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卵管通水検査とは?実施するメリット・デメリットについて解説

卵管通水検査とは?実施するメリット・デメリットについて解説

不妊治療を始める前には、さまざまな検査を行います。不妊の原因は多岐にわたるため、適切な検査で個別の原因を見極めることが重要だからです。
女性の場合、特に卵管に原因があることが多く、「卵管に狭窄や閉塞がないか」を調べることで不妊治療の道が開ける可能性が高いでしょう。
ここでは、卵管の通りや状態を調べる「卵管通水検査」の目的や検査の流れ、メリット・デメリットについて詳しく解説します。

卵管因子による不妊は多い

最短で妊娠に近づくためには、妊娠を妨げている理由を見つけて改善し、適切な治療法を選択することが重要です。しかし、不妊の原因となる因子はひとつではなく、女性にも男性にも存在します。妊娠を希望しているのになかなか成立しない場合、双方に何らかの原因が考えられるため、詳しい検査をして原因を特定する必要があります。

女性の不妊原因には、「排卵因子」「卵管因子」「子宮因子」「頸管因子」などがあるものの、特に多いのが卵管因子です。

卵管因子が生じる要因

卵管因子を生じさせる最も代表的な要因は、性感染症のクラミジア感染症です。クラミジア感染症の病原体であるクラミジア・トラコマチスが子宮頸管や子宮内膜に炎症を招き、卵管の狭窄や閉塞、卵管周りの癒着を引き起こすのです。 このほか、子宮内膜症や過去の手術なども卵管因子の不妊要因になることがあります。

卵管の働き

卵管は子宮の左右両側で子宮と卵巣をつないでおり、「卵管口」「間質部」「峡部」「膨大部」「卵管采」から成り立っています。

トラブルを抱えていない卵管の場合、排卵で排出された卵子を卵管采で得て取り込み、「子宮膨大部」へ運びます。また、腟内から子宮頸管を経て子宮内に上がってきた精子が子宮膨大部へ達するのを助けます。子宮膨大部で卵子と精子が受精すれば、受精卵を子宮へ運ぶのも卵管の役割です。

このように、卵管の働きは、妊娠を成立させる上で欠かすことができません。卵管に問題があると、精子と卵子が出合うことができませんから、自然妊娠はもちろん、タイミング法、人工授精(AIH)などを行っても妊娠の確率は極めて低いことになります。

卵管通水検査の目的

卵管通水検査は、卵管の詰まりの有無を調べる検査です。腟から子宮腔にカテーテルを通し、生理食塩水を注入し、左右の卵管、さらには腹腔へと流れ出ていくかどうかを調べます。卵管通水検査を行うことによって卵管の通過性が良くなり、妊娠の確率が上がることがあります。

そのため、検査としてはもちろん、卵管の通過性を改善する治療のひとつとして行われることもあります。卵管通水検査によってわかることは下記のとおりです。

卵管の通水性の確認

妊娠するには、卵子と精子がしっかり卵管を通って子宮膨大部で出合い、受精する必要があります。卵管因子が考えられる場合は、卵管通水検査で卵子と精子の通り道である卵管の通水性を確認しておきます。

卵管の状態を把握

卵管通水検査での卵管の通過性をチェックすることで、卵管の中の状態を把握することが可能です。
卵管内にできたポリープや腫瘍をすみやかに発見するのにも適しています。腫瘍やポリープができている場所によっては、卵子や精子の移動を妨げる原因になるため、早期に見つけて適切に対処することが大切です。

子宮形状の評価

卵管通水検査では、子宮の中を液体が通過する様子から卵管の通水状態を確認します。このとき、超音波検査を併用して子宮の形状を確認することで、先天性の形態異常などを発見することも可能でしょう。場合によっては、子宮内膜の異常を確認できることもあります。

卵管通水検査のメリット

卵管通水検査は、子宮卵管造影検査と同様、妊娠成立のカギを握る卵管の状態を評価する検査です。
子宮卵管造影検査ほど原因を明確に可視化することはできませんが、下記に挙げるようなメリットがあります。

体への負担が少ない

造影剤とX線を用いて卵管の状態をチェックする子宮卵管造影検査に比べて、卵管通水検査は低侵襲医療です。卵管通水検査で使用するのは、まれに副作用や甲状腺への影響が懸念される造影剤ではなく、生理食塩水を使用するため、体への負担を抑えることができます。
また、X線の未使用により、放射線の曝露を気にする必要もありません。

子宮卵管造影検査より短時間で済む

子宮卵管造影検査を行う場合、検査そのものは5~10分程度で終了しますが、事前の超音波検査や腟内洗浄、造影剤の注入、撮影などに時間がかかります。
卵管通水検査のほうが短時間で済むため、必要な情報をすみやかに取得したい場合に有効です。

保険が適用される

2022年4月から、人工授精(AIH)などの「一般不妊治療」、および体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)などの「生殖補助医療(ART)」が保険適用されるようになりました。従来は不妊の原因を明確にするための検査や治療のみが保険適用の対象だったため、治療のハードルがかなり下がったといえるでしょう。
卵管通水検査は不妊原因のスクリーニングに不可欠な検査のため、基本的に保険適用の対象です。

痛みが少ない

卵管の状態にもよりますが、卵管通水検査は注入するのが造影剤ではなく生理食塩水なので、痛みも少ないことが多い傾向があります。
ただし、子宮や卵管に圧力がかかるため、人によっては軽度の月経痛に近い痛みを感じることがあるでしょう。

卵管の通りが良くなる

卵管通水検査をすることによって卵管のつまりが改善され、妊娠しやすくなることがあります。場合によっては、検査としてだけでなく、治療の一環としても用いられることがあります。

卵管通水検査のデメリット

卵管通水検査は、子宮卵管造影検査より簡便かつ、有用な情報を得られる検査です。ただ、デメリットがないわけではありません。いずれもそれほど大きなものではありませんが、医師の説明を受けるタイミングでリスクやデメリットについて詳しく聞き、対処法やアフターケアの仕方を理解しておくと安心です。
ここでは、知っておきたい卵管通水検査のデメリットをご紹介します。

状態によって痛みを強く感じることもある

液体を子宮内に注入したとき、子宮や卵管に圧力がかかります。これにより、軽い生理痛程度の痛みを感じることがあるでしょう。また、卵管の詰まりや狭窄があると、痛みを強く感じる可能性もあります。

出血する可能性がある

卵管通水検査を行うため、腟からカテーテルを挿入して子宮に固定したときや、生理食塩水などを注入したタイミングで、腟や子宮から出血する可能性があります。
通常は大量に出血することはなく、出血しても短時間で止まることがほとんどですが、気になる場合は医師に相談してください。

閉塞の場所までは特定できない

卵管通水検査によって、卵管の閉塞の有無はわかります。しかし、卵管閉塞がどこで起こっているかまでは把握することができません。閉塞の場所を特定したいときは、子宮卵管造影検査を行う必要があります。

卵管通水検査の対象となる人

卵管の詰まりを確かめる検査としては、子宮卵管造影検査が一般的です。子宮卵管造影検査は、子宮と卵管が妊娠できる状態かどうかを確認する検査です。基本的なやり方は後述する卵管通水検査と同じですが、造影剤を使うため子宮腔の形状、卵管の大きさや太さ、通り具合、狭窄・閉塞・癒着の有無まで判断することができます。
子宮卵管造影検査について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
子宮卵管造影検査は痛い?検査の流れと治療について解説

子宮や卵管の状態を可視化する検査として、子宮卵管造影検査は重要です。しかし、造影剤に使われているヨードにアレルギーがある人は行うことができません。そうした場合に、卵管通水検査を行うことがあります。
また、下記のようなケースも卵管通水検査の対象となります。

卵管通水検査の対象例
  • 不妊歴が長い
  • 子宮外妊娠をしたことがある
  • 以前、卵管感染症を経験したことがある
  • 卵管結紮手術(卵管を切断したり縛ったりする避妊手術)の経験がある

卵管通水検査の流れ

卵管通水検査は、月経終了の2~3日後に行うのが一般的です。検査は下記のような流れで行われます。

1. 事前にクラミジアの検査を行っておく

クラミジアにかかった状態で卵管通水検査をすると、検査によって菌を広げてしまうリスクがあります。必ず事前に検査を行い、陰性であることを確認します。

2. 腟から子宮へカテーテルを通す

腟から子宮口までカテーテルと呼ばれる細い管を通します。子宮口へ届いたら、バルーンでカテーテルを子宮内に固定します。

3. 生理食塩水を流す

生理食塩水を流し、卵管へ流れ出ていく様子を観察します。超音波検査を同時に行い、卵管の通水具合や子宮の形状を評価することもあります。検査自体は5分弱で完了するものです。

卵管通水検査を行うタイミング

卵管通水検査を受けるタイミングは、月経周期を見て判断します。推奨されるタイミングは大きく2つあります。
ひとつは、妊娠している可能性がない月経終了から排卵前までの期間です。もうひとつは、月経開始から2~10日目までの期間です。この期間は、卵巣や子宮が活発な状態にあるため、より正確に子宮と卵管の状態を見極められる可能性があります。
適切なタイミングには個人差もあるため、主治医とよく相談して決定しましょう。

卵管通水検査は、不妊症の原因解明の手段のひとつ

卵管通水検査は、不妊症の原因を解明し、正しい治療を行うための検査です。体への負担が少なく、比較的受けやすい検査でありながら、不妊の原因の多くを占める卵管の情報を多く知ることができます。
子宮卵管造影検査ができない人にも有効であるため、上手に活用して不妊症の治療に役立てましょう。

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