各種検査
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健康な男女が避妊をせずに性交を行っていれば、1年間で約9割が妊娠に至るといわれています。もし、1年を経過しても妊娠が成立しない場合は、妊娠を妨げる何らかの要因があるかもしれません。
といっても、不妊は女性、男性のどちらにも要因がある上、複数の要因が複雑に絡み合っていたり、検査をしなければわからない内部的な要因だったりすることも多く、自己判断は危険です。不妊の原因によっては、医療介入が早期であるほど妊娠できる可能性が上がる場合もあります。「不妊かも?」と思ったら、すぐに相談することが大切です。
本記事では、卵管の基本的な機能と役割をはじめ、卵管が妊娠を阻んでいると考えられる場合に行われる「子宮卵管造影検査」や子宮卵管造影検査を実施できない人について解説します。
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不妊の要因で最も多い卵管因子子宮卵管造影検査でわかること子宮卵管造影検査を実施できない人子宮卵管造影検査の流れ子宮卵管造影検査の痛みについて卵管に問題があった場合の治療法妊活をしても授からない期間が長引いたら、卵管造影検査を受けよう女性の不妊原因には、「排卵因子」「卵管因子」「子宮因子」「頸管因子」などがあります。
特に、女性の排卵因子と卵管因子は、不妊の原因の中でも多くを占めるといわれています。とりわけ、卵管に何らかのトラブルがあるケースは多く、注意が必要です。
卵管は子宮の左右両側にあり、子宮と卵巣をつなぐ管のことを指します。
子宮に近いほうから「卵管口」「間質部」「峡部」「膨大部」「卵管采」に分けられ、子宮と卵管のつなぎ目である間質部は約1mmと非常に狭いのですが、子宮から離れるにつれて太くなり、膨大部では約1cmになっているのが特徴です。卵管采は手を広げたような形をしていて、排卵が近づくと卵巣に近づいていって、卵子を吸い込みます。
卵管には、主に6つの役割があります。
これらのことからわかるとおり、卵管は精子と卵子が出合う唯一の場所であり、受精卵にとって重要な通り道であるため、自然妊娠をする上では欠かせない器官です。卵管が狭窄していたり、閉塞していたりすると、妊娠できる可能性が極めて低くなります。
卵管の狭窄や閉塞は、不妊の大きな要因になります。人によっては腹痛や不正出血を起こすことがありますが、一般的には狭窄や閉塞が痛みや不快感といった直接的な自覚症状を引き起こすことが少なく、女性自身がトラブルの存在に気づくのは難しいといえます。
卵管の狭窄や閉塞の原因となるのは、主に性感染症や過去の手術、炎症などです。
クラミジア感染症は性行為などで感染する、クラミジア・トラコマチスという病原体による性感染症で、卵管の狭窄や閉塞の原因として最も多いものです。子宮頸管炎、子宮内膜炎といった炎症によって卵管の狭窄や閉塞、卵管周囲の癒着を引き起こします。
初期は自覚症状が少ないものの、慢性化すると排尿痛、性器のかゆみ、おりものの増加、性交痛などが見られます。
子宮内膜は子宮の内側を覆う組織ですが、何らかの原因で子宮の内側以外の場所に子宮内膜が発生する病気を子宮内膜症といいます。
通常、月経が起きると子宮内膜ははがれ落ちて体外へ排出されますが、卵巣や卵管、腸などに子宮内膜に類似した組織ができると、排出されずに血液が臓器に溜まってしまいます。これが毎月繰り返されることで、炎症によるさまざまな症状が引き起こされます。卵管に子宮内膜症ができた場合、癒着を引き起こして不妊の原因となります。
虫垂炎など、過去に受けた骨盤内の手術によって卵管周囲が癒着することもあります。
不妊の疑いがある場合、正しい要因を見極めて適切な治療を行うために、さまざまな検査を行います。一般的には、経腟超音波検査、血液検査、卵巣に残っている卵子の数を予測するAMH検査などと並んで、子宮卵管造影検査も行われることが多いでしょう。
子宮卵管造影検査は、子宮と卵管の状態を可視化し、妊娠できる状態かどうかを検査するものです。具体的には、子宮腔の形状、卵管の大きさや太さ、途中に詰まりはないかの通過性、出口周辺に癒着がないかといったことを調べます。
なお、卵管の通りを評価する同様の検査に、子宮腔に入れたカテーテルから炭酸ガスや生理食塩水を注入し、その入り具合や注入時の腹圧で卵管通過障害の有無を診る「卵管通水検査」がありますが、子宮卵管造影検査のように子宮や卵管の形状、閉塞が起きている部分まではわかりません。子宮卵管造影検査を行うことによって、下記のようなことがわかります。
卵管造影検査では、卵管の詰まりの有無がわかります。また、卵管の詰まりには、子宮側に近い「近位部閉塞」と、卵巣寄りの「遠位部閉塞」があり、それぞれ治療法が異なるため、検査によってその場所も判別します。
卵管水腫とは、卵管の一部が炎症で閉塞することによって、卵管液が卵管の中に溜まって腫れる病気です。排卵された卵子を得にくくなったり、溜まった水分が子宮内に流れ込むことによって、着床しにくくなったりします。
卵管采に癒着があると、卵巣から排卵された卵子を得て取り込むことができません。子宮卵管造影検査は、卵管采周辺の癒着の有無も判別します。
受精卵が着床する子宮は、妊娠を成立させる上で大切な役割を果たしている臓器です。先天的な子宮の形状の異常などが受精卵の着床や発育を妨げている場合、ホルモン治療や子宮形成術などを行う必要があるため、子宮卵管造影検査で詳しく調べます。
子宮卵管造影検査は、一般的な不妊治療の検査です。ただし、下記に該当する場合は検査を実施できないことがあります。こうした場合、「子宮卵管造影検査でわかること」の項目でふれた卵管通水検査を代わりに行うことがあります。
造影検査ではヨード造影剤が使われています。過去、造影剤を使った検査でアレルギー検査が出たことがある人は、この検査を行うことができません。
造影剤に含まれるヨードは、甲状腺ホルモンの主原料でもあるため、検査をすることによって過剰摂取となり、甲状腺ホルモンの分泌が抑制されてしまうことがあります。ですから、甲状腺疾患のある人は、内科主治医から許可されている場合を除いて、検査は行えません。
妊娠している可能性がある人や、月経が終了していない人も検査の対象外です。
クラミジアに感染している状態で子宮卵管造影検査を行うと、骨盤内に感染が広がる可能性があります。そのため、1年以内にクラミジア抗原検査を受けていることが検査を行うための条件になります。
子宮卵管造影検査で卵管の通りと子宮の状態を確認できないと、子宮や卵管に原因がある場合の不妊を解消できず、タイミング療法や人工授精に進んでも妊娠しにくいままになってしまいます。
そのため、子宮卵管造影検査は必要な検査ではあるものの、「検査ってどうやるの?」「どのくらいかかるの?」など、検査内容に漠然とした不安を抱く方が多いのではないでしょうか。ここでは、気になる子宮卵管造影検査の流れについて解説します。
子宮卵管造影検査を実施するのは、生理終わり頃から排卵前までの期間です。排卵直前でないことを超音波検査で確認した後、腟内を洗浄します。
膣からチューブを入れて膨らませ、子宮内に固定します。チューブから造影剤を注入します。
X線をあて、子宮や卵管、腹腔へと造影剤が広がっていく様子を観察し、撮影します。
造影剤が卵管内に滞留して貯まっていないことを確認します。
子宮卵管造影検査の痛みは、感じる人もいれば感じない人もいます。痛みを感じる可能性があるのは、検査の流れの中で、下記の2つの工程が該当します。
痛みは月経痛程度のことが多いのですが、個人差があり一概にはいえません。痛みを抑えるには、刺激の少ないやわらかなチューブを使うことや、丁寧にゆっくりと造影剤を流すことがポイントです。
にしたんARTクリニックでは、熟練した医師が充実した機器で検査を行い、痛みを軽減しています。
子宮卵管造影検査によって問題が見つかったら、不妊の根本的な原因解決のために、下記のような治療を行います。
卵管の近位部閉塞が見られた場合は、体の負担が少ない子宮鏡や卵管鏡を使って卵管を押し広げるFT(卵管鏡下卵管形成術)が行われます。特殊な風船を内蔵したカテーテルを用い、卵管内に風船を押し進めることで、狭窄部分を広げていきます。
卵管から遠位部で閉塞があった場合は、腹腔鏡手術が適応となります。ただし、子宮卵管造影検査の際に高度の狭窄所見がある場合、開腹で対応します。
卵管采周囲で癒着があった場合は、腹腔鏡手術が適応となります。ただし、子宮卵管造影検査の際に高度の狭窄所見がある場合、開腹で対応します。
卵管水腫がある場合、卵管の機能がダメージを受けており、改善しないまま不妊治療を進めても、胚移植をしても妊娠率は上がりません。そのため、妊娠率が上がらない場合は、切除のための手術を行うことがあります。
卵管造影検査をすると、妊娠の成立に欠かせない子宮と卵管の状態を把握でき、問題があれば適切な治療をして不妊の原因を解消することができます。 卵管にトラブルがあると、自然妊娠やタイミング法、体外受精でもなかなか妊娠に至らない可能性が高いため、なるべく早く検査を受けるようにしましょう。
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