体外受精

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【図解でわかる】初めての体外受精(IVF)|対象の人や流れを詳しく解説

体外受精(IVF)は、なかなか子供を授かることができずに悩んでいる夫婦(カップル)に有効な手段のひとつです。2022年に不妊治療の一部が保険適用になったため、身近に感じることができる場面も増えたかと思いますが、まだまだ「費用が高そう」「なんだか痛そう」「特別な人が受けるもの」というイメージを持っている方もいるかもしれません。

しかし、近年は医療技術が進歩したことにより、心配はなくなりつつあるでしょう。これから不妊治療を始めようと思っている方はもちろん、不妊治療をすでに始めている方は、本記事を読んで体外受精について理解を深め、不安を解消した上でステップアップするかどうかを検討してみてください。

体外受精(IVF)とは、体外で受精させた受精卵を子宮に戻して妊娠を成立させる技術のこと

体外受精(IVF)とは、生殖補助医療(ART)と呼ばれる不妊治療方法のひとつで、体外に取り出した卵子に精子を掛け合わせて受精させた受精卵を、子宮に戻す技術のことです。
妊娠を望む男女が避妊をせずに性交渉しているにもかかわらず、一定期間妊娠しないことを「不妊」と定義しており、その原因に合わせて行う治療のことを「不妊治療」と呼びます。

妊娠に至るまでにはいくつかのステップがあり、どこかで問題が生じた場合、妊娠が難しくなります。そこで行う不妊治療のひとつが体外受精です。

体外受精の流れ

体外受精は、不妊治療を行っているクリニックや病院で行います。ここでは、体外受精の大まかな流れを解説します。

体外受精の大まかな流れ

まず、卵子を複数個育てるための投薬や注射(自己注射または通院注射)を行い、卵巣を刺激します。その後、卵子を採取し、採取した卵子と精子をシャーレの中で受精させ、3~5日間培養した受精卵を子宮の着床しやすい場所に移植します。

自然妊娠であれば、排卵期のタイミングで性交渉を行い、精子と卵子が出会って数日かけて子宮内に着床しますが、体外受精であればこうした妊娠のステップのいくつかをスキップすることが可能です。そのため、スムーズに妊娠できない場合に有効な手段といえるでしょう。

妊娠に至るためのステップ

妊娠が成立するまでには、下記のようなステップを踏みます。何度チャレンジしても自然妊娠できない場合は、どこかの段階で問題が生じているのかもしれません。不妊治療では、どこで問題が生じているか、その原因は何なのかを検査を通して調べ、対応することが大切です。

妊娠に至るまでの流れ

1. 正常に排卵する
2. 排卵された卵子が卵管采でピックアップされる
3. 卵管で精子と卵子が出会う
4. 精子が卵子に入り込み受精が成立する
5. 受精卵が細胞分裂をしながら子宮に移送される
6. 子宮内に受精卵が着床する

体外受精(IVF)の受精方法の種類

体外受精(IVF)には、2つの受精方法があります。体外受精(ふりかけ法/IVF)と顕微授精(ICSI)の2種類で、どちらも女性側は排卵誘発剤で卵巣を刺激して採卵し、男性側では精液を採取するところまでは同じです。では、具体的に何が違うのか、詳しく見ていきましょう。

体外受精(ふりかけ法/IVF)

体外受精(ふりかけ法/IVF)とは、女性の体内から採取した卵子をシャーレに入れ、精液から回収した元気な精子をふりかける方法で、精子が自身の力で卵子に侵入して自然に受精するのを待ちます。精子の状態が正常で、自力で受精する力がある場合はこちらを選びますが、体外受精(ふりかけ法/IVF)をしても受精が成立しなかった場合や、精液の所見が悪く自力で受精できないと見込まれる場合は顕微授精(ICSI)を行います。

顕微授精(ICSI)

顕微授精法(ICSI)とは、顕微鏡下で卵子に細いガラスの針を刺し、元気な精子を1匹注入して受精させる方法です。顕微授精にするかどうかは、卵子・精子の状態や女性側の年齢などによって決定します。運動状態や形態が良好な精子を選別して直接卵子に注入できるので、確実に受精させるなら顕微授精のほうが有効な手段といえるでしょう。

体外受精(ふりかけ法/IVF)と顕微授精(ICSI)の適応対象は?

では、具体的にどのような症状の方が、体外受精(ふりかけ法/IVF)と顕微授精法(ICSI)の適応対象となるのでしょうか。ここでは、それぞれの適応条件について解説します。

体外受精(ふりかけ法/IVF) の適応条件

体外受精は、体内での受精が難しい方が対象で、タイミング指導(タイミング法)や人工授精(AIH)ではうまくいかなかった方が、ステップアップすることが多いです。具体的には、下記のような症状のある方が対象となります。

卵管性不妊症

卵管性不妊症の方は、体外受精(ふりかけ法/IVF)の適応となります。卵管性不妊とは、細菌感染などにより卵管が詰まったり狭くなったりすることで、精子や受精卵が卵管を通ることができない状態です。ほかにも、卵管に水や膿が溜まって子宮に少しずつ流れ込み、着床の妨げになることもあります。
また、排卵が起きたときに卵子を取り込む役割をする「卵管采」が周囲の組織と癒着している場合も、卵子を取り込めず妊娠が難しくなります。

男性不妊症

男性不妊症も同じく、体外受精(ふりかけ法/IVF)の対象として挙げられます。男性不妊は、自然妊娠するために必要な精子の数や運動率が条件を満たしていないことを指します。男性不妊の中で最も多いのが造精機能障害と呼ばれる、精子を作る機能に問題が生じているものです。「精子の運動率が低い」「そもそも精子の数が少ないもしくはほとんどいない」「奇形率が高い」などが症状として挙げられます。

免疫性不妊症

女性の体内に抗精子抗体ができ、精子の能力を損なってしまう免疫性不妊症も体外受精(ふりかけ法/IVF)の対象です。男性の精子は女性の体にとって異物であることから、女性の体内に精子が入るとまれに抗体が作られてしまうことがあります。抗精子抗体があると、精子が女性の体内に入ってきても攻撃されてしまい、子宮までたどり着くことができません。

原因不明不妊症

近年増加傾向にある原因不明不妊症も体外受精(ふりかけ法/IVF)の対象になります。原因不明不妊症とは、男女とも不妊検査をしても異常がないのに、妊娠に至らない状態のことです。日本生殖医学会によると、従来は不妊症の10~15%を占めていた原因不明不妊症ですが、近年は特定の不妊原因が見つからない高年齢の不妊女性が増加してきたため、この割合はもっと高いと予想されます。

顕微授精(ICSI)の適応条件

体外受精(ふりかけ法/IVF)だけでは、受精卵を作ることが難しいとみなされた場合、顕微授精(ICSI)の適応対象となります。下記の条件にあてはまる場合が対象となります。

体外受精(ふりかけ法/IVF)による受精障害がある場合

一般的な体外受精(ふりかけ法/IVF)を数回行っても受精率が低い、もしくは一度も受精しない場合は、顕微授精の対象となります。この症状を受精障害といい、体外受精(ふりかけ法/IVF)の際に受精障害が見られた場合は顕微授精が適応されます。

精子の正常形態率が低い場合

精子の正常形態率が低い場合も、対象にあてはまります。精子の頭部や尾部、中片部のいずれかに異常がある奇形精子の割合が多い場合は、受精できる確率が低くなるため、顕微授精の適応になります。

体外受精(IVF)の流れ

体外受精(IVF)は、具体的にどのようなことを行うのでしょうか。ここでは、体外受精の流れを詳しく解説します。

1. 事前の検査を行う

体外受精を実施する前には、男女ともに不妊の原因を探ったり、排卵の様子を確認したりするために必要な検査を行います。女性側は子宮や卵巣の病変の有無を調べるための超音波検査や、病気の原因となる細菌やウイルスなどの感染症検査、甲状腺機能検査、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査などを実施します。一方、男性には精液検査や精子の形態を調べるクルーガーテスト、病気の原因となる細菌やウイルスなどの感染症検査、抗精子抗体検査などを行います。

2. 月経周期に合わせて投薬を開始する

体外受精は、月経周期を軸に進めていきます。まず、体外受精への第一歩として、採卵する周期前の自然排卵を防ぐために投薬を始めます。投与の方法は、注射や経口薬、点鼻薬などがあるので、使用する際には医師とよく相談し、医師の判断をあおぎましょう。

3. 卵子を複数個育てるために卵巣を刺激する(月経周期3日目~)

月経3日目から採卵に向け卵巣刺激を行います。卵巣刺激方法は、卵巣機能や月経3日目頃のホルモン値、前胞状卵胞の数(AFC)などを総合的に判断し、医師が決定します。
内服薬や点鼻薬の服用のほか、自分で採卵誘発の注射を打つこともあります。卵巣刺激方法は高刺激法・低刺激法・自然周期法の3通りあり、それぞれ一長一短があるため、希望や体質に合わせてどの方法を採用するかを医師の判断をあおぎましょう。

4. 採卵(月経12~18日目)

月経12~18日目には、成熟した卵子を卵巣内の卵胞から採取する採卵手術を行います。経腟超音波(エコー)で卵胞を確認しながら、採卵針を刺して卵胞液ごと吸引するのが一般的です。一度で数個~20個近く採れることもあれば、高齢だと1つだけのこともあります。複数個採取できた場合、受精卵にして凍結・保存すれば、次の月経周期以降は胚移植からスタートできるので効率的です。

5. 採精

採卵と同日に、精液を採取します。クリニック・病院の採精室で採取する方法と、自宅で採取して女性がパートナーの精液を持ち込む方法があります。いずれの場合も採精の前には体調を整え、2~3日程禁欲期間を取りましょう。
なお、自宅で採取する場合は、運動能力が低下しないよう、体温くらいの温度に保ちながら持ち運ぶ必要があります。その後、持ち込まれた精子は、クリニック・病院で胚培養士が洗浄し、より運動率の良い精子を選別して回収します。

6. 受精

胚培養士が、預かった卵子と精子を受精させる受精操作(媒精)を行います。にしたんARTクリニックの場合、受精方法は下記の2種類です。

にしたんARTクリニックでの受精方法

  • 体外受精(ふりかけ法/IVF):シャーレの中で卵子に精子をふりかけて、精子自身の力で受精させる方法
  • 顕微授精(ICSI):卵子に針を刺して、精子を注入する方法

7. 胚培養する

胚を子宮内と同じ環境の培養器に入れて、「胚盤胞」という状態になるまで最長6日間培養します。胚とは、細胞分裂を始めた受精卵のことで、受精卵は培養することで2分割、4分割、8分割と細胞分裂を繰り返し成長していきます。

8. 胚移植する

最長6日間の培養を経て、着床しやすい桑実胚や胚盤胞まで育ったら、やわらかいカテーテルを用いて子宮内に戻す「胚移植」を行います。胚移植は、胚を着床しやすい場所にそっと置くイメージです。複数移植すると多胎妊娠のリスクがあるため、胚移植する数は原則1つのみです。

胚移植について詳しくは、こちらのページをご覧ください。胚移植とは?

胚移植には、凍結させずに同じ周期で新鮮胚を移植する「新鮮胚移植」と、いったん凍結させて次回以降の月経周期に融解させて胚移植する「凍結融解胚移植」の2つのパターンがあります。それぞれの特徴は、下記のとおりです。

新鮮胚移植

新鮮胚移植は、比較的安価で培養期間が短く、凍結融解によるストレスを胚に与えずに済みます。また、採卵した周期にそのまま移植するので、移植の1~2週間後には妊娠判定ができるというスピード感も特徴のひとつです。一方で、採卵から日が浅い段階で移植するため、採卵で子宮や女性ホルモンが刺激を受けて敏感なことが原因で、妊娠率が全国平均で20%程度と低いことがデメリットとなります。

凍結融解胚移植

凍結融解胚移植は、何度も採卵しなくていいので負担が少なくて済む点や、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクを回避し、子宮内膜の環境がベストな状態で移植できるので、妊娠率が向上する傾向があります。また、複数の胚を凍結しておくことで、第2子・第3子を希望する際にも使えます。 一方で、「凍結・融解の過程で胚にストレスがかかって使えなくなるリスクがある」「 いったん融解すると再利用できない」といったことに注意が必要です。

9. 黄体補充

胚移植後は、胚が着床しやすいよう、子宮内膜を整えるための黄体補充の投薬を行います。黄体補充の薬剤には貼り薬や内服薬など種類があるので、相談の上、医師の判断をあおぎましょう。

10. 妊娠の確認

胚移植から1~2週間後に、血液検査と超音波検査で妊娠判定を行います。陽性の場合は、妊娠の経過を確認して妊娠8~9週目で問題なければ、不妊治療クリニックを卒業して産婦人科へ移るのが一般的です。
陰性の場合は、妊娠が成立しなかった原因を検証・考察し、次の治療に向けて計画を立てます。

体外受精(IVF)の通院スケジュール

体外受精(IVF)の治療スケジュールや通院回数は、クリニックや治療方法、投薬内容によってさまざまです。お仕事をされている方は、スケジュールにも配慮してもらえるところを選ぶと良いでしょう。
ここでは、体外受精の通院スケジュールについて、にしたんARTクリニックのショート法を例に挙げて解説します。

ショート法の場合、通院開始から胚移植まで20日程かかります。なお、卵巣刺激のための薬剤注射を自己注射する場合と通院注射する場合で、通院の回数は変わります。
自己注射を選択した場合、採卵までの通院回数は採血検査や卵胞確認などを合わせて、計5回が目安です。どちらの方法にするかは、相談の上、医師の判断をあおいでください。

体外受精(IVF)をすれば必ず妊娠できるわけではない

体外受精(IVF)は、タイミング指導(タイミング法)や人工授精(AIH)よりも高い確率で妊娠できる方法ですが、それでも必ず妊娠できるわけではありません。
体外受精の成功率は全年齢で40%程度です。特に35歳を過ぎると成功率が下がっていくため、早めに不妊治療を始めることが大切です。

不妊に悩んでいるなら体外受精(IVF)はひとつの有効な手段

体外受精(IVF)は、妊娠に至るステップで何かしらの障害がある場合、着床までの行程をショートカットでき、妊娠の成功率を高めるために有効な手段です。不妊に悩んだら、パートナーといっしょに検査を受け、体外受精(ふりかけ法/IVF)、顕微授精(ICSI)のどちらが向いているのかを調べてみましょう。
どちらの方法も、検査や注射などで何度も通院が必要になり、身体的・精神的に負担が生じます。お仕事やプライベートのことも考慮しながら、通いやすく相談しやすいクリニックを選んでください。

にしたんARTクリニックは、長い治療期間中に患者さま一人ひとりに寄り添うホスピタリティを大切に、それぞれの事情に合わせて、患者さまファーストで最速・最善の妊娠を叶える治療を目指しています。体外受精について検討している方は、にしたんARTクリニックへお気軽にご相談ください。

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