人工授精

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人工授精(AIH)とタイミング法(タイミング指導)を併用する治療を解説

人工授精(AIH)とタイミング法(タイミング指導)を併用する治療を解説

人工授精(AIH)とは、タイミング法(タイミング指導)の次に選択される一般不妊治療です。不妊治療には段階があり、治療の結果と取り組んでいる期間を考慮してステップアップしますが、人工授精とタイミング指導を併用する方法がとられることもあります。
この記事では、人工授精とタイミング指導の併用について、基礎知識や併用のポイントなどを解説していきます。

人工授精(AIH)とタイミング法(タイミング指導)を併用することで妊娠の可能性を高める

妊娠することができるタイミングは、月経周期1回につき1回ある排卵時のみです。不妊治療クリニックでは血液検査と経腟超音波検査を行って排卵日を予測し、妊娠しやすい時期を指定することができますが、その際には人工授精(AIH)を行うだけでなく、タイミング法(タイミング指導)を併用することで、妊娠の確率を高めることができます。

1回の性交渉で妊娠できる確率は5%程度とされています。運動率の良い精子を胚培養士が分別する人工授精の場合は7%程度となりますが、さらに人工授精とタイミング指導を併用することで、その確率を少しでも高められるのです。

卵子と精子の寿命

女性の体内で月経周期中に排卵される卵子は、体内で24時間生き続けます。この24時間の間に、卵子は精子に出会うことで受精し、出会わなければ月経時に子宮内膜といっしょに体外に排出されます。

射精後の精子の寿命は72時間で、女性の体内に入った場合は3日間生き続けることになります。妊娠率を高めるためにも、排卵する前後のタイミングに、子宮内に精子ができるだけたくさんいる状態が理想といえます。

不妊治療クリニックでは、排卵する日を詳細に予測するので、より有効な性交のタイミングを指導することができ、人工授精では運動率の良い精子を確実に子宮内に送り込むことができます。

正確な排卵時期を予測し性交のタイミングを指導するタイミング法(タイミング指導)

タイミング法(タイミング指導)とは一般不妊治療のひとつで、医療的根拠にもとづいて医師が排卵時期を正確に予測した上で、性交のタイミングを指導する治療です。妊娠しやすいタイミングに性交することで、妊娠の可能性を高める自然な方法といえるでしょう。

市販の排卵検査薬や基礎体温で妊娠しやすい時期を正確に予測することは難しいため、タイミング指導は不妊治療の第一歩として有効といえます。
なお、タイミング指導では、卵胞を育てるためにホルモン剤を使用することもあります。

タイミング指導が向いている方

排卵の時期を正確に予測することで、妊娠につながる性交のタイミングを計るタイミング指導は、次のような方に特に向いているといえます。

タイミング指導が向いている方

  • 不妊治療を始める初期段階にある方
  • 体への負担や経済的負担を最小限にしたい方
  • 医師に指示された日程で性交することが可能な方 など

タイミング指導が向いていない方

タイミング指導には一定の妊娠成功率がありますが、すべてのご夫婦(カップル)に適した治療法ではありません。
特に、次のような条件にあてはまる場合は、医師と相談しつつ最適な不妊治療の方針を検討していく必要があります。

タイミング指導が向いていない方

  • 医学的根拠にもとづく不妊要因があると判明している方
  • 性交のタイミングを合わせにくいご夫婦(パートナーの出張が多いなど)
  • 何らかの原因で性交がうまくいかないご夫婦(カップル) など

タイミング指導で妊娠できる確率

明らかな不妊要因がない場合は、タイミング指導にもとづいて性交を行うことで、5%程度の確率で妊娠するとされています。これは月1回(1周期)のトライに対する成功率です。継続して何周期もトライすることで、成功する確率は徐々に上がっていきます。
継続的にタイミング指導を行えば、半年経過後の妊娠率は50%程度、1年では60%程度で、横ばいとなります。そのため、1年を目処に次のステップである人工授精(AIH)に移行することがすすめられます。

ただし、加齢によって妊娠しにくくなる傾向があるため、ステップアップは早ければ早いほど良いという点にも留意すべきでしょう。

採取した精子を子宮内に直接注入する人工授精(AIH)

タイミング法(タイミング指導)で妊娠成立に至らない場合には、人工授精(AIH)へステップアップすることが推奨されます。

人工授精とは、排卵日が近くなったタイミングで、細いチューブを使用して子宮内に直接精子を入れる治療方法です。排卵日に合わせて、パートナーから採取した精子を胚培養士が調整し、運動率が良好な精子を子宮内へと注入します。排卵日の予測には、経膣超音波検査や尿中LH検査が用いられます。

人工授精という名前だけを聞くと、人工的な印象を抱くかもしれません。しかし、タイミング指導との違いは、医師が運動率の良い精子を直接注入する点だけで、自然妊娠と近い方法とも考えられるでしょう。
通常の性交では子宮の入り口手前まで精液が入りますが、人工授精の場合は、もう少し奥の子宮内へ精子を注入することとなり、卵子と精子が出会う確率が高まります。

卵子と精子が出会った後の流れについては、自然妊娠、タイミング指導、人工授精のいずれの方法もまったく変わりません。したがって、人工授精でも赤ちゃんへの影響はなく、副作用のリスクもほとんどありません。

人工授精が向いている方

人工授精には、向き不向きがあります。次のような方が、人工授精へのステップアップが向いているといえます。

人工授精が向いている方

  • 性交障害のある方や、何らかの原因で性交自体をしない、できないご夫婦(カップル)
  • 性交後の子宮頸管粘液に精子が元気に残っているかどうかを調べるヒューナー検査の結果が良くない方(ただし抗精子抗体が強陽性でない方)
  • 精子の量が少ない方や運動性が良くない方、勃起障害の方 など

人工授精が向いていない方

次のような方は、人工授精は向いていないと考えられます。不妊の要因は複雑で、ひとつではないこともあるため、医師とともに慎重に治療法を検討することをおすすめします。

人工授精が向いていない方

  • 卵管が閉塞している方
  • 精子所見に問題がない方
  • 原因不明不妊症の方
  • 40代以降など年齢が高い方 など

人工授精で妊娠できる確率

人工授精によって妊娠成立に至る確率は、どれくらいなのでしょうか。日本産婦人科医会の報告によると、人工授精を4周期以上行った場合の妊娠率は、39歳以下は約20%、40歳以上で約15%となっています。

5周期以降の妊娠確率は下がるため、人工授精を3~4周期行っても妊娠しない場合は、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)も検討すべきといえるでしょう。

※出典 公益社団法人日本産婦人科医会「産婦人科ゼミナール

妊娠率を高める人工授精(AIH)とタイミング法(タイミング指導)を併用する際のポイント

妊娠率を高めるために、人工授精(AIH)とタイミング法(タイミング指導)を併用することは可能です。
ここでは、併用する際のポイントについて詳しく見ていきましょう。

主治医に人工授精とタイミング指導を併用したいことを伝える

まずは、クリニックの主治医にタイミング指導と人工授精を併用したい旨を伝えてください。性交が人工授精へ直接的な影響を及ぼすことはありませんが、事前に相談しておくことでアドバイスをもらえるため安心です。

精子の運動率や数を確保するため、人工授精予定日の2日前にタイミングをとる

タイミング指導と人工授精で妊娠率を高めるためには、精子の質が良好であることも重要です。
7日以上射精していないと、精液量や精子の数も一見すると増えますが、精子の質が著しく低下してしまうため注意しなければなりません。射精しない期間を2~3日設けて人工授精のタイミングと合わせることが望ましいでしょう。

精子の寿命も考慮すると、人工授精の前日ではなく、2日前にタイミングをとることが推奨されています。また、人工授精当日の性交渉については、クリニックによって考え方が異なるため、主治医の指示に従ってください。

人工授精後の安静は不要、性交も構わない

人工授精後は、通常の生活を送って問題ありません。人工授精も自然妊娠も、受精以降の経過に変わりはありません。仕事や運動、入浴はもちろん、性交も行って構いません。心身ともに良好な状態でいられるように、ノンストレスな生活を心掛けてください。

人工授精を行ってから2週間が経過しても次の月経が来ない場合は、妊娠検査薬で妊娠の判定を行います。

タイミング指導や人工授精からのステップアップを考えるタイミング

タイミング指導や人工授精をしても妊娠しない場合、体外受精・顕微授精へのステップアップを検討するタイミングを悩むご夫婦(カップル)も多いのではないでしょうか。

一般的には、人工授精を最大6周期(6回)行っても妊娠に至らない場合は、次のステップに進むことが望ましいとされています。ただし、年齢が高い場合はもっと早く検討・判断してもいいでしょう。

不妊治療の4つのステップ

不妊治療中で、体外受精へのステップアップをおすすめするタイミングは、次のようなケースです。

タイミング指導や人工授精で妊娠が成立しない場合

タイミング指導を半年から1年程度継続しても妊娠に至らない場合には、人工授精へステップアップ(または併用)をおすすめします。
また、人工授精を3~5回程度行っても妊娠が成立しない場合は、体外受精・顕微授精へのステップアップを検討する流れが一般的です。
なお、このステップアップのタイミングは、年齢によっても左右されます。

年齢的に体外受精の検討を急いだほうが良いと感じる場合

不妊治療では、どの方法をとるにしても女性の年齢が妊娠率に関わってきます。年齢を重ねると卵子の質が下がり、妊娠率も下がっていくことが多いためです。

そのため、不妊治療を開始するときの女性の年齢が35歳以上の場合には、タイミング指導や人工授精に時間をかけずに、数ヵ月で体外受精・顕微授精から不妊治療をスタートするケースも少なくありません。
40歳以上になると、タイミング指導や人工授精をせず、すぐに体外受精・顕微授精を始めるケースもあります。

このように、年齢によっては体外受精・顕微授精の検討を急いだほうが良いと判断されることもあります。

なお、不妊治療では、ステップアップした後にステップダウンすることも可能です。患者さま一人ひとりの状況に合わせた治療方針を選択していくこととなります。卵巣予備能(卵巣に残っている卵子数)は年齢にかかわらず人それぞれであるため、信頼できるクリニックに相談することが大切です。

一般不妊治療や不妊治療のステップアップの相談なら、にしたんARTクリニックへ

卵子と精子はそれぞれ体内で生き残る時間が異なるため、人工授精(AIH)を行う場合は、タイミング法(タイミング指導)と併用することは可能です。併用を望む場合も、ステップアップを検討したい場合も、信頼できる不妊治療専門医へ相談することが大切です。

にしたんARTクリニックでは、医師全員が患者さま一人ひとりに寄り添った治療方針を提案することを心掛けており、どのような質問や相談にも丁寧にお答えします。当事者であるお二人のご意見とご希望を最優先にしながら、スクリーニング検査の結果も加味した上で、妊娠へ向けた最短かつ最善の治療をご提案しています。
にしたんARTクリニックは、すべての院が駅からすぐで、平日は夜22時まで診療しています。人工授精実施の最終受付時間は、すべての院で月曜日から金曜日まで21時(院内採精19時半、精液の持ち込み20時まで)で、仕事と両立しながら不妊治療に臨む患者さまがたくさんいらっしゃいます。仕事と不妊治療の両立に悩まれている方はぜひお気軽にご来院ください 。

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