胚移植と同じように、ホルモン補充などを行い、通常の胚移植を実施するタイミングで子宮内膜の細胞を採取します。その後、採取した細胞から抽出したRNA(遺伝子の働きを反映する物質)を、次世代シーケンサー(遺伝子解析装置)によって解析し、子宮内膜の着床に関わる236個の遺伝子の発現パターンを調べることで、着床の窓の特定が可能です。この結果により、検査を行ったタイミングの子宮内膜の状態が着床可能な受容期(Receptive)か、適していない非受容期(Non-Receptive)なのかが判定できます。

ERA検査はどんな人が対象?

ERA検査の対象となるのは、生殖補助医療で良好胚を複数回移植しても着床しない、反復着床不全の方です。また、胚移植前にあらかじめERA検査を行い、その結果から移植に適した時期を判断したいという方も対象になります。適切な胚移植のタイミングを明らかにし、着床の可能性を高めるための検査なので、移植可能な胚が少ない方にも適した検査である可能性があります。

ERA検査の費用は?

ERA検査の費用は、クリニックによって異なります。また、初回と2回目以降で料金が異なる場合もあるため、受診前に各医療機関の費用を比較するとよいでしょう。

にしたんARTクリニックでのERA検査の費用は、154,000円です。ERA検査自体は保険適用外ですが、先進医療Aに分類されるため、検査に付随する内診や血液検査などの一般的な診療は保険適用で受けることができます。なお、詳しい費用に関しては、受診を検討している医療機関に直接相談するのが確実です。

ERA検査の費用については、こちらのページをご覧ください。
各種検査費

ERA検査と子宮内膜日付診との違い

ERA検査と同じ目的で従来行われてきた検査に、子宮内膜日付診があります。子宮内膜日付診は、子宮内膜の状態が着床を受け入れられるタイミングにあるかを推定する検査です。排卵後5~6日目に子宮内膜の細胞を採取して顕微鏡下で観察し、子宮内膜組織の特性から排卵後の日数を推定します。

子宮内膜日付診は、観察者によって多少の誤差があり、再現性がやや低いという面がありました。一方ERA検査は、ホルモン補充周期に検査を行うことで、実際に胚移植を行う周期とほぼ同じ条件下において、子宮内膜に発現している着床に関わる遺伝子を解析できます。そのため、子宮内膜日付診よりもERA検査の方が、再現性が高く着床可能な時期を推定できるといわれています。

ERA検査の流れ

ここからは、にしたんARTクリニックでのERA検査の具体的な流れをご紹介します。ERA検査は、検査結果の再現性を高めるため、凍結融解胚移植を行うことを想定し、同様の方法とスケジュールでホルモン補充を行います。なお、ERA検査を行う周期では、胚移植は行いません。

ERA検査に合わせたホルモン補充周期

1.エストロゲン製剤を投与する

月経1~3日目に来院し、採血でホルモン値を確認します。問題がなければ、子宮内膜を厚くするためのエストロゲン(卵胞ホルモン)製剤の投与を開始します。

2.子宮内膜の厚さを確認する

月経12~16日目に再度来院し、経腟超音波検査で子宮内膜の厚さ、採血でホルモン値を確認します。問題がなければ、プロゲステロン(黄体ホルモン)製剤の投与を開始します。

3.子宮内膜の細胞を採取する

プロゲステロン製剤の使用開始から5日目に来院し、子宮内膜の細胞を採取します。

細胞の採取は、キュレットといわれる器具を使用し、子宮体がん検査と同様の方法で行います。検査自体は、スムーズにいけば5分程度で終了し、痛みも軽い場合がほとんどです。しかし、子宮の入り口が狭い場合や硬い場合には器具の挿入が困難になるため、痛みを伴う可能性があります。

子宮内膜の細胞を採取するイメージ

また、子宮内膜組織を切り取るプロセスでは、少量の出血が見られることもあるので、検査当日はナプキンをお持ちいただくと安心です。また、当日は入浴と性交渉は控えてください(シャワーは可)。

4.採取した子宮内膜の細胞を調べる

採取した子宮内膜の細胞から抽出したRNAを、次世代シーケンサーを用いて解析します。子宮内膜の着床に関連する236個の遺伝子の発現パターンを調べ、子宮内膜細胞を採取した時期が着床の窓のタイミングなのかを判定します。

5.検査結果をもとに治療方針を考える

検査結果がわかるのは、約3週間後です。来院していただき、検査結果をもとに胚移植のタイミングを検討します。

検査結果は、基本的に「120時間よりも早い(Pre-Receptive)」「ちょうど120時間(Receptive)」「120時間よりも遅い(Post-Receptive)」の3種類です。これは、一般的な着床の窓のタイミングであるプロゲステロン製剤投与から120時間後(5日目)を目安に、子宮内膜の状態を判定したもので、「ちょうど120時間」の場合は受容期、それ以外は非受容期に該当します。

検査結果の例

検査結果が「ちょうど120時間」だった場合は、子宮内膜が受容期であり、次周期以降でプロゲステロン製剤投与後120±3時間に胚移植を行うことが推奨されます。

ERA検査の結果が非受容期だった場合は?

ERA検査の結果、非受容期だった場合は、再検査も検討されます。ERA検査は検体採取の難度が高く、検体不良として再検査になることも珍しくありません。そのため、非受容期だった場合は再検査を行い、1回目と2回目の検査結果を総合評価して、最適な移植時期を特定してから胚移植を行う場合もあります。

ERA検査の結果が受容期だった場合は、胚移植のタイミングには問題がないため、ERA検査と同じ条件下で次周期以降の最適なタイミングで胚移植を行いましょう。

なお、にしたんARTクリニックでは、ERA検査に加え、ほかの着床不全の原因を調べるEMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)とALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)を同時に行う、トリオ検査も実施しています。

EMMAは、子宮内の細菌環境が胚移植に最適な状態であるかどうかを判定する検査です。またALICEは、自覚症状のない子宮内膜炎により、着床に悪影響を及ぼす菌が子宮内に存在していないかを確認できます。これらの検査を同時に行うことで、子宮の状態を詳しく把握し、胚移植に向けて最適な子宮内環境を整えることが可能です。トリオ検査では、一度の子宮内膜組織の採取で3つの検査をまとめて実施できるため、体への負担を軽減しつつ、効率的に体の状態を知れるメリットがあります。

トリオ検査については、こちらのページをご覧ください。
胚移植とは?

胚移植で結果が出ない場合は、ERA検査を検討してみてください

ERA検査は、子宮内膜が受精卵(胚)を受け入れるタイミングを知り、胚移植での妊娠の可能性を高めるのに有効な検査です。胚移植を複数回行っているのになかなか着床しない場合は、胚移植を行うタイミングを見極めるためにも、ERA検査を受けるという選択肢も検討してみましょう。子宮の状態や移植のタイミングについて詳細に検討したい方は、ERA検査・EMMA・ALICEが同時に受けられるトリオ検査も検討してみてください。

にしたんARTクリニックでは、全国にあるすべての院でERA検査を実施しています。無料カウンセリングも何度でも受けられるので、不妊治療やERA検査について不安がある方は、お気軽にご相談ください。

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