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自然妊娠が難しくなる要因のひとつとして、抗精子抗体が挙げられます。抗精子抗体は男女ともに発生する可能性があり、抗精子抗体を持っていると、精子の動きが抑制されたり、受精が妨げられたりすることがあります。ご夫婦(カップル)のどちらか、または両方が抗精子抗体を持っている場合、自然妊娠が難しくなるでしょう。このような場合、抗精子抗体の有無を調べる抗精子抗体検査を受けることで、不妊の原因を特定する手掛かりになります。
この記事では、抗精子抗体の有無を調べる抗精子抗体検査の概要や抗精子抗体が作られる理由、検査内容について解説します。不妊の原因がわからず悩んでいる方や、抗精子抗体検査を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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抗精子抗体検査とは、精子の働きや受精の過程を妨げる抗体の有無を調べる検査抗精子抗体ができてしまう理由抗精子抗体検査の方法抗精子抗体検査の結果が陽性だった場合の治療法なかなか自然妊娠できない場合は、抗精子抗体検査を検討してください抗精子抗体検査とは、精子の動きや受精の過程を妨害する抗体があるかを調べる検査です。
精子を攻撃する抗体を抗精子抗体といい、抗精子抗体には、精子の動きを止める不動化抗体、精子同士をくっつけて運動率を下げる凝集抗体、精子の受精機能を破壊する受精阻害抗体などがあります。これらの抗体が体内にあると、受精の過程を妨害し、不妊を引き起こす原因となります。なお、抗精子抗体による不妊症は、免疫性不妊症の一種です。
抗精子抗体検査は、血液検査で採取した女性の血清に精子を加え、時間経過とともに精子の運動率を測定します。抗精子抗体がある場合、精子の動きは徐々に低下します。その点を踏まえ、時間ごとに精子の運動率の変化を測定し、どの程度の障害を受けたかを示すSIV値(血中抗体価)を算出して、抗精子抗体の有無を判定するのが一般的です。
抗精子抗体検査の対象となるのは、主にヒューナー検査(性交後検査)の結果が良くなかったご夫婦(カップル)です。夫(パートナー)の精液検査の結果が正常でも、ヒューナー検査の結果がよくない場合、抗精子抗体を持っている可能性が疑われます。
また、抗精子抗体検査は、タイミング法や人工授精(AIH)を受けても妊娠が成立しない方や、原因不明の長期不妊の方が受けることも可能です。なお、採血の時期は問わないため、いつでも検査できます。
ヒューナー検査とは、子宮頸管の粘液中に運動性を保った精子がいるかを調べる検査で、抗精子抗体検査を受ける前に受けることが推奨されています。クリニックによって、「性交後試験」「PCT」「フーナーテスト」「頸管粘液検査」などと呼びますが、検査内容は同じです。
ヒューナー検査では、排卵日に性交渉を行った後、12時間以内に子宮頸管の粘液を採取し、粘液内に運動性を保った精子がいくつ存在しているかを顕微鏡で観察して調べます。ただし、体調によって結果が変わることもあるため、1回目の検査で「不良」と判断された場合、何度か検査することもあります。
数回検査をした上で、ヒューナー検査の結果が「不良」と確定した場合、抗精子抗体を持っている可能性が高いため、抗精子抗体検査を追加で行い、詳しく調べることになるでしょう。
ヒューナー検査については、こちらのページをご覧ください。
ヒューナー検査とは?検査の目的や方法、判定基準を詳しく解説
ここからは、男女それぞれにおける抗精子抗体ができる理由について解説します。抗精子抗体は、主に女性の頸管粘液、子宮腔、卵管などにできることがありますが、男性にも自己抗体として発生する可能性があることを知っておきましょう。
女性の場合、体内に精子が入ると、元々女性の体に存在しない精子を異物とみなし、免疫細胞が精子に対して抗体を作ってしまうのが主な原因です。腟内に射精された精子は、受精に向けて卵管膨大部を目指して進んでいきますが、一部の精子は卵管から腹腔内に出てしまいます。それらの精子が腹腔内にたくさんいる免疫細胞に捕まると、精子表面にあるタンパク質に対して女性の体が抗体を作ることがあります。
女性に抗精子抗体ができてしまうと、精子が子宮の入り口である子宮頸管よりも奥に進むことが難しくなり、子宮頸管を通過できたとしても、卵子のいる卵管の中へと進む途中で動かなくなってしまい、卵子までたどり着けません。そのため、自然妊娠やタイミング法を実施しても妊娠に至らない場合や、ヒューナー検査の結果が「不良」だった場合などに、抗精子抗体を持っていると疑われます。
男性の場合、精子と血液が混ざると、体内の免疫細胞が精子を異物と認識し、抗体を作ってしまう場合があります。本来、精液と血液は混ざらないようになっていますが、精巣・精巣上体などの炎症や、陰部の外傷、精管の手術などにより、精液と血液が混ざってしまう場合があります。精巣の炎症を起こしたことがある、陰部を打撲したことがあるという方は、精液検査で精子の動きを確認しておきましょう。
精液検査で精子の運動性に一定以上の問題のある方は、抗精子抗体の検査がおすすめです。抗精子抗体があると、精液検査で精子同士が結合してしまう凝集反応が認められ、精子の数が減って運動率も下がる可能性があります。ただし男性の場合、抗精子抗体があるからといって絶対に妊娠に結びつかないわけではありません。精子の凝集反応があっても、元気な精子がたくさんいれば、自然妊娠の可能性もあります。
抗精子抗体検査は、女性から血液を採取し、その血清に精子を加え精子の運動率を調べる「精子不動化試験」で実施するのが一般的です。
精子不動化試験では、時間経過による精子の運動率の変化を測定し、抗体の影響を示すSIV値(血中抗体価)を算出して、抗精子抗体の有無と影響の程度を判定します。なお、これは女性の体内に抗精子抗体があるかどうかを調べる検査です。男性に抗精子抗体があるかは、精液検査と血液検査で調べることができます。
抗精子抗体検査の結果は、SIV値が1であれば陰性、2以上ならば陽性です。女性の場合、SIV値が2以上だと自然妊娠の確率が低くなるため、人工授精以上の治療が推奨されます。男性の場合、SIV値が10未満であれば、人工授精や顕微授精(ICSI/イクシー)が選択肢となりますが、SIV値が10以上になると顕微授精での治療が一般的です。また、男性のSIV値が10以上のご夫婦(カップル)が初めて生殖補助医療(ART)を行う際は、採卵数に応じて体外受精(IVF/ふりかけ法)と顕微授精を組み合わせたスプリットICSIが実施される場合もあります。
にしたんARTクリニックでは、すべての院で抗精子抗体検査を受けることができます。
にしたんARTクリニックの抗精子抗体検査については、こちらのページをご覧ください。
抗精子抗体による不妊症
抗精子抗体検査の結果、ご夫婦(カップル)どちらか、または両方に抗精子抗体が見つかった場合、どのような方法で妊娠を目指していくのが良いのでしょうか。ここからは、女性側に抗精子抗体があった場合、男性側に抗精子抗体があった場合、男女ともに抗精子抗体があった場合の3つのパターンに分けて、具体的な治療方法を解説していきます。
ご夫婦(カップル)どちらかに抗精子抗体が見つかった場合には、早めに不妊治療を開始することが大切です。検査結果をもとに、医師の治療方針に従って不妊治療を進めましょう。
抗精子抗体検査の結果、女性側が陽性だった場合、自然妊娠は難しいため不妊治療を行う必要があります。その際の治療は、人工授精や生殖補助医療が推奨されますが、男性側の抗精子抗体の有無や影響の程度によって治療計画の方針も大きく変わる点に注意が必要です。
女性側に抗精子抗体がなく、男性側のみに抗精子抗体の影響による精子の凝集反応が見られた場合でも、ほかに元気な精子がたくさんいれば、タイミング法や人工授精での妊娠を目指す選択も考えられます。凝集反応が見られ精子の運動率も低い場合は、早期に顕微授精に進んだほうが妊娠への近道になるでしょう。
男女ともに抗精子抗体を持っている場合、基本的には体外受精または顕微授精がすすめられます。体外で卵子と精子を受精させる生殖補助医療であれば、抗精子抗体の影響を受けないため、受精に至る可能性が高まります。
自然妊娠やタイミング法では妊娠に至らず、ヒューナー検査の結果も良くない場合は、ご夫婦(カップル)どちらかが抗精子抗体を持っている可能性があります。特に女性側が抗精子抗体を持っていると、自然妊娠の確率がかなり下がるので、まずは不妊治療専門のクリニックに相談してください。
にしたんARTクリニックでは、すべての院で抗精子抗体検査とヒューナー検査を実施しています。なかなか自然妊娠に至らないとお悩みにご夫婦(カップル)は、まずは無料カウンセリングにご来院ください。カウンセリングの結果、不妊治療が必要と判断された場合は、治療の一環として、各検査を受けてみるのも選択肢のひとつです。
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