体外受精

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【胚培養士監修】体外受精(IVF)と自然妊娠の流産率の違いとは?

【胚培養士監修】体外受精(IVF)と自然妊娠の流産率の違いとは?

妊娠を希望する多くの方にとっては、流産のリスクは心配事のひとつではないでしょうか。妊娠に向けて不妊治療を考えている方の中には、体外受精(IVF/ふりかけ法)は自然妊娠よりも流産のリスクが高いのでは、と不安に感じている方もいるかもしれません。

この記事では、体外受精は流産率が高いといわれる理由や、自然妊娠と比較した場合の流産率について解説するとともに、流産率を下げる方法を紹介します。

体外受精(IVF)の流産率が高いといわれる理由

不妊治療を検討していると、「体外受精は流産する確率が高い」といった話を聞くことがあるかもしれません。しかし、体外受精と流産に因果関係はなく、流産には母体の年齢が大きく影響しています。

体外受精は、排卵日を特定して性交渉を持つよう指導するタイミング法(タイミング指導)や、パートナーの精子を採取して排卵のタイミングで子宮に注入する人工授精(AIH)で妊娠に至らなかった場合に行われる不妊治療です。
不妊治療の成功率と年齢の関係は深く、母体の年齢とともに妊娠の成功率は下がり、難度が上がります。

そのため、一般不妊治療といわれるタイミング法や人工授精で結果が出ず、生殖補助医療(ART)である体外受精や顕微授精(ICSI/イクシー)に移行する人の多くは、年齢による卵巣の機能低下や卵子の質の低下、婦人科系の疾患などで、妊孕力(にんようりょく:妊娠する力)が落ちている可能性もあるとされています。

また、流産の原因のひとつである染色体異常の確率も年齢とともに上がるため、流産のリスクが高い方が体外受精を行っているケースが多いのも「体外受精の流産率は高い」といわれる要因のひとつです。

そのため、体外受精の治療そのものに流産率を上げる要因があるわけではありません。

※出典 公益社団法人日本産科婦人科学会「2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績

そもそも流産はなぜ起こる?

そもそも、流産はなぜ起こるのでしょうか。
流産とは、妊娠22週未満(妊娠21週6日まで)の胎児が母体の中で亡くなり、妊娠が継続できなくなることをいいます。

流産の原因は、生殖器の構造的な異常や飲酒・喫煙、感染症といった母体側の問題と、遺伝性疾患や先天異常など胎児側の問題に分かれますが、多くの場合は原因を特定できません。

ただし、妊娠10~11週までに起こる流産の多くは胎児の染色体異常によるものとされています。この場合、卵子が受精する前から流産は決まっているため、妊婦さんがどんなに気をつけて過ごしていても流産を避けることはできません。
不妊治療は進歩していますが、流産を完全に防ぐことはできないのが実情です。

体外受精(IVF)と自然妊娠の流産率に差はある?

前述したとおり、体外受精か自然妊娠かに流産率の差はなく、流産率には年齢が大きく関わってきます。

生殖補助医療(ART)での妊娠率と流産率

※出典 公益社団法人日本産科婦人科学会「2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績

上のグラフを見ると、体外受精をした場合、20代後半から30代前半までの流産率はほぼ20%程度で横ばいです。また、妊娠率も高い状態を維持していることがわかります。
しかし、流産率は35歳くらいから上昇に転じ、40代前半になると40%程度、45歳以上になると50%程度まで確率が上がります。同時に、妊娠率は30歳をピークとして下降の一途をたどり、42歳の時点で流産率が妊娠率を上回ります。

これだけを見ると体外受精の流産率は高く、妊娠率は低いように見えますが、自然妊娠の流産率も全体の約15%に上ります。40歳以上の場合、自然妊娠できたとしても50%は流産することから、一概に体外受精の流産率が高いとはいえません。
流産率に影響を与えるのは、体外受精か自然妊娠かではなく、年齢であるといえるでしょう。

体外受精(IVF)での流産率を下げる方法

体外受精であっても、自然妊娠であっても、流産は誰にでも生じる問題であり、残念ながら避けることはできません。ここからは、体外受精を行うにあたり、できる限り流産率を下げるために実践できる方法を紹介します。

健康的な生活を心掛ける

健康的な生活を送ることは、母体と胎児の体を守り、流産率を下げることにつながります。

不妊治療中はもちろん妊娠中は、栄養バランスの良い食事を心掛けましょう。ごはんやパン、麺類などの「主食」、魚、肉、卵、大豆などを使ったメインとなるおかずの「主菜」、野菜や海藻、芋類などを使った「副菜」を意識して献立を考えることをおすすめします。
栄養素の中でも葉酸は、胎児の先天性異常を予防して発達を助け、早産のリスク回避にも役立つため、適切な量をとるよう意識してください。

また、1日分の栄養素を1日3食でとることを基本とし、1食の食べ過ぎによる肥満や生活習慣の乱れを防ぐことも重要です。ホルモンバランスを正常に保つため、適度な運動を取り入れ、質の良い睡眠をとることも意識してください。

ストレスを溜め込まない

過度なストレスはホルモンバランスを乱す原因になります。ホルモンバランスの乱れは、子宮内膜を維持し、妊娠を安定させる役割があるプロゲステロンの分泌を低下させ、流産のリスクを高めるおそれがあるのです。
妊娠を待つ間は、月経が来るか来ないかで一喜一憂するなど、ストレスを感じることが多くなります。過度なストレスは体の血管を収縮させて血行を悪くさせるほか、自律神経の乱れからホルモンバランスの乱れを引き起こすため、自分なりのストレス解消法やリラックスできる方法を見つけることが大切です。

不妊治療以外のことに目を向け、自分の趣味に打ち込んだり、夫(パートナー)に不安な気持ちを打ち明けたりして、ストレスを溜め込まないようにしてください。

早めに不妊治療を始める

早めに不妊治療を始めることも流産率を下げることにつながります。
流産のリスクは、年齢が上がるにつれて高くなります。生活や仕事の状況が許すのであれば、パートナーとよく話し合って早めに妊活を始めましょう。

なお、日本産科婦人科学会は、健康な男女が1年にわたって避妊をせずに性交渉を行っても妊娠しない状態を不妊症と定義しています。なかなか妊娠しないと感じたら、早めに不妊治療を始めることをおすすめします。

PGT-A(着床前検査)を受ける

流産率を下げる方法のひとつに、PGT-A(着床前検査)があります。
前述のとおり、妊娠初期の流産のほとんどは胎児の染色体異常によるものです。一方で、染色体異常がない胚を選んで移植できれば流産率を下げられるということになります。

そこで有効なのが、PGT-A(Preimplantation genetic testing for aneuploidy:着床前検査)です。PGT-Aは、体外受精で得られた胚の細胞の一部を採取して生検し、染色体の数を調べる検査です。検査の結果をもとに、染色体や構造の異常がない胚を選んで移植することで、流産や特定の病気への罹患を防ぐことが期待されている技術として注目されています。

しかし、日本では新しい技術のため、PGT-Aを受けるには「過去に生殖補助医療の不成功を2回以上経験していること」「過去に2回以上流産を経験していること」の2つの条件が設定され、実施できる医療機関も限られています。

にしたんARTクリニックでは、神戸三宮院でPGT-A検査を行っています。
ご興味がある方は、無料カウンセリングなどでも相談が可能です。お気軽にお問い合わせください。

体外受精(IVF)での流産が不安な方は、まずはカウンセリングでご相談ください

体外受精に挑戦するにあたって、流産を不安に思う気持ちは当然のことです。しかし、流産率の比較では自然妊娠と大差なく、年齢が上がるほど流産率が高くなる点は、体外受精も自然妊娠も変わりありません。妊娠を希望していてもなかなか良い結果につながらない方は、早めに不妊治療を検討しましょう。

にしたんARTクリニックでは、不妊治療に関する不安や悩みごとについて、無料で何回でもカウンセリングを受けることができます。「不妊治療を検討しているけど、流産が不安」「そもそも、今の年齢で不妊治療ができるかどうか知りたい」といった場合には、にしたんARTクリニックの無料カウンセリングをご利用ください。

この記事の監修者

にしたんARTクリニック
胚培養士・品川院培養室マネージャー

小野寺 寛典

日本卵子学会生殖補助医療胚培養士。2012年より不妊治療専門クリニックで胚培養士を務め、多くの一般不妊治療、生殖補助医療にかかわる。2022年よりにしたんARTクリニック品川院培養室マネージャーとして、患者さまファーストの不妊治療にあたるほか、全国にあるにしたんARTクリニックの培養室スタッフの連携を推進し、スタッフの育成・指導、管理体制の改善にも貢献している。

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