不妊治療

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不妊治療で使う薬の種類や目的と飲み忘れの対処などを解説

不妊治療で使う薬の種類や目的と飲み忘れの対処などを解説

不妊治療では、妊娠しやすい体づくりや、排卵を促すことを目的として、さまざまな薬が処方されます。それぞれの患者さまの状態にあった薬が処方されるため、医師の指示どおりに服用することが大切です。

この記事では、不妊治療で使用する薬について、種類や目的、飲み忘れてしまった場合の対処法などについて詳しく解説します。

不妊治療で薬を使用する目的は、すべて妊娠率を高めるため

不妊治療で使用する薬は多岐にわたりますが、いずれも最終的な目的は、妊娠率を高めることです。医師の指示どおりに服用することによって効果が得られるため、自己判断での服用中止は避けなければいけません。

患者さまそれぞれで異なる不妊の原因や治療の経過、既往歴の有無、併用する薬、これまでの薬の効き具合などの条件を医師が鑑みて、処方を決定しています。薬を選択した理由や効果については、医師にお尋ねください。

ここからは、不妊治療で使われる主な薬を、目的ごとにピックアップして解説します。

卵子を育てるための薬

不妊治療のうち、卵巣を卵子から取り出す採卵を伴う生殖補助医療(ART)では、患者さまの体の状態を整えて卵子を育てるために排卵誘発剤と呼ばれる薬を処方します。できるだけ多く、質の良い卵子を採卵することができるかどうかが治療のカギだからです。

排卵障害や月経不順があって卵子の数の確保に不安がある場合、排卵誘発剤を処方し、卵巣に刺激を与え、卵胞(卵子)の発育を促進します。卵子を育てるための代表的な薬は、次の4つが挙げられます。

クロミフェン製剤(経口薬)

クロミフェン製剤とはクロミッド、セロフェン、フェミロンなどの薬品名で処方される経口薬です。月経が始まって3~8日目から、1日0.5~3錠を5日間服用します。軽い排卵障害や排卵の遅れ、排卵のばらつきなどの症状に有効です。

ゴナドトロピン製剤(注射薬)

ゴナドトロピン製剤とは、ゴナピュール、hMGフェリング、フェリスチムなどの薬品名で注射薬として処方されています。クロミフェン製剤の効果が見られない、無排卵周期症などに対して効果が期待されます。

アロマターゼ阻害剤(経口薬)

アロマターゼ阻害剤とは、フェマーラ、レトロゾールなどの名前で処方される経口薬です。クロミフェン製剤よりも排卵誘発率は低いものの、ホルモン投与を避けたい場合に使用できます。

hMG/rFSH(注射薬)/rFSH(ペンタイプ自己注射)

hMG/rFSHやrFSHとは、経口の排卵誘発剤で効果が見られない重度の排卵障害や、複数の卵胞を育てたい場合に処方される注射薬です。ただし、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を発症する可能性もあるため、医師による適切な判断が求められます。

排卵を促すための薬剤

体外で卵子と精子を受精させる生殖補助医療では、排卵前のタイミングで質の良い卵子を採卵することが必要です。排卵前の最適なタイミングで、卵子の最終成熟を誘発する黄体形成ホルモンが急増するLHサージという状態を作るために、薬剤を使用します。主に使用される薬剤は、下記のとおりです。

hCG注射(注射薬)

hCG注射はゴナトロピン、フェルチノームなどの薬品名で処方される注射剤で、hCG(human chorionic gonadotropin:ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンを含み、排卵を促します。投与すると、約36~48時間後に排卵するため、採卵手術を確実に実施することができます。

GnRHアゴニスト製剤(点鼻薬)

GnRHアゴニスト製剤はブセレキュア、スプレキュア、イトレリンなどの薬品名で処方される点鼻薬です。脳の下垂体に働きかけ、排卵を促します。長期間使用するとかえって排卵を抑制するため、使用期間とタイミングに注意が必要です。

排卵誘発の際に併用する薬剤

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)や早期卵巣不全などの既往歴がある方には、排卵誘発の際に症状を改善する必要があります。具体的に処方される併用薬は、下記のとおりです。

プレドニゾロン

プレドニゾロンとは、副腎皮質ステロイド剤です。PCOSを持っている方で、特に過剰な免疫反応が不妊の原因となっている場合に、免疫抑制剤として処方されます。

プレマリン

プレマリンは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補い、卵巣機能を向上させるホルモン剤です。子宮内膜の成長を助けるためにも使用されます。

メトフォルミン(グリコラン)

メトフォルミンは2型糖尿病に対する薬です。不妊治療においては、インスリン抵抗性が原因のPCOSで、排卵をしやすくする効果があるとされています。

排卵をコントロールするための薬剤

生殖補助医療では、卵子を体外に取り出して治療を行います。採卵手術前に排卵が起きてしまうと、卵子を採取できず治療を進めることができません。そこで、自然排卵を防ぐために、排卵をコントロールする薬剤を使用します。排卵をコントロールする代表的な薬剤は、下記のとおりです。

GnRHアンタゴニスト製剤(注射薬、内服薬)

GnRHアンタゴニスト製剤は脳の下垂体の働きを抑え、エストロゲンの分泌を止めることによって排卵をコントロールします。注射薬の商品名はセトロタイド、ガニレスト、内服薬はレルミナがあります。

GnRHアゴニスト製剤

GnRHアゴニスト製剤は、子宮内膜症や子宮筋腫の際に偽閉経療法として使われる薬です。不妊治療においては、排卵をコントロールするために応用されます。点鼻薬と注射薬があり、点鼻薬はスプレキュアとブセレキュア、注射剤はイトレリンで、効き目は同じです。

着床や妊娠の継続を助ける薬剤

人工授精(AIH)や胚移植を行った際に、着床や妊娠の継続を助ける薬剤も、不妊治療においては非常に重要な役割を果たします。ここでは、代表的なホルモン剤を2つ紹介します。

卵胞ホルモン剤(経口剤、貼り薬、腟座薬)

子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態にするには、エストロゲンの分泌が欠かせません。エストロゲンの分泌が不足している場合には、卵胞ホルモン剤を使って補います。商品名としては飲み薬のジュリナ、プレマリンのほか、貼り薬のエストラーナテープ、ほかに腟座薬もあります。

黄体ホルモン剤(ルトラール、デュファストン)

受精卵の着床を助け、妊娠を継続させるために必要なのがプロゲステロン(黄体ホルモン)です。プロゲステロンが不足している場合には、飲み薬のルトラ―ルやデュファストンなどのホルモン剤で補充します。

不妊治療中にピルが処方される理由

避妊薬で知られるピルと不妊治療は無関係なように思えますが、不妊治療中にピルが処方されることは少なくありません。ピルには子宮内膜の増殖を抑え、厚くなりすぎることを防ぐ作用があり、ホルモンバランスや子宮内膜を安定させる効果が期待できます。

不妊治療は月経周期に合わせて行うことが多いため、月経周期が安定していることは重要なポイントの1つです。そのため、不妊治療に先立って女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンを補充するためのピルを処方し、まずは月経周期の安定を図ります。妊娠に向けて良い状態をつくってから不妊治療に移ることで、効果を最大化することができるでしょう。また、その方の状態によっては胚移植前に処方されるほか、卵胞の大きさを整えるピルの効果に着目して採卵前に処方されることもあります。

治療の目的によって、ピルが処方されるタイミングは異なるため、「何のために飲むのか」「飲むことによってどうなるのか」について確認した上で、医師の指示どおりに服用することが非常に重要です。

不妊治療で処方されるピルの種類

不妊治療で処方されるピルには、使用目的やホルモンの配合量によってさまざまな種類があります。それぞれのピルの特徴を理解し、適切な選択を行うことが治療の成功につながります。不妊治療で処方される、代表的なピルは下記のとおりです。

プラノバール

プラノバールはエストロゲンとプロゲステロンを補い、ホルモンバランスを整える薬剤です。月経周期や経血量の異常、月経時の症状改善などに使われるほか、不妊治療前の月経周期の調整、生殖補助医療を行う際の卵巣刺激の開始時期の調整などにも用いられます。

ソフィア

ソフィアはプラノバールと同様、エストロゲンとプロゲストロン(黄体ホルモン)を補う薬剤です。服用することで下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンが抑制され、卵巣を休ませることができるため、卵巣機能に問題がある場合に処方されます。

不妊治療では自己注射が処方されることがある

不妊治療では、目的に合わせて自己注射が処方されることがあります。自己注射であれば、自宅でご自身による注射ができ、通院回数を約3分の1まで減らすことが可能です。仕事などと両立しながら不妊治療を続ける方にとっては大きなメリットであるといえます。

にしたんARTクリニックでは、自己注射が処方された患者さまには、看護師が直接注射方法を指導します。
正しい方法で注射をすれば、クリニックで行う注射と効果にも副作用にも差はありません。使用する針は非常に細いため、痛みも少ないので安心してください。どうしても自己注射が怖い方、不安がある方には、ご来院いただいての注射にも対応しています。

不妊治療の薬を飲み忘れたときの対応

不妊治療の薬は、指示された服用の量とタイミングを守ることが重要です。飲み忘れたからといって次のタイミングで倍量を飲むのは避け、クリニックに相談することをおすすめします。特に、採卵のタイミングをはかる薬剤の服用を忘れたり、服用する時間を間違えたりすると、採卵手術ができない可能性もあるため、十分に注意してください。

飲むべき薬を、正しい時間に、適切な量だけ服用することを徹底しましょう。服用する量が多く混乱しそうな場合は、スマートフォンのアラームやリマインド機能などの活用をおすすめします。飲むタイミングを逸するのを防ぐため、仕事やお出掛けの際には必ず予備の薬を持ち歩けば安心です。

にしたんARTクリニックでは、
不妊治療中の投薬に関するご相談にも応じます

不妊治療に使われる薬にはさまざまな目的に合わせ、飲み薬、自己注射、点鼻薬などがあり、妊娠率を高めるためには、正しい服用が欠かせません。医師の指示に従って正確に服用するようにしてください。

にしたんARTクリニックでは、カウンセラーが治療中の疑問や質問に、丁寧にお答えしています。薬の服用について疑問や不安がある場合、不妊治療で使う薬についての知識も豊富なカウンセラーが丁寧にフォローしますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。

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