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不妊治療は何歳まで行える?年齢による影響を解説

不妊治療は何歳まで行える?年齢による影響を解説

近年、高齢の著名人や、個人の不妊治療体験がメディアで取り上げられることが増えました。こうした情報にふれ、「年齢が高くても不妊治療をすれば産める」と希望を持つ人は多いことでしょう。
しかし、女性の年齢と妊娠する力には密接な関係があり、自然妊娠が難しい場合に選択される不妊治療も加齢とともに成功率が低下することは意外と知られていません。妊娠を希望する人が不妊治療を行う場合、何歳までに治療を開始すると良いのでしょうか。
本記事では、不妊治療と年齢との関係、および年齢が妊娠に与える影響について詳しく解説します。

不妊治療が結果につながりやすい年齢の目安

昨今のライフスタイルの変化や結婚年齢の上昇により、初めての妊娠・出産を希望する平均年齢は年々上がっています。また、それに伴い、不妊治療を希望する人の平均年齢も高くなりました。
厚生労働省の発表によると、今や全出生児の13.9人に1人 が生殖補助医療(ART)で生まれており、この事実からは不妊治療の技術の進歩もうかがえます。

しかし、高齢の妊娠・出産、および不妊治療の成功例はクローズアップされるものの、「不妊治療であっても、年齢とともに妊娠する能力が低下する」ことの正しい周知はなかなか進んでいません。「40代で産んでいる人も多いし、まだ時間はある」と考えていた人が自然妊娠に至らず、いよいよ不妊治療を始めようと訪れたクリニックで「不妊治療の成果にも加齢が大きく影響する」という事実を知って驚くケースは、今なお少なくないのです。

厚生労働省によれば、40代以降の妊娠率は10%、40代後半には数%まで低下しており、年齢とともに自然な妊娠・妊娠の難度が上がることは明らかです。また、一般社団法人日本生殖医学会 のデータでは、39歳で治療開始した場合の出産率は11.5%、40歳で9.3%、44歳で1.8%でした。40歳を過ぎると、生殖補助医療での出産も難度が上がることがわかります。
こうしたデータを踏まえると、不妊治療は可能な限り早く始めることが望ましいといえるでしょう。

「妊娠・出産を希望していて、避妊をせずに性交渉をしても一定期間妊娠に至らない」場合の「一定期間」の目安を公益社団法人日本産科婦人科学会は1年としていますが、年齢的に不妊の可能性が高い場合は期間に縛られることなく、早期の受診をおすすめします。
なお、にしたんARTクリニックでは、妊娠を希望するすべての方に最善の治療を行うことをモットーとしています。不妊治療を検討される方は、年齢を気にせず、まずはご相談ください。

不妊治療の助成金は何歳まで出る?

2022年4月から、人工授精(AIH)などの「一般不妊治療」、体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)などの「生殖補助医療(ART)」に保険が適用されることが決まりました。これは、不妊治療の普及を阻む社会的要因(仕事との両立など)と経済的要因のうち、後者の負担を軽減する目的で決定したものです。

生殖補助医療(ART)については、採卵から胚移植までの基本的な診療はすべて保険適用となり、先進医療を追加する場合は保険診療との併用が可能です。

ただし、保険適用を受けるには、治療開始時の女性の年齢が43歳未満であることが前提です。また、治療開始時の女性の年齢によって、回数の上限が設定されています。

■年齢別・保険診療の回数制限
生殖補助医療を開始する時点での年齢回数の上限
40歳未満通算6回
40歳以上43歳未満通算3回

保険適用になると、窓口での負担額が治療費の3割となります。そのため、年齢制限のラインも不妊治療を開始する目安のひとつとして検討の条件にすると良いでしょう。

加齢によって妊娠確率が下がる4つの理由

ここまで、個人差はあるものの、女性の妊娠率は40代に入ると年々低下することを紹介しました。ここからは、なぜ加齢によって妊娠確率が低下するのか、その理由について解説します。
加齢によって妊娠率が低下する理由は、大きく4つあります。

女性ホルモンの減少

卵巣で作られる女性ホルモンの「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」は、女性としての成熟や成長を助けるほか、健康にもさまざまな影響を与えています。妊娠・出産においては、エストロゲンが子宮内膜を厚くする妊娠しやすい体の準備、プロゲステロンが厚くなった子宮内膜の維持、妊娠の維持を担います。

しかし、2つの女性ホルモンは年齢による分泌量の変化が大きく、常に一定の分泌量を維持しているわけではありません。20~30代前半に分泌量のピークを迎えた後は徐々に減少し、卵巣機能が低下する40代半ばくらいからは減少に転じます。すると、妊娠・出産の準備がうまく行われなくなり、受精卵が着床しにくくなってしまうのです。

卵巣予備能の低下

卵子のもとになる「卵母細胞」の数は胎児の時点で決まっており、成長とともに数が減少し、37歳を境に急減します。卵巣予備能は、「卵巣に残っている卵子の数」のことで、血液に含まれるAMH(抗ミュラー管ホルモン)の数を調べることで推定できます。

AMHは、今後の妊娠・出産のチャンスがどのくらい残されているかを見極め、妊活の始めどきや不妊治療へのステップアップのタイミングを図るのに使われます。

卵子の質の低下

卵子の質は加齢とともに低下し、卵子の老化とも呼ばれます。日本生殖医学会の調査では、患者自身の卵子で不妊治療を行った場合は加齢とともに生産率が低下しましたが、年齢が若い女性から卵子の提供を受けて不妊治療を行った場合は、年齢が上がっても生産率への影響はありませんでした。

このことから、加齢による卵子の質の低下が不妊の原因になることがわかります。

また、卵子の老化は染色体異常のリスクも高めます。染色体異常は出生後の発達に影響するだけでなく、胚の発育に影響を与えて流産率を上げる原因にもなることがわかっています。

母体の既往症リスク

男女問わず、年齢とともにリスクが上がる疾患に糖尿病、肥満、高血圧といった生活習慣病があります。男性側、女性側を問わず、こうした要因は不妊の原因のひとつになります。

また、女性には、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮がん、乳がんといった特有の疾患があり、加齢によって罹患するリスクが高まります。子宮筋腫や子宮内膜症が必ずしも不妊に直結するわけではありませんが、できた場所や大きさなどによっては卵管の閉塞や着床不全を引き起こすため、不妊につながることがあるのです。

加齢に負けず、妊娠率を上げるためのポイント

妊活において、年齢は重要なファクターです。とはいえ、社会において重要な役割も担う女性にとって、妊娠・出産を後回しにせざるをえない事情があるのも確かです。

特に、ライフスタイルが変わってもキャリアをあきらめたくないと考えている女性にとって、妊娠・出産のタイミングの見極めは難しいものです。妊娠・出産のためだけなら「妊娠適齢期」と呼ばれる時期を逃さず妊活をすることが大切ですが、キャリアと育児との両立を模索した結果、30代後半や40代で妊娠を希望する人が多いのはやむをえないことでしょう。 では、加齢という大きなハードルがあっても妊娠を望む場合、どんなことに注意すると良いのでしょうか。「子供が欲しい」と思い立ったタイミングが妊娠適齢期を過ぎていた場合に実践したい、3つのポイントをご紹介します。

健康的な生活を送る

妊娠をするためには、土台となる体が健康で、妊娠・出産に耐えうる力を蓄えている必要があります。妊活の基本は、生活習慣を見直し、健康的でバランスのとれた生活を送ること。妊娠を考えたら、まずはこれまでの生活を見直しましょう。実践したい具体的な活動は、下記のようなものがあります。

栄養バランスのとれた食生活を送る

食べた物で体は作られるといいます。忙しさを理由に、食生活をおろそかにしていませんか?1日3食、できるだけバランス良く栄養がとれる食事を心掛けてください。さまざまな 栄養素の中でも、妊娠を考えている女性が積極的にとりたいのが「葉酸」「鉄」「亜鉛」です。
葉酸は、妊娠初期に起こる胎児の先天性異常のひとつである神経管閉鎖障害の予防に欠かせない栄養素とされているため、1日あたり0.4mgを目安にとることをおすすめします。鉄は、 酸素を運ぶ赤血球を作ります。妊娠したときに鉄分が不足していると、赤ちゃんに酸素が行き届かず、低出生体重児になる危険性があります。不妊治療の血液検査で貧血の検査を重視するのはそのためです。亜鉛は卵子にとって重要な栄養素で、不足すると女性ホルモンの減少を招き、妊娠しにくくなります。体内では作られないため、牡蠣やレバー、牛肉、豆類といった食べ物からしっかり摂取してください。

適度な運動をする

食事と並行して、運動も非常に大切です。適度に体を動かすことで、呼吸をする、心臓を動かすといった生命維持に最低限必要なエネルギーである「基礎代謝」を高め、健康的な状態を維持することができます。
また、不妊治療中は何かとストレスが溜まりやすいものです。ストレスは精子や卵子の質の低下につながるため、体を動かしてストレスを解消することが大切になります。気分の落ち込みを改善する効果も期待できるため、前向きに不妊治療に取り組むためにも積極的に運動をしてください。

しっかり眠る

睡眠と妊娠の関係は、さまざまな因子が絡むことから、一概に関連があると判断することができません。しかし、睡眠を促すホルモンとして知られるメラトニンには、 酸化ストレスを抑制する抗酸化作用があり、卵子の質の低下を防ぐといわれています。
生活リズムをできるだけ維持し、熟睡できる睡眠環境を整えましょう。

治療は早めにステップアップする

不妊治療には、一般不妊治療に含まれる「タイミング法」「人工授精(AIH)」のほか、生殖補助医療に該当する「体外受精(IVF)」「顕微授精(ICSI)」があります。

何からスタートするかは個別の状態によって異なりますが、一般的にはタイミング法から始めて人工授精へ、人工授精で結果が得られない場合には生殖補助医療(ART)に進みます

不妊治療の種類

【タイミング法】医師が排卵日を予測し、最も妊娠しやすい日時にタイミングを合わせて性交渉を行う方法です
【人工授精】排卵の時期に合わせて、精子を子宮内に注入することで受精を促します
【体外受精】卵子と精子を外で受精させ、培養してから子宮に移植します
【顕微授精】細い針の先端に精子を入れ、顕微鏡で確認しながら卵子に直接注入します

治療をステップアップする判断は、女性の年齢や不妊要因、医師の判断などによって異なります。基本的には、同じ治療を漫然と続けるのではなく、1つのステップに半年程で区切りをつけてステップアップしていくことが多いでしょう。
特に、タイムリミットがある下記のような場合は、選ぶ治療によって妊娠率が変わることもあります。主治医と相談の上、早めのステップアップをおすすめします。

不妊治療のタイムリミットの例

  • 不妊に悩んでいる期間が長い
  • 治療を始めた年齢が高い
  • 子宮内膜症などの既往歴がある
  • 男性の精子の数や運動率に問題がある

卵子凍結も視野に入れる

卵子凍結は、卵巣から取り出した卵子を-196℃の液体窒素で凍結させ、保存しておく方法です。
卵子も精子も、加齢とともに質と量が低下します。「今すぐの妊娠は望んでいないが、将来的な不妊が心配」という場合は、卵子凍結も検討しましょう。
若いうちに質の良い卵子を採取して保存しておくことで、キャリアにひと段落がついたり、生活が落ち着いたりして本格的に不妊治療に取り組む際、妊娠の可能性を高めることができます。

にしたんARTクリニック品川院は、東京都福祉局が実施の「卵子凍結に係る費用の助成」の登録医療機関です。条件に合致する場合、助成金が支払われます。

ライフスタイルやパートナー、医師と相談して後悔のない選択を

不妊治療を始める年齢は、若ければ若いほど妊娠の可能性が高まります。「不妊かもしれない」と感じたら、できるだけ早く治療を始めましょう。

ただし、年齢を重ねたからといって治療をあきらめる必要はありません。治療技術は進歩しており、一定の年齢以上であっても妊娠できる可能性があります。 にしたんARTクリニックでは、年齢にかかわらず「妊娠したい」という希望をできる限りサポートする治療をしていますので、お気軽にご相談ください。

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