不妊症

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子宮内フローラの改善に効果的な食べ物は?妊娠との関係性を解説

子宮内フローラの改善に効果的な食べ物は?妊娠との関係性を解説

子宮の中には、「子宮内フローラ」と呼ばれる細菌の集まりが存在します。近年の研究により、子宮内フローラは妊娠に深く関わっていることが明らかになってきました。この子宮内フローラのバランスが崩れると、不妊のリスクが高まるといわれています。そのため、子宮内フローラをより良い状態に改善することがおすすめです。

この記事では、子宮内フローラと妊娠との関係について解説し、子宮内フローラを改善するのに有効な食べ物や生活習慣を紹介します。また、検査方法についても併せて解説しますので、不妊かもしれないとお悩みの方は、参考にしてください。

子宮内フローラとは、妊娠に影響を及ぼす子宮内の細菌叢のこと

子宮内フローラとは、子宮内の細菌叢(さいきんそう)のことです。細菌叢とは細菌の集まりを指す言葉で、顕微鏡でのぞくと花畑のように見えることから、花畑を意味する「フローラ」と呼ばれています。
細菌叢は、一般的に腸内に存在することで知られていますが、近年の研究により、無菌と考えられていた子宮内でも細菌叢の存在が明らかになりました。さらに、子宮内フローラは、妊娠にも影響する可能性があることもわかってきています。

子宮内フローラとラクトバチルスの関係

子宮内フローラの大半を占めているのは、ラクトバチルス属乳酸菌(乳酸桿菌)という善玉菌(体によい働きをする腸内細菌)に分類される乳酸菌の一種です。
ラクトバチルスには、腟内や子宮内の環境を整え、免疫力を高める効果があり、細菌性腟感染症や性感染症、尿路感染症などを予防する働きがあります。子宮内のラクトバチルスの割合が減って働きが低下すると、子宮内膜炎や卵管炎、骨盤腹膜炎などを引き起こす可能性があり、着床環境の悪化による不妊症のリスクが高まると考えられています。そのため、ラクトバチルスは、子宮内の炎症を抑え、子宮内フローラを良好に保つといわれています。

子宮内フローラのイメージ

子宮内フローラと妊娠の関係

前述のとおり、ラクトバチルスは子宮内フローラを良好に保つと考えられていますが、2016年の海外の論文では、子宮内にラクトバチルスが多いほど、妊娠率や妊娠継続率が高まるという結果が発表されました。
その中に、ラクトバチルスの割合が90%以上の人は、90%未満の人に比べて妊娠率が高く、流産率が低いというデータが公表されています。

ラクトバチルスと妊娠・流産率の関係

ラクトバチルスの割合が90%以上ラクトバチルスの割合が90%未満
妊娠率70.6%33.3%
流産率16.7%60.0%
※出典:Moreno, I. et al. Evidence that the endometrial microbiota has an effect on implantation success or failure. Am. J. Obstet. Gynecol. 215, 684–703 (2016).

子宮内フローラが乱れる原因

子宮内フローラが乱れる要因として、生活習慣の乱れやストレス、疲労、免疫力の低下、女性ホルモンの分泌量の低下などが関係すると考えられています。これらが重なると、子宮内フローラが乱れ、ラクトバチルスが減少します。

ラクトバチルスが減少すると、子宮内に病原性微生物が侵入しやすい環境になり、子宮内膜に炎症が起こるリスクが高まります。そして、この炎症に対抗しようと免疫細胞が働きますが、過剰に活性化した免疫細胞が、病原性微生物だけでなく、受精卵(胚)までも攻撃してしまうことがあります。これにより、妊娠率や出産率の低下につながるといわれています。

子宮内フローラを改善する食べ物と生活習慣

子宮内フローラを改善するには、腸内環境を整えると良いといわれています。
それは、子宮と腸が近い位置にあり、それぞれの細菌叢が影響を及ぼし合うと考えられるためです。
腸内環境を整えるためには、食べ物と生活習慣を意識することが大切です。適切な食事や生活習慣の改善に取り組むことで、腸内環境が整い、子宮内フローラの改善が期待できます。

子宮内フローラを改善する食べ物

腸内環境には、日々の食生活が大きく関わっています。子宮内フローラ改善のためにも、日頃から腸内環境を整える食事をとるようにしましょう。

下記は、腸内環境を整えるのに欠かせない、主な栄養素と食品です。

腸内環境を整える栄養素と主な食品

栄養素・食品具体的な食材
食物繊維・穀類(ライ麦、大麦、発芽玄米、オートミール)
・根菜類(大根、サツマイモ、ゴボウ)
・豆類(豆腐、大豆、インゲンマメ)
・海藻類(わかめ、昆布、寒天、もずく)
・きのこ類
・その他(プルーン、アボカド、アーモンド)
オリゴ糖・野菜類(タマネギ、キャベツ、アスパラガス、ゴボウ、トウモロコシ)
・果物類(バナナ、ブドウ、リンゴ)
・その他(ハチミツ、きなこ、にんにく)
発酵食品・チーズ
・ヨーグルト
・調味料(味噌、醤油、酢、みりん、酒)
・ぬか漬け
・納豆
・キムチ
・甘酒

食物繊維

食物繊維には、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があり、1:2のバランスでとると良いとされています。水溶性食物繊維には、水分を蓄えて便をやわらかくしたり、腸内細菌のエサとなり腸内環境を整えたりする働きがあり、不溶性食物繊維には、便のかさを増やし、腸の蠕動運動を促して便秘改善を促す働きがあります。

水溶性食物繊維は、熟した果物や芋類、野菜類、海藻類、大豆、大麦、ライ麦などに豊富です。不溶性食物繊維は、小麦ふすま、穀物類、豆類、きのこ類などに豊富に含まれます。

食物繊維を上手にとるには、調理方法を工夫しましょう。野菜などは蒸したり煮たりして、かさを減らすことでたくさん食べやすくなります。水溶性食物繊維は水に溶けるので、野菜スープにすると栄養を無駄なく摂取できます。
また、日々の主食を白米から大麦や玄米入りのごはんに変更したり、小麦のパンを全粒粉やライ麦のパンに変えたりするだけでも、食物繊維の摂取量が向上するので、食材の置き換えを検討してみてください。

オリゴ糖

オリゴ糖も、善玉菌のエサとなり、腸内フローラを整えるのに役立ちます。オリゴ糖は野菜や果物に含まれますが、含有量は少ないため、意識的にとるよいでしょう。甘味料として販売されているものもあるので上手に活用しましょう。
オリゴ糖は、乳酸菌を含むヨーグルトなどの食品や、食物繊維が豊富な食品といっしょにとると、整腸作用がさらに高まります。オリゴ糖シロップをヨーグルトにかけたり、果物や野菜のスムージーに甘味料として入れたりするのもおすすめです。

発酵食品

発酵食品には、乳酸菌や酢酸菌などの善玉菌が多く含まれており、食べることで腸内フローラを善玉菌優位に整える作用があります。発酵食品に含まれる微生物は、加熱すると大半が死滅するため、できるだけ生で食べるのがおすすめです。
善玉菌のエサになる食物繊維といっしょに食べたり、複数の発酵食品を組み合わせて食べたりすると、より効果的です。摂取した菌が腸内で活動できるのは3~4日程度なので、できるだけ毎日食べると良いでしょう。ただし、塩分やカロリーが高いものも少なくないので、食べすぎには注意してください。

子宮内フローラを改善する生活習慣

子宮内フローラを乱す原因として、生活習慣の乱れ、ストレス、疲労などが挙げられます。ストレスや疲労は免疫力の低下につながり、子宮内フローラの乱れにつながるため、日頃からストレスや疲れを溜めないことが大切です。

また、生活習慣の乱れやストレスは、腸内環境にも悪影響をもたらします。質の良い睡眠を十分にとり、ストレスとうまく付き合うことで、腸内環境を整える作用に期待できます。

さらに、近年の研究では、定期的に適度な運動を続けることで、腸内フローラの構成が変化することが明らかになりました。運動と腸内フローラの関係についての研究では、運動をしている人のほうが、運動していない人よりも腸内細菌の種類が多いということがわかっています。また、週に3回、30~60分間の運動を続けることで、腸内環境が改善するという報告もあります。

腸内フローラの改善は、子宮内フローラの改善にも密接に関わるため、規則正しい生活や良質な睡眠、適度な運動を意識して生活しましょう。

子宮内フローラを調べる方法

妊娠にも影響を与えると考えれている子宮内フローラは、子宮内フローラ検査で調べることができます。
子宮内フローラ検査とは、子宮内に存在するラクトバチルスの割合を調べる検査です。「子宮内細菌叢検査2」とも呼ばれ、慢性子宮内膜炎の原因菌を特定することで、適切な治療法を検討できます。

子宮内フローラ検査は、妊娠を希望するすべての女性を対象とした検査です。特に、不妊治療を受けても妊娠に至らない方や、流産・死産経験を繰り返す方に向いています。子宮内フローラ検査の主な対象者は下記のとおりです。なお、検査時に不正出血がある場合や子宮内感染症の疑いがある場合などは、検査を受けられないこともあるため、不安な点がある方は事前に医師に相談しましょう。

子宮内フローラ検査の対象者

子宮内フローラ検査については、こちらのページをご覧ください。
子宮内フローラ検査とは?妊娠につながる菌環境の検査や改善法を解説

子宮内フローラ検査の流れ

子宮内フローラ検査では、子宮内膜の細胞をキュレットと呼ばれる器具で採取し、その細胞を培養・分析することで、ラクトバチルスの割合を調べます。細胞採取の際に軽い痛みや出血を伴う場合もありますが、検査自体は5分程度で終了するほど簡単です。副作用もほとんどありませんが、不安な場合は医師に相談してください。

なお、子宮内フローラ検査は、排卵後から月経が開始するまでの黄体期に受けることが推奨されます。また、検査を受けた周期は性交渉を控え、必要に応じて避妊しましょう。検査後、2週間程を目途に結果が出るため、クリニックに来院し、医師から説明を受けてください。

子宮内膜の細胞を採取するイメージ

子宮内フローラ検査の費用

子宮内フローラ検査は、先進医療Aとして認められているため、保険診療の治療と併用可能です。ただし、治療は保険適用されますが、子宮内フローラ検査の費用は自己負担となります。
なお、先進医療は、厚生労働省に認定された施設でしか受けることができません。子宮内フローラ検査を希望する場合は、先進医療の認定施設かどうかを確認してください。

にしたんARTクリニックでは子宮内フローラ検査を44,000円で実施しています。

※出典 厚生労働省「先進医療を実施している医療機関の一覧

子宮内フローラを改善したい方は、まずは腸内環境を整えましょう

子宮内フローラは、子宮内を良好な状態に保つのに影響を与える可能性がある要素のひとつです。子宮内フローラは腸内環境に影響を受けるため、腸内環境が整うような食生活や生活習慣を意識することで、子宮内フローラの改善が期待できます。なお、子宮内フローラは、妊娠にも関わってくるといわれているので、妊娠を目指す方は意識して子宮内フローラを整えることをおすすめします。

にしたんARTクリニックでは、不妊治療のオプションとして子宮内フローラ検査を実施しています。ご自身の子宮内フローラについて気になる方は、お近くのにしたんARTクリニックにご相談ください。カウンセラーによる無料カウンセリングにて詳細をご説明いたします。

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