妊活

公開日: 更新日:

【医師監修】不妊の原因は?不妊症の定義や原因、不妊治療を解説

不妊には男女それぞれの側に多様な原因が考えられます。男女共に原因がある場合や、複数の原因が絡み合っていることも珍しくありません。場合によっては、検査をしても原因が見つからないケースも多くあります。

必要なタイミングで最適な治療を受けるためには、将来的に妊娠を考えている段階、あるいは「不妊かな?」と思った段階でなるべく早く不妊専門のクリニックに相談することが大切です。

この記事では、不妊症の定義のほか、受診の目安となる男女別の原因、基本的な不妊治療について解説します。赤ちゃんがなかなかできない、何を不妊症というのかわからないという方は、参考にしてください。

不妊の原因は男女それぞれさまざまあるが、
原因が見つからないことも

不妊とは、妊娠を望む健康な男女が一定期間避妊をせずに性交渉をしても妊娠に至らないことを指します。不妊症とは、妊娠しにくい・妊娠しない症状の総称で、妊娠の希望を叶えるために医学的治療を必要とするケースのことです。

不妊には男女それぞれにさまざまな原因があり、検査をしたからといって必ずしも特定できるわけではありません。公益社団法人日本産科婦人科学会によれば、全不妊症の10~25%は「原因不明不妊」が占めるといいます。日本産科婦人科学会は「一定期間」を1年としていますが、思い当たる不妊の原因がある場合は、1年を待たずに検査や治療を受けたほうが良いとしています。

※出典 公益社団法人日本産科婦人科学会「不妊症

不妊の原因は男女それぞれにある

厚生労働省が発行している「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」によれば、不妊の検査や治療を受けたことがあるカップルは増加しており、2021年に不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦の数は「約4.4組に1組」となりました。

健康なカップルの実に1割以上が不妊に悩んでいるともいわれ、同年に体外受精(Conventional-IVF/ふりかけ法)・顕微授精などの生殖補助医療(ART)によって生まれた子供の数は、約7万人に上ります。これは、生まれた赤ちゃんの12人に1人の計算です。

長く治療を続けている夫婦(カップル)も多く、生殖補助医療(ART)を受ければすぐに赤ちゃんに恵まれるというわけではありません。「不妊かもしれない」と考えて対策を講じる夫婦(カップル)が増えているといえるでしょう。 なお、不妊は女性側に原因があると思われがちですが、実際には男性、女性それぞれに原因があります。2017年のWHO(世界保健機関)の調査によれば、男女共に原因がある夫婦(カップル)は、全体の24%に上りました。

不妊の原因の男女比

女性の不妊症の原因

ここからは、男女別の不妊原因について紹介します。女性側の不妊症の原因としては、下記の5つが挙げられます。

排卵因子

卵巣の中の卵胞で卵子が成熟し、およそ20mmになったタイミングで排出される現象を排卵といいます。25~38日間を正常月経周期として、それよりも月経周期が長い・短い、月経が起こらないといった場合は、ホルモンバランスの乱れで卵胞が育たなかったり、排卵が起きていなかったりすることが考えられます。 排卵が起こらないと受精に至ることができません。これを排卵因子による不妊といい、女性不妊の30~47%を占めます。排卵因子を引き起こす主な疾患は、下記のとおりです。

排卵因子の原因となる疾患

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは、「月経異常」「多嚢胞性卵巣」「血中男性ホルモンまたはLH(黄体形成ホルモン)の基礎が高値で、FSH基礎値が正常」の3つの要素を満たした場合に診断され、不妊症を引き起こします。排卵因子の原因として最も多いといわれています。

卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌低下

視床下部から脳下垂体の機能不全によって卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌が低下すると、月経はあるけれど排卵しない無排卵、月経そのものがない無月経の原因になります。精神的なストレスや無理なダイエットが原因となるケースが多く見られます。

黄体機能不全

黄体機能不全とは、排卵後に卵胞から変化してできる黄体という組織から、女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)を正常に分泌できないことをいいます。プロゲステロンは妊娠の維持に欠かせないホルモンで、分泌されないと妊娠に必要な子宮内膜の準備ができません。原因は加齢、肥満、甲状腺機能異常などさまざまです。

高プロラクチン血症

高プロラクチン血症とは、本来なら産後に分泌量が増えるホルモンの「プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)
」が元々高い状態です。月経異常や不妊症を引き起こします。

甲状腺疾患

甲状腺ホルモンは卵胞の成長にも貢献するため、甲状腺疾患があって機能が低下していると卵胞が育たず、無排卵・無月経の原因になります。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)低値

AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、卵巣内にある発育途中の卵胞(卵子)から分泌されるホルモンで、低値の場合は卵巣内に残っている卵子の数が少ないことが推測できます。残っている卵子の数が少なければ排卵の機会も少なくなると考えられます。AMHの値は加齢とともに減っていくため、加齢は大きな要素となります。また、卵巣腫瘍や子宮内膜症などで卵管や卵巣を摘出した場合、AMHは低値となることが認められています。

卵管因子

卵管因子とは、卵管に起きるトラブルが原因で妊娠に至らないことをいいます。卵管因子は、女性の不妊の32~42%を占める不妊原因です。卵管は卵巣と子宮を結び、受精卵の通り道として機能しているため、卵管因子があると妊娠しにくくなります。

卵管因子には、卵管が完全に詰まっている「卵管閉塞」と、狭くなっている「卵管狭窄」があり、いずれも卵管内にバルーンカテーテルを挿入して開通させる卵管鏡下卵管形成術(FT)による治療が有効となることがあります。 にしたんARTクリニックの卵管鏡下卵管形成術(FT)について知っておきたいことを見る

子宮因子

子宮因子とは、子宮に疾患があったり、子宮そのものの形に問題があったりして、受精卵が着床できないことをいいます。子宮内膜が育ちにくい症状も子宮因子に含まれます。原因となる疾患の治療から入ることが多いでしょう。

子宮因子の原因となる疾患

子宮筋腫

筋腫は発生する場所でさまざまな症状を引き起こします。筋層内筋腫や粘膜下筋腫は、子宮内膜に干渉すると妊娠しづらくなります。

子宮内膜ポリープ

子宮内膜ポリープとは、子宮内膜の細胞が増え、子宮の内腔に出っ張ってできるポリープです。一定以上の大きさになると、受精卵が着床するのを阻害する原因になります。

頸管因子

頸管因子とは、腟と子宮を結ぶ子宮頸管で、精子の通過を助けるなどの働きをする頸管粘液に異常が出たり、精子を敵とみなして働きを阻害する抗精子抗体ができたりした状態をいいます。精子が頸管を通りづらいことによる不妊のため、人工授精や体外受精(C-IVF)で妊娠できる可能性があります。

免疫因子

免疫因子とは、本来、体内の抗体によって細菌やウイルスから身を守る免疫が、精子を敵とみなして働きを阻害している状態を指します。免疫によって精子の動きは制限され、受精が妨げられます。抗精子抗体の有無は、血液検査でわかります。なぜ、こうした働きが起こるのかはわかっていません。

その他 (子宮内膜症)

子宮内膜症とは、本来あるべき子宮の内側以外の場所に、子宮内膜やそれに似た組織が増えてしまう疾患です。女性ホルモンの影響で月経周期に合わせて増殖し、卵巣や卵管、子宮と直腸のあいだのくぼみにあたるダグラス窩などにできやすいといわれています。慢性的に炎症が起こっている状態となるため、卵巣機能が低下し、卵子の質が低下するため不妊の原因となります。また、卵管およびその周辺が癒着を起こすこともありこれも不妊の原因となります。

男性の不妊症の原因

続いて、男性側の不妊症の原因を解説します。男性側の不妊の原因は、主に4つ挙げられます。

造精機能障害

造精機能障害とは、精子を作る機能に障害があり、精子濃度や運動率といった精子所見が悪い状態を指します。精子の数が少なかったり、質が劣っていたりして自然妊娠が難しくなります。男性不妊の中で最も多い原因で、なぜ造精機能に障害が起こるかはわからないことが多いのも特徴です。 精索静脈瘤という疾患が原因であれば、手術により治療可能ですが、原因不明であれば根本的治療は難しいでしょう。

機能不全

機能不全とは、勃起ができないED(勃起障害)、勃起はしても射精ができない射精障害などを指します。薬物療法により対処が可能です。

精路通過障害

精路通過障害とは、精巣内で精子は作られているものの、精子の通り道がふさがったり、狭くなったりしていて障害があり、外に出られない症状を指します。 通常より精子の数が少ない乏精子症、精液中に精子がない閉鎖性無精子症などを引き起こします。精路再建術などの手術が有効な場合もありますが、閉塞の状態にもよるため検査が必要です。

副性器障害

副性器障害とは、精巣上体や前立腺、精嚢など、睾丸以外の臓器に炎症が起きている状態を指します。 これらの臓器に炎症が起きると、精子の運動率低下をはじめとした不妊の要因になるため、まずは炎症の治療を行います。

男女双方に起こりうる不妊の原因

不妊には性別とは関係のない原因もあります。男女問わずに起こり得る3つの原因について見ていきましょう。

原因不明不妊

原因不明不妊とは、不妊の検査をしても原因が特定されないことをいいます。
不妊は、妊娠のプロセスのどこかにトラブルがある場合に起こりますが、プロセスの中には解明されていないことも多いため、原因不明の不妊は少なくありません。 一般不妊治療で結果がでなければ、ステップアップを前提として検査をし、生殖補助医療(ART)を受けることを検討してください。

加齢による影響

男女を問わず、年齢を重ねると卵子・精子の数や質が低下するため、妊孕性(にんようせい)が落ちてしまいます。妊孕性とは、妊娠したり、させたりする能力のことです。不妊治療を始めるなら少しでも早いほうが良いとされているのは、年齢が妊孕性に影響を及ぼすためです。

心理的な影響

妊娠への焦りや、周囲からのプレッシャーでストレスを抱えることが、不妊の原因になることもあります。抑うつ状態になることで、不安や生活の質の低下が生じ、性腺刺激ホルモンの乱れや排卵障害などにつながります。

不妊はどんな検査で判明するの?

自分たち夫婦(カップル)が不妊であるかどうかを調べるには、医療機関で詳しく検査を受ける必要があります。不妊治療専門クリニックでは、この検査を「スクリーニング検査」と呼んでいます。 ここでは、男女それぞれに行われる代表的なスクリーニング検査をご紹介します。

女性側のスクリーニング検査

不妊かどうかをスクリーニング検査で調べることで、不妊だった場合に適切な治療法や方針を選択することができます。女性側のスクリーニング検査の主な内容は、下記のとおりです。

経腟超音波検査

経腟超音波検査とは、腟から経腟用プローブと呼ばれる器具を挿入し、子宮や卵巣の状態を診る検査です。子宮筋腫や卵巣嚢腫、子宮内膜の厚さや卵胞の大きさなどを調べられます。痛みはほぼありません。医師の指で内診し、子宮の位置や形、硬さなどを確認することもあります。

血液・ホルモン検査

血液検査では、卵巣機能や子宮内膜の環境などがわかる血中ホルモンである卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、プロゲステロン、エストロゲン(卵胞ホルモン)、AMH(抗ミュラー管ホルモン)などの値がわかります。また、感染症(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)に罹患していないかを調べます。

男性側のスクリーニング検査

不妊かどうかを判断するためには、男性側の検査も必須です。どのような検査をするか、見ていきましょう。

精液検査

精液検査は、男性不妊の検査における最も基本的な検査であり、重要な指標となる検査です。
具体的には、禁欲期間を2~7日設けた後に受診し、マスターベーションで採取した精液を顕微鏡で観察します。精液の量、濃度、精子の運動率などがわかり、自然妊娠を阻む要因の有無を判断できます。 WHOが設けている「自然妊娠が期待できる基準値」は図のとおりです。

血液検査

血液検査では、B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIVに罹患していないかを調べます。検査が陽性だった場合、まずは感染症の治療をしてから不妊治療に移らなくてはなりません。

不妊治療のステップ

スクリーニング検査で不妊であるかどうか、またその原因がわかったら、医師からの提案を受けて治療に進みます。 不妊治療は、排卵と受精を補助する治療のことです。タイミング指導(タイミング法)や人工授精(AIH)といった一般不妊治療と、一般不妊治療で妊娠に至らない場合に選択される体外受精(C-IVF)や顕微授精(ICSI)といった生殖補助医療(ART)があります

  • 不妊治療の4つのステップ

多くの場合、自然妊娠の確率を上げるタイミング指導からスタートし、数周期で妊娠しない場合には人工授精、体外受精(C-IVF)、顕微授精と、治療法をステップアップしていきます。ただし、年齢や状況によっては、生殖補助医療からスタートすることもあるでしょう。 それぞれの治療法の概要について、下記で詳しく解説します。

1.タイミング指導

タイミング指導とは、超音波検査や血液検査で最も妊娠しやすいといわれる「排卵日」を推測し、性交渉のタイミングを合わせるよう指導して妊娠の確率を上げる方法です。卵胞発育が不良な場合には排卵誘発剤を併用して卵胞の発育・排卵を促してタイミングをとることもあります。

2.人工授精

人工授精とは、採取した夫(パートナー)の精子を洗浄濃縮し、排卵日に合わせて子宮内に注入する方法です。精子の量や運動量が少なく、精子だけの力では子宮内に到達する可能性が低い、性交障害がある場合に選択されます。

3.体外受精(C-IVF)

体外受精(C-IVF)とは、採卵手術により取り出した卵子に精子を振りかけることによって受精を促し、培養して育てた受精卵(胚)を子宮に戻す方法です。精子が自力で卵子の中に入り込まなければいけません。

4.顕微授精

顕微授精は、顕微鏡を使って質の良い精子を卵子に直接注入して受精させ、培養して育てた受精卵(胚)を子宮に戻す方法です。精子が1匹でも採取することができれば、治療を行うことができます。

不妊治療クリニックを探すときのポイント

不妊治療を始めると頻繁な受診が必要になるため、通院の負担が少なく自分に合ったクリニックを選ぶことが大切です。不妊治療クリニックを選ぶ際のポイントをご紹介しますので、参考にしてください。

自宅や職場から通いやすいかどうか

不妊治療開始後は、働いている方であれば仕事の合間や終業後、週末などを利用して受診するのが一般的です。自宅や職場から通いやすい場所、ターミナル駅からすぐにあるクリニックを選ぶと通院しやすいでしょう。

生殖医療に詳しい医師が在籍しているか

不妊治療を行う際、医師の知見や技術は重要です。生殖医療の経験値が高く、高度な知見と技術を有する医師が在籍しているクリニックを選ぶことをおすすめします。 ウェブサイトで医師の経歴を確認したり、インターネット上の口コミの評判を参考にしたりするのもおすすめです。

治療費用が明確であること

不妊治療は高額になる印象がありますが、保険適用によって経済的な負担が大幅に軽減されました。わかりやすく費用を提示しているクリニックを選び、治療にかかる概算金額を把握した上で治療を始めてください。 なお、お住まいの自治体によっては、不妊治療に対して独自の補助をしていることがあります。事前に要件などをチェックし、申請のタイミングなどを確認しておくことをおすすめします。

予約の取りやすさ

仕事や家事とのバランスをとりながら治療していけるよう、予約の取りやすさも確認しておくと安心です。ネットのみで予約を完了できるクリニックもあれば、電話での予約が必須の場合もあります。 また、患者数が多く新規予約を制限しているケースもありますので、状況を確認してください。

医師やカウンセラーの方針・相性が合うかどうか

医師やカウンセラーとの相性や、方針への共感度は大切なポイントです。患者の希望を優先して治療計画を立てる医師か、検査結果ありきで必要と判断する治療を行う医師かで、治療に対する満足度は大きく変わってきます。

「治療に関するステップアップの提案は適切にしてほしいけど、まずは基本的な治療から試してみたい」「よく話を聞いてほしい」など、医師やカウンセラーに求めるものを明確にして、相性を見極めてください。 「話しやすい」「信頼できる」「優しい雰囲気でほっとできる」といったフィーリングは話してみないとわからないので、無料カウンセリングなどを利用してみるのもおすすめです。

「不妊かな?」と思ったらまずは、
にしたんARTクリニックでカウンセリングを

不妊とは、妊娠を望む健康な男女が、避妊をせずに一定期間性交渉をしても妊娠に至らないことをいいます。男性側にも女性側にも多く原因があり、検査をしても特定できないことは珍しくありません。
「不妊かな?」と思ったら早めに不妊治療専門クリニックにかかり、治療の必要性を検討することをおすすめします。不妊治療の難度は年齢に応じて上がるため、「赤ちゃんが欲しいのにできない」とお悩みの方は、なるべく早めに専門のクリニックを受診してください。

にしたんARTクリニックは、全国にあるすべての院がターミナル駅目の前の好立地にあり、夜遅くまで診療しています。「通院しやすい」「仕事終わりにも受診できてうれしい」と好評です。利便性を求めて転院して来られる方も少なくありません。 にしたんARTクリニックでは、常に患者さまファーストの精神で治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください

にしたんARTクリニックでの
治療をお考えの方へ

患者さまに寄り添った治療を行い、より良い結果が得られるよう、まずは無料カウンセリングにてお話をお聞かせください。下記の「初回予約」ボタンからご予約いただけます。

初回予約