人工授精

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人工授精(AIH)のデメリットとは?リスクや副作用について解説

人工授精(AIH)のデメリットとは?リスクや副作用について解説

「そろそろ子供が欲しい」と考え、ご夫婦(カップル)でタイミング指導(タイミング法)にチャレンジしたものの、うまくいかないこともあるでしょう。その場合は、次の段階として人工授精(AIH)にステップアップを検討したほうが良いタイミングかもしれません。

人工授精は、タイミング指導よりも一歩踏み込んだ不妊治療になり、妊娠しやすさというメリットもありますが、リスクや副作用がゼロというわけではありません。本記事では、人工授精に向いている人やメリットとともに、デメリットについても解説します。正しい知識を身に付けて治療に臨むことをおすすめします。

人工授精(AIH)とは?

人工授精(AIH)とは、タイミング指導(タイミング法)を何度か行っていても妊娠が成立しない場合に、次のステップとして選択される不妊治療の方法です。排卵の時期を予測し、妊娠しやすいタイミングに合わせてパートナーの男性から精液を得て、元気な精子を選定して洗浄・濃縮し、子宮の奥に直接注入することで、受精の手助けをして妊娠の確率を向上させます。

「人工」といっても、人の手を介するのは精子が腟から子宮まで泳いでいく距離をカットするために、卵子と精子が出会うサポートをするプロセスだけです。受精自体は自然に任せるため、自然妊娠に近い治療方法であるといえます。

また、生殖補助医療(ART)に比べて使う薬剤も比較的少なく、人の手を加える治療も最小限で済むため、胎児への影響や副作用もほとんどなく、女性にとって身体の負担が少ない治療法となります。
ただし、人工授精を行っても飛躍的に妊娠の確率が上がるわけではないため、女性の卵巣の状態や年齢にもよりますが、1回で妊娠が成立するとは限りません。そのため、3~4回はチャレンジが必要となるケースが多いのが実情です。

人工授精(AIH)のデメリット

人工授精(AIH)には、いくつかのデメリットがあります。後述するメリットとあわせて、確認してから治療に進むようにしてください。人工授精のデメリットは下記のとおりです。

出血する可能性がある

人工授精は、パートナーから得た精子を直接子宮の奥に注入するものです。そのときに、ごく細いカテーテルを使って注入しますが、そのカテーテルを通すときの刺激で少量出血する可能性があります。ただし、出血しても数日間で止まることがほとんどです。

感染症のリスクはゼロではない

人工授精に用いる精子は事前に洗浄処置を行っておくものの、直接子宮内に注入するときに精子を介して子宮や卵管、腹腔内などに雑菌が入り、感染して発熱や腹痛といった症状が起こるリスクがあります。
また、元々腟の近くにいる雑菌がカテーテルを通じて子宮内に入り、感染する可能性もあるでしょう。そのため、クリニックによっては人工授精後に抗生剤を処方されることもあります。

そのほか、クラミジア感染症など性感染症の既往歴がある場合は、人工授精をきっかけに再発する可能性もゼロではありません。そのため、にしたんARTクリニックでは不妊治療の前には 性感染症の検査を必ず実施しています。

多胎妊娠になる確率が上がる(排卵誘発剤を利用した場合)

排卵誘発剤を使う卵巣刺激法を併用しながら人工授精を行う場合、多胎妊娠になる確率が上がる傾向があります。
卵巣を刺激すると複数の卵子が成熟するため、妊娠の可能性は高まるというメリットがありつつ、双子・三つ子を妊娠する確率も同時に上げてしまうのです。

体外受精(IVF)よりも成功率が低い傾向がある

人工授精では、カテーテルを用いて精子を子宮に注入するものの、受精自体は自然に任せることとなります。子宮内に入った精子が卵管を通り、卵子と巡り会えれば受精が成立するため、自然妊娠よりは妊娠の確率が上がる可能性があります。
とはいえ、卵子に直接的に精子をふりかける体外受精(IVF)と比較してしまうと、成功率が低くなる傾向は否めません。

なお、人工授精は精子を子宮内に送り込む手技なので、精子が受精の場である卵管膨大部にたどり着いたのか、実際に排卵したのか、受精したのかなど体内で起こったことについて詳しいことはわかりません。妊娠が成立すれば良いですが、結果が出なかった場合に何が原因なのかなどは不明なままとなります。

また、人工受精を行うために1周期を必要とするため、年齢的に時間的な猶予があまりない場合などは、回数をあらかじめ決めておいてもいいかもしれません。

人工授精(AIH)のメリット

人工授精(AIH)を行うメリットは、主に3点が考えられます。それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

自然妊娠に近い

人工授精は、精子が腟から子宮を通って卵管まで泳いでいく道のりをショートカットするために、カテーテルを使って精子を直接子宮の奥に届ける治療です。卵子と精子が出会えるかどうかは、自然妊娠と同様に自然に任せることになるため、自然妊娠に近いといえます。
また、自然妊娠では、精子はそのままの状態で子宮に入っていきますが、人工授精の場合は状態の良い精子を洗浄・濃縮して子宮に送り込むので、自然妊娠よりも成功率が上がる可能性があります。

体への負担が少ない

自然妊娠に近い分、体への負担が少ないのも人工授精を行うメリットのひとつです。挿入するカテーテル自体もごく細いものであり、注入する精液の量も非常に少ない分量なので痛みもほとんどありません。
また、1回の人工授精にかかる治療時間も10~15分と短い時間で終えられるのも、体への負担が少ないメリットといえます。

費用を抑えられる可能性が高い

体外受精などの生殖補助医療(ART)は、高度な医療技術を駆使する治療のため、どうしても費用は高額になる傾向があります。
一方、人工授精は一般不妊治療のひとつであり、精子を子宮の奥に届けるというプロセスに人の手が加わるだけなので、生殖補助医療に比べると費用も抑えられる場合が多くあります。

人工授精(AIH)が向いている人

不妊治療のファーストステップであるタイミング指導(タイミング法)を6周期チャレンジしてもうまくいかない場合は、次の段階として人工授精(AIH)にステップアップすることが検討されます。
女性の年齢によっても異なりますが、一般的に人工授精が適用となる人や人工授精が向いている人は、下記のケースが該当します。

子宮頸管に不妊原因がある場合

子宮頸管に何らかのトラブルがあって受精障害が起きている場合、人工授精の適用となります。
例えば、「子宮頸管にポリープができている」、「子宮頸管から分泌される頸管粘液が少ない」、「精子と子宮頸管粘液の相性が良くなく、精子の侵入が阻害される」などの場合は、自然妊娠では受精の成立が難しくなります。そのため、人工授精で精子と卵子が出会うサポートをすることが必要になるのです。

精子に問題がある場合

女性の子宮の環境のみならず、男性側の精子の所見に問題がある場合も人工授精が向いています。具体的な数値でいうと、調整前の精液で総運動精子数が1,000万個以上 の場合に、人工授精が適用となる所見です。この場合の総運動精子数は、「精液量×濃度×運動率」で計算します。

また、総運動精子数が500万個以上の場合であれば、運動率30%以上が有効であるとされています。 例えば、「精液の量や精液中の精子の数が極端に少ない」「精子の運動状態があまり良くない」といった場合、人工授精の際に精子を洗浄・濃縮することで多少改善する可能性があるでしょう。

性交障害がある場合

性交障害がある場合も、人工授精の適用対象となります。
例えば、男性側に「勃起障害(ED)や射精障害がある」「性交がうまくいかない」「身体的・精神的要因によって性欲が低下している」「性交中の痛みへの苦痛によってセックスレスになった」などの場合があてはまります。これらの場合も、精液さえ採取できれば人工授精が可能になるので、人工授精に向いているといえるでしょう。

生命保険が適用される場合もある

2022年4月から公的医療保険の適用範囲が拡大し、不妊治療の多くで健康保険が適用されるようになりました。2022年4月以降に、医師から「不妊症」などの診断をされて、手術を伴う不妊治療を受けた場合、生命保険会社の手術給付金を受けられます。
具体的に手術給付金の適用対象となるのは、下記のような治療内容です。

手術給付金が適用対象となる不妊治療

  • 人工授精
  • 胚移植術
  • 採卵術
  • 精巣内精子採取術(男性のみ)

そのほかにも、体外受精・顕微受精管理料、受精卵・胚培養管理料、胚凍結保存管理料といった管理料も、給付金の請求対象となりました。

上記のとおり、手術給付金の対象となる手術に人工授精も含まれているため、生命保険に加入している人は保険のプランによっては申請することで給付金が下りる可能性があります。
自分の加入している生命保険で給付金が受け取れるかどうか不明な場合は、保険会社に一度問い合わせてみてください。

着床率を上げるためにできること

人工授精(AIH)が保険適用になったとはいえ、健康保険が適用される年齢や回数には制限があります。そのため、健康保険が適用されるうちに効果的にチャレンジするには、できるだけ着床率を上げる努力をすることが大切です。着床率を上げるために、下記のようなことを心掛けましょう。

精子の質を高める

人工授精の成功率を上げるには、まず精子が無事に卵子のもとにたどり着けるようにすることが大切です。そのためには、精子の質を上げる必要があるでしょう。

精子の質は、男性の心身のコンディションがものをいいます。例えば、「栄養バランスの整った食事を心掛ける」「なるべく残業をしない」「適度な運動をする」「早寝早起きをして規則正しい生活をする」「お酒やたばこは控える」「ストレスを溜めない」など、男性側が心身の調子を整えるように過ごすことがポイントです。
心身のコンディションを整えても精子の状態に問題があって人工授精に適さない場合は、何らかの病気も考えられるため、早めに医師に相談してください。

正確な排卵日を把握する

精子と卵子がうまく出会うためには、排卵日と精子を注入するタイミングが合わなければなりません。そのため、排卵日を正確に把握することが必要です。
まず、女性自身が毎月の月経周期を記録に残すようにします。そのほかにも、ホルモン検査や超音波検査を行い、医師に排卵時期の予測を出してもらいます。

ただし、「卵胞の成長が遅い」「成長しているものの排卵が起こりにくい」といったトラブルがあるケースもあります。その場合、排卵日を正確に把握することが難しくなるため、必要に応じて適切な時期に排卵が起こるよう、卵胞の発育を促す排卵誘発剤を使って卵巣刺激法を行うことがあります。
卵巣刺激法にはショート法やロング法、アンタゴニスト法などさまざまな方法があるので、医師と相談の上、自分の状態に合った方法を選択してください。

なるべく若いうちにチャレンジする

人工授精をしたからといっても、妊娠の成功率が大幅に上がるわけではありません。人工授精を行ったとしても、妊娠率は5~10%程といわれています。
女性側の年齢が高くなるにつれて着床率が低下し、流産率は高くなってくるため、人工授精を検討するのであれば、なるべく若いうちにチャレンジしたほうがいいといえます。

人工授精(AIH)のメリットもデメリットも知って、治療方針の相談を!

ほかの不妊治療方法と同様に、人工授精(AIH)にもメリット・デメリットがあります。その両方を知った上で、ご夫婦(カップル)お二人でクリニックを受診して、医師とよく相談し治療方針を決めることをおすすめします。
ご相談いただいたご夫婦(カップル)の年齢、不妊期間、過去の治療歴、不妊原因や程度などに合わせて、医師が最適な治療方法を提案いたします。

不妊治療は必ずしも画一的にステップアップするだけではなく、ステップダウンすることもあり、治療の流れは患者さま一人ひとりで異なります。
にしたんARTクリニックでは、患者さまファーストの視点に立って、ご夫婦(カップル)に合った治療方法を提案しています。タイミング法でうまくいかず、人工授精を検討されている場合は、医師やカウンセラーにご相談ください。

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