AMH値は改善できる?低下する原因や不妊との関係性を解説

AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは、卵巣内にある卵胞から分泌されるホルモンのことです。妊娠を望む女性の中には、妊娠に大きく関わるAMHの数値が気になるという方は少なくありません。また、AMH値が低い場合に、改善できないかと考える方もいるでしょう。

この記事では、AMHと不妊の関係性や、AMH値の数値は改善できるのか、またAMH値が低下する理由について、詳しく解説します。

AMHとは、卵巣機能の状態がわかるホルモンの数値のこと

AMHとは、卵胞が発育する過程で分泌されるホルモンのことです。AMHの数値は、卵巣に残っている卵子の数を評価する指標として用いられます。

卵胞とは、卵子のもととなる細胞を包み込んだ袋のことです。各卵胞に1つの卵子があると考えられており、胎児期に卵巣内で作られた卵胞は、「原始卵胞」という卵子が休眠した状態のまま、卵巣内に多数保存されています。原始卵胞は月経が始まると活発に動き始め、「発育卵胞」「前胞状卵胞」「胞状卵胞」「成熟卵胞」へと発育し、排卵に至る流れです。

卵胞の発育過程

AMHは、こうした卵胞の発育過程のうち、特に発育卵胞から前胞状卵胞の段階で分泌量が増加します。このことから、AMH値が高い場合は発育を始めた卵胞の数が多く、卵巣予備能が良好であるとされ、低い場合は発育過程の卵胞の数が少なく、卵巣予備能が低下しているとされています。

なお、AMH値は、妊活や不妊治療を行う際の指標として用いられるのが一般的です。AMH値は、年齢ごとに平均はあるものの、人それぞれ異なります。そのため、検査を通してご自身のAMH値を知ることが大切です。

発育卵胞数とAMH値の年齢分布

AMH値を調べるAMH検査

AMH値は、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査で調べることができます。AMH検査は、血液中のAMH濃度を調べる血液検査です。
AMHは月経による変動がないため、検査はいつでも行えます。AMH検査は、多くの不妊治療で治療方針を決める際の参考にされており、不妊治療や将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアの一環として検査を受けることが可能です。

AMH検査では、血液中のAMH値を測定することで、排卵の可能性がある残存された卵子の量を推測できます。女性の卵巣内にある原始卵胞は、胎児期に作られ、出生時には200万個ほど存在します。しかし、思春期以降、月経が始まるとともに減少していき、新しく体内で作られることはありません。

AMHは発育過程にある卵胞から分泌され、AMH値は卵胞の数が減少するとともに低下します。このことから、AMH検査では、卵巣内に残る原始卵胞の数を推測できます。
ただし、AMH検査で推定できるのは今ある卵子の量であり、妊娠に大きくかかわる卵子の質については調べることができません。

にしたんARTクリニックでは、ブライダルチェックと不妊治療の一環としてAMH検査を実施しています。

AMH検査については、こちらのページをご覧ください。
AMH検査とは？わかることや費用と検査を受けるメリットを解説

AMH値と不妊との関係

AMH値は、不妊治療の方針を決める際に、参考情報として活用されることが多くあります。AMH検査によって残っている卵子の数が推測できるため、不妊治療でのステップアップの判断材料になります。

ただし、AMH値が低いからといって、妊娠できる可能性が低いとは限りません。AMH値で推測できるのは、あくまで発育過程にある卵胞の数であり、妊娠にとって重要な卵子の質とは無関係です。卵子の質が高ければ、AMH値が低くても自然妊娠に至る可能性はあります。

しかし、AMH値が低いと、残された卵子の量が少ないことを意味し、その分排卵の回数や期限が限られます。限りある卵子を有効活用して妊娠するためには、不妊治療を受けることが近道になるかもしれません。

AMHは年齢とともに低下するものであり、改善は難しい

先述のとおり、卵子のもととなる原始卵胞は、新たに作られることはなく、AMH値は年齢とともに減少し増えません。つまり、AMH値は年齢とともに低下し、改善させることはできません。

下記は、年齢別のAMHの基準値です。AMH値では、年齢ごとの中央値を基準値として、値が高いか低いかを判断します。一般的にAMH値が「2以上6未満」であれば、妊娠に影響が出ない範囲といわれており、数値が低い場合は、早めに不妊治療をスタートしましょう。
なお、AMH値が基準値よりも高かった場合は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)が疑われることがあり、ホルモン検査や超音波検査の結果を見て診断を行います。PCOSは、小さい卵胞がいくつも存在し、卵胞が成熟しづらく排卵に至らない症状です。不妊の原因にもなります。

年齢別AMHの基準値

AMH値が低下する原因

AMH値が低下する原因は、大きく分けて3つあります。最も一般的な原因は加齢によるものですが、生活習慣など機能的なもの、臓器の疾患など器質的なものが原因となることもあるので注意が必要です。

加齢による低下

前述の図からもわかるとおり、体内にある卵胞の数は、年齢とともに減少していきます。なお、AMH値は、25歳頃をピークに徐々に下降していくといわれています。

喫煙による低下

喫煙習慣がある方の場合、AMH値が低くなるリスクが高いと考えられています。禁煙することである程度は維持できる可能性がありますが、本人だけでなくパートナーや周りの方の協力も必要不可欠です。

疾患による低下

卵巣嚢腫や子宮内膜症などの疾患がある場合、年齢を問わずAMH値が低下することがあります。また、一部の自己免疫疾患の方、卵巣の手術や抗がん剤治療、放射線治療をされた方も、卵巣機能の低下からAMH値が低くなる可能性があります。

AHMが低い場合の体への影響

AMH値が低い場合、体にどのような影響があるのでしょうか。AMH値が低いということは、残存している卵胞の数が少なく、卵巣機能が低下していることを表します。卵巣機能が低下すると、下記のような可能性が考えられます。

不妊の可能性がある

前述のとおり、AMH値が低いと不妊につながる可能性があります。AMH値が低いということは、残されている卵子の数が少ないため、排卵できる期間が限られ、不妊治療を開始したとしても採卵できる卵子の数が少なくなるおそれもあるでしょう。
また加齢によるAMH値低下の場合、年齢とともに卵子の質も下がっている可能性が高く、妊娠の成功率は低くなると考えられます。

早期閉経する可能性がある

AMH値の低下は、卵巣機能の衰えを示す重要な指標です。卵巣内の卵胞数が減少すると卵巣機能が低下し、その結果、早期閉経のリスクがあります。40歳未満での閉経を早期閉経といい、通常よりも早い段階で卵巣機能が停止してしまう状態を指します。早期閉経は、妊娠の可能性や健康に影響を及ぼすため、AHM値の低下がわかったら医師に相談することが重要です。

また、AMH値が1.2未満と極端に低い場合、卵巣機能が低下して無月経となる「早期卵巣不全」という疾患の可能性も考えられます。早期卵巣不全の場合、月経が止まるだけでなく、ホルモンバランスの乱れから骨粗しょう症や心血管疾患のリスクが高まる可能性があるため、医療機関への早めの受診が必要です。

AMHが低い場合の対処法

残念ながら、基本的にAMH値を改善したり、増加させたりする方法はありません。検査の結果、AMH値の低かった方が妊娠を目指す場合、下記の方法を試すことをおすすめします。低下してしまったAMH値の改善はできませんが、なるべく卵子の質を落としにくくする方法を普段の生活に取り入れ、妊娠の可能性を高めましょう。

生活習慣を改善する

日頃の生活習慣は、卵子の質を保つために大切な要素です。ストレスの管理や適切な睡眠、適度な運動習慣は、ホルモンバランスを整えて卵巣機能を健康に保つことにつながり、卵子の質を落としにくくします。

バランスの良い食事を意識する

栄養バランスのとれた食事は、卵巣機能を保つために欠かせません。特に、抗酸化作用があるビタミンA・ビタミンC・ビタミンEなどは、卵子の質を下げる原因となる活性酸素の産生や作用を抑えてくれるため、卵子の質を落としにくくする効果が期待できます。

また、糖質のとり過ぎも老化の原因になります。糖分が多く含まれる菓子類やジュースなどを摂取しすぎないようにしましょう。さらに、日常的な飲酒は肝機能が低下して女性ホルモンの分泌を妨げる原因になります。過度な飲酒は避けてください。

卵子の質を保つのにおすすめの食材

禁煙する

喫煙は、体を老化させる活性酸素を大量に発生させ、卵子の老化も早めます。医師が卵子を見れば喫煙者か非喫煙者かがわかるほど、喫煙習慣があるかによって卵子の質は変わるといわれています。卵子の質を落とさないためにも、本人はもちろん、パートナーや周囲の方の禁煙が必要です。
なお、電子タバコも紙巻きタバコと同様に有害物質を含むため、安全ではありません。そのため、本人も周囲の方も含め、紙巻きタバコだけでなく電子タバコも完全にやめましょう。

不妊治療を検討する

不妊治療では、AMH値だけではなく、年齢やほかの女性ホルモン濃度、月経周期などを総合的に不妊の原因を評価しますが、加齢とともにAMH値が下がっていくことは避けられません。少しでも早く不妊治療を始めることは、限りある卵子を有効活用できるので、妊娠の可能性を広げることにつながります。

AMH値は、にしたんARTクリニックで調べられます

AMH値は、残存している卵子の数や、現在の自分の体の状態がわかり、不妊治療の判断材料になります。一方で、AMH値が低いからといって、一概に妊娠の可能性が低いとはいえません。

しかし、AMH検査によって自身の数値を知ることで、早めの妊活や不妊治療が検討できます。AMH検査は、パートナーや結婚の有無に関わらず誰でも受けられる検査なので、気になる方は一度調べてみるのもおすすめです。すぐには妊娠を望んでいない方でも、今後のライフプランに役立ててください。

にしたんARTクリニックでは、全国にあるクリニック全院でブライダルチェックやスクリーニング検査の一環としてAMH検査が受けられます。将来妊娠を望む方やご自身の状態が気になる方は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。