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受精から着床までに気をつけることとは?妊娠のメカニズムを解説

精子と卵子が出会い、受精卵(胚)になっても、子宮内膜に着床しなければ妊娠は成立しません。受精から着床までのあいだ、女性自身がその予兆を明確に感じることはほとんどありませんが、体の中ではさまざまな変化が起こっています。

では、具体的には体の中で何が起こっているのでしょうか。不妊治療を行っているのであれば、着床率や妊娠率を少しでも上げるために、この間にできること、やってはいけないことは知っておきたいものです。 本記事では、受精から着床までのメカニズムと女性の体に起こる変化、この時期に気をつけたいことについて解説します。

受精から着床までのメカニズム

受精から着床までは、妊娠が成立するか否かを左右する大切な時期です。女性の体の中でどのような現象が起こり、どれくらいの日数がかかるのか、具体的に見ていきましょう。

受精の成立

受精とは、卵子と精子が出会って融合し、受精卵(胚)になることをいいます。受精が行われるのは、月経開始日から2週間程度経った排卵の時期です。卵巣から放出された卵子は、卵管の端の卵管膨大部という場所で卵管を上がってくる精子を待ちます。

卵管膨大部で待機している卵子が受精できるのは、排卵から12時間程のあいだです。一方、精子の寿命は、およそ72時間といわれています。ここでタイミング良く卵子と精子が出会い、1個の精子が卵子の中に入ることを「受精」といい、受精した卵子を「受精卵(胚)」といいます。

着床の完了

着床とは、受精卵(胚)が子宮内膜にしっかりと接着することです。卵管膨大部で受精が完了した受精卵(胚)は、細胞分裂を繰り返しながら、卵管を通って子宮へと移動します。

受精卵(胚)は子宮に到着した後も細胞分裂を行い、胚盤胞(はいばんほう)となって、表面には絨毛(じゅうもう)という根のような組織が現れます。この絨毛が厚くなった子宮内膜にもぐり込み、しっかりと根を張って母体から栄養をとれるようになったら、無事に着床です。 通常、この子宮内膜への着床の完了をもって妊娠の成立とされています。

受精から着床までにかかる日数

受精から着床までは、およそ12日かかるといわれています。
受精卵(胚)は3~5日をかけて卵管を移動し、子宮にたどり着いた後も細胞分裂を繰り返し、受精から7日目頃に胚盤胞となって子宮内膜に到達します。 子宮内膜に到達した胚盤胞は絨毛を張り巡らせ、5日程かけて着床するのが一般的です。

着床が完了すると、女性の体はどう変化する?

着床が完了し、妊娠が成立すると、女性の体には少しずつ変化が起こるようになります。
人によっては気づかないくらいの小さなことや、妊娠の兆候とは思えないようなこともありますが、それらの変化を知っておくことで、妊娠に早く気づくことができるかもしれません。妊娠がわかれば、体調や日常生活に気をつけることもできるでしょう。 実際にどのような変化が現れるのか、代表的なものをご紹介します。

おりものの状態が変化する

受精から着床までのあいだには、おりものの変化を感じることがあります。
妊娠が成立するとエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が増えるため、おりものの量も増え 、さらさらとした水っぽい状態になります。
また、着床によって腟内のpHが変わると、おりものの色が白濁したり、黄色っぽく変化したりするほか、酸っぱいにおいを感じるようになることもあります。

出血することがある

着床の前後に少量の出血をすることがあり、着床出血と呼ばれます。 これは、受精卵(胚)が着床する際、子宮内膜を傷つけてしまうことから起こるもので、出血するのは着床から1~2日前後の短い期間です。着床したら必ず起こるわけではないので、出血しなかったからといって、妊娠していないと不安に思うことはありません。

基礎体温が上がる

受精卵(胚)が着床すると、高い体温が続くようになります。
女性の体温は高温期と低温期を繰り返しており、通常は月経の3~4日前から体温が低下し、月経が起こります。しかし、受精卵(胚)が着床すると体温は下がらず、体温は高いままです。

これは、子宮内膜の環境を維持するためにプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が続くためで、妊娠後期まで継続します。高体温が2週間程続き、月経開始予定日になっても月経が来ない場合、妊娠している可能性が出てきます。 普段から基礎体温を測っている人は、その変化によって妊娠に気づくかもしれません。

腰痛がある

受精や着床の過程で、腰の違和感や腰痛を覚えることがあります。 これは、子宮が受精卵(胚)を受け止めるために子宮内膜を厚くし、さらに収縮を繰り返して大きくなっていくためです。しかし、子宮の収縮による違和感や痛みは月経の症状と近いため、気づかない人も少なくありません。

理由なくイライラする

娠初期はホルモンのバランスが急激に変化するため、感情のコントロールが難しくなることがあります。いつもなら気にならないような些細なことが気になる、気分が落ち込む、疲れやすさを感じるといった変化が表れる人もいます。

眠気を感じる

妊娠が成立すると、妊娠を継続させるためにプロゲステロンの分泌量が増え、強い眠気に襲われます。これは、プロゲステロンに眠気を誘う作用があるためです。 また、通常体温は夜になるほど下がり、体を深い眠りに導きますが、妊娠すると基礎体温が高くなることに加え、自律神経が乱れて体温を調節しにくくなります。夜になっても体温が高いままだと睡眠の質が低下してしまい、結果として日中に眠気を感じることがあります。

月経が来ない

受精卵(胚)が着床すると、次の月経は起こりません。
妊娠が成立すると、子宮内膜は胎盤の一部を形成する脱落膜になるため、月経は止まっている状態になります。月経周期が正順な人の場合、月経開始予定日から1週間以上が過ぎても月経が来ないときは、ほぼ妊娠が成立したと考えられます。

受精から着床までに気をつけること

受精から着床までの期間は、胎児の中枢神経や心臓といった器官が形成されていく大事な時期です。
女性の体に現れる変化はごくわずかで、はっきりと妊娠したとは感じられないかもしれませんが、不妊治療を行っているなら、下記のような点に気をつけて生活しましょう。

しっかり睡眠を取る

受精卵(胚)を受け止める子宮内膜を適切な環境に整えるためには、ホルモンバランスを正常に保つことが大切です。睡眠をしっかりと取れば、ホルモンバランスが乱れるのを防ぐことができます。

受精から着床までのあいだに十分に睡眠を取ることで、着床までの期間を早めたり、着床率が上がったりするといわれています。
規則正しい生活のリズムを作るためにも、夜は早めに布団に入り、毎朝同じ時間に起床するように心掛けてください。

バランスの良い食事をとる

1日3食、さまざまな食材を取り入れ、栄養バランスのとれた食事をとりましょう。 また、妊娠を望んでいる女性に積極的にとってほしいのが、葉酸です。葉酸は、胎児の神経系の発達に重要な役割を果たす栄養素とされています。厚生労働省では、胎児の先天性異常の予防のためにも、妊娠前から葉酸の栄養機能食品(サプリメント)を取り入れることを推奨しています。

喫煙や飲酒はしない

喫煙や飲酒は、胎児に悪影響を与える可能性があります。流産や早産、低出生体重児で生まれるリスクがあるだけでなく、妊娠率にも影響するといわれているため、受精から着床までのあいだは控えたほうがいいでしょう。もちろん、妊娠成立後も控えるに越したことはありません。

カフェインを控える

妊娠中にコーヒー、紅茶、緑茶などに含まれるカフェインを過剰摂取すると、流産や早産になるリスクや、胎児の成長が悪くなるといわれています。 1日1~2杯程度のコーヒーは問題ないとされていますが、カフェインには体を冷やす作用があります。なるべくカフェインの入っていない飲み物を選ぶようにしましょう。

服用している薬について医師に確認する

妊娠中の薬の服用は、胎児に影響を及ぼす可能性があります。普段から服用している薬がある場合や、頭痛などで市販されている薬を服用したいときは、自己判断するのを避け、まず医師に確認することが大切です。

レントゲンは撮らない

歯や胸部など通常のレントゲン検査の放射線量はごく微量のため、妊娠していると気づかずに検査を受けてしまっても、一般的には問題ないとされています。

しかし、受精から着床までの期間は、胎児の中枢神経や心臓など重要な器官が形成されていく時期にあたるため、その期間にレントゲン検査を受けるのは避けたほうがいいでしょう。 なお、レントゲン検査の際には、必ず妊娠の有無を確認されます。妊娠が確定している人だけでなく、妊娠の可能性がある場合も申告するようにしてください。

体を冷やさない

妊娠するとホルモンバランスの変化や自律神経が乱れることから、体温の調整がうまくいかず、体が冷えやすい状態になります。 体が冷えると血流が悪くなり、むくみやつわり、倦怠感が起こりやすくなります。受精から着床までの期間はもちろん、妊娠が成立した後も、温かい汁物や温野菜を食べる、湯船に浸かる、足や首元を温めるなど、体を冷やさないことが大切です。

感染症に注意する

女性の体は妊娠すると免疫力が下がるため、感染症には注意しなければなりません。免疫力が下がるのは、妊娠していないときには「異物」であった受精卵(胚)を、免疫機能で排除しないようにするためです 。
妊娠中に細菌やウイルスなどに感染すると、母体だけでなく胎児に影響を及ぼす可能性があります。食事にも気をつけ、流行している感染症の免疫がない家族には予防接種を受けてもらいましょう 。
なお、一般的に妊娠中の性交渉は問題ないとされていますが、性感染症のリスクが高まるため、避妊具を装着することが推奨されています 。

既往歴や体の状態によっては性交渉を避ける

一般的に、受精から着床までの期間に性交渉を行っても妊娠の継続に問題はないとされています。ただし、精液には子宮を収縮させる作用があるため、過去に流産・早産の経験がある方や、不正出血がある方などは避けたほうが良いでしょう 。
また、不妊治療で胚移植を行った場合は、着床の障害になる可能性や、感染症の原因になることから、医師によっては性交渉を制限することがあります 。医師の指導に従い、無理をしないことが大切です。

妊娠がわかったら何をすればいい?

月経開始予定日を過ぎても月経が来ない場合、妊娠している可能性があります。「妊娠したかな?」と思ったら、まず何をすればいいのか見ていきましょう。

妊娠の確定診断を受ける

妊娠の確定には医師の診断が必要です。ただし、月経開始予定日を1~2日過ぎたからといって、すぐにクリニックを受診することはありません。月経開始予定日を過ぎて1週間後を目安に、まずは妊娠検査薬を使って検査をしましょう。

妊娠検査薬で陽性が出た場合は、クリニックに連絡して受診します。クリニックでの超音波検査により、胎児の心拍と胎嚢(たいのう)が確認されたら、妊娠の確定です。不妊治療を行っている場合は晴れて不妊治療が終了し、今後は産科のあるクリニックや病院に移ります。

出産予定日を算出 する

妊娠が確定したら、出産予定日を算出します。出産予定日は、受精日を推定し、妊娠週数を割り出して計算されます。 妊娠週数は、妊娠における胎児の発育状況を評価する大切な基準となるものです。「妊娠◯◯週◯日」と表記し、数え方には下記の2通りがあります。

妊娠週数の数え方

1. 受精に関する明確な情報(基礎体温、限られた性交渉日、人工授精(AIH)、体外受精(Conventional-IVF/ふりかけ法)の日)がある場合、その日を「妊娠2週0日」とする。
2. 月経周期が正順(28~30日)で、最終月経が正確にわかる場合、最終月経の開始日を「0週0日」とする。

1.と2.では2週間程のずれが生じていますが、いずれも最終月経の開始日を「0週0日」とした計算方法で、排卵あるいは採卵の時点で「妊娠2週0日」とする考え方です。
月経周期が不明または不順な場合や、受精に関する情報がない場合は、受精日を推定しにくいため、超音波初見によって妊娠週数を決めます。 妊娠から出産までに要する期間は280日(40週0日)が標準とされ、そのうちの妊娠13週6日までが「妊娠初期」といわれます。

妊娠初期に気をつけるべきリスク

妊娠初期は母子共にさまざまなリスクがあり、問題がある場合は早めに対処することが大切です。異常を感じたらすぐに病院で受診しましょう。ここでは、3つのリスクを紹介します。

子宮外妊娠の可能性

妊娠13週6日までの妊娠初期は流産のリスクが高く、その8割以上が妊娠12週未満の早い時期に起こっています。その原因のひとつである「子宮外妊娠」は母体にも影響があるため、早期に発見しなければなりません。

子宮外妊娠とは、受精卵(胚)が子宮以外の場所に着床した妊娠のことです。妊娠検査薬で陽性反応が出ているにもかかわらず、超音波検査で妊娠6週以降も子宮内に胎嚢が確認できない場合は、子宮外妊娠が疑われます。 子宮外妊娠の中で最も多いのが卵管への着床ですが、子宮以外の場所に着床しても胎児は育つことができません。また、卵管が破裂してしまう可能性も少なくないため、早期に治療することが重要です。

胞状奇胎の可能性

胞状奇胎とは、通常であれば胎盤になっていく絨毛が、水泡状に異常増殖していく病気です。早期の超音波検査に加え、血液(尿)検査で血液中(尿中)のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という妊娠性ホルモンの値が正常の妊娠より非常に高い値が出た場合に、この病気が疑われます。これは、卵子と精子が受精するときの異常によって起こるもので、正常な妊娠を続けることができません。

胞状奇胎は絨毛がんに移行することもあるため、適切な治療と慎重な経過観察を要しますが、問題がなければ約6ヵ月後には、医師の判断を得た上で再妊娠が可能となります。

切迫流産の可能性

切迫流産とは、妊娠22週未満に性器からの出血や下腹部の痛みがあり、流産のリスクがある状態のことをいいます。子宮頸管が開いていなければ妊娠の継続が可能で、90%程の確率で回復するとされています。

切迫流産と診断されても、すぐに入院が必要なケースもあれば、経過観察で済むケースもあるなど、人によって程度はさまざまです。また、切迫流産と診断されても明確な治療法は確立されていないため、医師の判断を仰ぎながら適切な対処をしていくようにしましょう。 また、切迫流産に限らず、妊娠初期の流産の多くは残念ながら防ぐための方法がありません。神経質になりすぎず、なるべく穏やかな気持ちで過ごすことも大切です。

妊娠の超初期は安静に過ごして早めの受診を

受精から着床までが滞りなく進み、妊娠が成立すると、女性の体には少しずつ変化が現れ始めます。人によっては「まったく感じなかった」というくらいのわずかな変化ですが、この時期は胎児にとって重要な器官が形成されていく時期です。不妊治療を行っている方や妊娠を希望されている方は、なるべく体に負担をかけないようにし、早めにクリニックを受診するようにしましょう。

また、妊娠を希望しているのになかなか妊娠しないという場合は、何らかの原因が隠れていることも考えられます。不妊治療を考えている方は、少しでも早く治療を始めることが妊娠への近道です。不妊治療専門のクリニックで、詳しい検査を受けてみることをおすすめします。

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