不妊治療
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妊娠を望む方が子宮内膜症と診断されたとき、将来妊娠できるのかどうか、不妊につながらないのか、不安に感じることもあるでしょう。しかし、子宮内膜症になったからといって妊娠に至らないわけではありません。子宮内膜症について、正しい知識を持ち、早期に適切な治療や対策を行うことで妊娠の可能性を高めることができます。
この記事では、子宮内膜症が不妊の原因になるとされている理由や、妊娠を望む場合の治療法について解説します。
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子宮内膜症とは、子宮内膜または似た組織が子宮外に発生する疾患のこと子宮内膜症の4つの種類子宮内膜症によって起こる主な症状子宮内膜症は不妊の原因になる?子宮内膜症が不妊の原因になる理由子宮内膜症の場合の不妊治療法子宮内膜症とは、子宮内膜または子宮内膜に似た組織が、本来あるべき子宮の内側以外の場所に発生する疾患です。公益社団法人日本産科婦人科学会によれば、子宮内膜症は20~30代の女性の発症が多く、そのピークは30~34歳といわれています。
※出典 公益社団法人日本産科婦人科学会「子宮内膜症」
子宮内膜症は、女性ホルモンの影響で月経の周期に合わせて増殖し、子宮の外に排出できずに溜まった血液が周りの組織との癒着を引き起こしたり、炎症を起こしたりすることによって発生します。
子宮内膜症の代表的な症状は、月経痛をはじめ下腹部痛、排便痛、腰痛、性交痛などの痛みです。また、不妊の原因にもなることもあります。妊娠を希望する子宮内膜症の方の30~50%程の方が、不妊症であるといわれています。
※出典 公益社団法人日本産婦人科医会「(4)子宮内膜症性不妊への対応」
子宮内膜症は、発症する部位によって、次の4つの病態に分けられます。子宮内膜症の4つの種類について、具体的に下記で解説します
腹膜病変は、腹膜子宮内膜症とも呼ばれる病変のことで、子宮内膜症の中では最も基本的な症状です。数ミリ規模の病変が腹膜や臓器の表面に発生し、痛みは少なく、経腟超音波検査やMRI検査などの画像検査での発見が難しいため、開腹または腹腔鏡手術を行わければ正確な診断ができません。
腹膜病変は自覚症状がほとんどないため、早期の段階では気づかないことが多いでしょう。別の疾患の検査時に偶然発見されるケースや、症状が進行し腹痛や月経痛の悪化など明確な症状が発生した際に発見されるケースがみられます。
卵巣チョコレート嚢胞は、卵巣の内部に血液が溜まった袋状の腫瘍ができる病変で、強い月経痛を感じるのが特徴です。経腟超音波検査やMRI検査で調べることができ、場合によっては内診で卵巣の腫れやしこりを発見することもあります。
なお、卵巣チョコレート嚢胞がある状態で妊娠した場合、妊娠中の手術に伴うリスクなどを考慮して、経過観察することが多いとされています。
※出典 公益社団法人日本産婦人科医会「(3)妊娠中に見つかったチョコレート囊胞への対応」
深部子宮内膜症は、腹膜の表面からやや埋もれた状態で発生する子宮内膜症です。子宮と直腸が癒着したダグラス窩(子宮と直腸の間にあるくぼみ)の奥に発生するケースが多く、発見も手術もしづらいという特徴があります。
深部子宮内膜症を発症すると、強い月経痛や慢性的な骨盤痛、性交痛などの症状が発生します。
他臓器子宮内膜症は、肺や膀胱、尿管、腸管など全身のどこにでも発生するおそれがある病変です。できる部位によって、月経周期に合わせてさまざまな症状が表れます。
子宮内膜症になると、どのような症状が表われるのでしょうか。子宮内膜症の症状は下記のとおりです。
子宮内膜症の方の9割が訴えるのは月経痛です。子宮内膜症の症状が進行するにつれて、月経のとき以外にも腰痛や下腹部痛が起きるようになります。特に、卵巣チョコレート嚢胞が発症している場合は、非常に強い月経痛を引き起こす場合があります。
子宮の筋肉の中に子宮内膜症が発生すると(子宮腺筋症)、子宮の収縮ができなくなり、経血の量が増える過多月経が起こります。また、過多月経と同じく、子宮の筋肉の中で子宮内膜症が発生することで、子宮内膜の再生が遅れて月経の期間が長くなる過長月経の症状が出る場合もあります。
子宮内膜症により、直腸や膀胱の近くで組織の癒着が起こることで、排便や排尿時に痛みを感じる場合があります。また、ダグラス窩の奥に病変が起きると、性交渉時に強い痛みが生じます。
子宮内膜症は不妊の原因にはなりうるものの、妊娠に至らなくなるわけではありません。子宮内膜症は、卵巣や卵管周囲の癒着、卵子が卵管に取り込まれなくなるピックアップ障害などを引き起こすほか、卵巣機能を低下させて卵子の質が悪くなることもあります。そのため、妊娠率が低下し、不妊を引き起こす原因となります。
子宮内膜症を発症したからといって、必ず不妊になるわけではありません。しかし前述のとおり、妊娠を希望する子宮内膜症の方の30~50%程が不妊であるというデータがあるのも事実です。将来的に妊娠を考えているのであれば、症状が軽度な場合でも早めに治療するのが望ましいでしょう。
子宮内膜症はなぜ、不妊の原因を引き起こすのでしょうか。子宮内膜症が不妊を招く理由として、下記のようなことが挙げられます。
子宮内膜症によって骨盤内に癒着が生じると、卵管の動きが妨害されます。その結果、排卵期に卵胞から卵子が飛び出しても、卵管の先にある卵管采がキャッチできない症状(ピックアップ障害)が起きて、卵子を卵管の中に取り込むことができず、受精も阻害されてしまうのです。
卵巣チョコレート嚢胞は、卵巣機能を低下させる原因のひとつです。卵巣チョコレート嚢胞があると慢性的に卵巣に炎症が起きるため、卵子の数や質に悪影響を与えます。その結果、卵巣機能を低下させ、不妊に至ると考えられます。
子宮内膜症は、症状や重症度のほか、年齢、妊娠・出産を希望するかどうかなどを考慮して治療法を検討します。受診する医療機関によって治療法が異なるため、しっかりと医師と相談した上で治療方針を決めることが大切です。どの治療法でも長期的な経過観察が必要となるので、治療を受ける際は自宅や職場から通いやすい医療機関を選びましょう。
ここでは、将来的に妊娠を望む、子宮内膜症の方を対象にした治療法について解説します。
すぐにでも妊娠を望む場合は、患者さまの症状や年齢を考慮して、妊活を止めて子宮内膜症の治療を行うか、経過観察をしつつ不妊治療を行うかを検討します。子宮内膜症の症状が軽度の場合は、経過観察をしながら不妊治療を行うケースが多いでしょう。
30歳以下で不妊期間が短く、ほかの不妊因子がなければ自然妊娠を待つか、タイミング法(タイミング指導)を行うのが望ましいとされています。30~35歳では、排卵誘発や人工授精(AIH)を検討して、妊娠できなければ生殖補助医療(ART)を検討します。36歳以上の場合は、生殖補助医療である体外受精(IVF/ふりかけ法)や顕微授精(ICSI/イクシー)を検討してください。
※出典 公益社団法人日本産婦人科医会「(4)子宮内膜症性不妊への対応」
子宮や卵巣を温存するために、子宮内膜症の症状に合わせた薬剤を投与して治療を行う方法もあります。ただし、子宮内膜症の治療に使用するルナベルやヤーズなどのLEP製剤やGnRHアゴニスト、黄体ホルモン剤などは排卵抑制作用があるため、薬剤を使用している期間は妊娠できないのが特徴です。また、いずれの薬剤も、妊娠率の向上につながらないため、妊娠を希望している場合には、基本的に薬物治療は推奨されません。
一方で、生殖補助医療のときに行われる卵巣刺激法のうち、GnRHアゴニストを3~6ヵ月使用するウルトラロング法は、子宮内膜症を進行させるホルモンであるエストロゲンを抑制し、病変の拡大を防ぎます。そのため、ウルトラロング法は子宮内膜症の進行を抑えつつ、妊娠率の向上が期待できます。しかし、ウルトラロング法は治療に時間がかかるため、対象者が高齢の場合は別の方法での治療が推奨されます。
※出典 公益社団法人日本産婦人科医会「(4)子宮内膜症性不妊への対応」
病巣部がはっきりしている場合や、卵巣チョコレート嚢胞が大きい場合などは、手術を行ってから不妊治療を始めることもあります。しかし、手術の際に卵巣を一部切除したり傷つけたりすることで、卵巣機能が低下する懸念もあるため、妊娠を希望する場合はきちんと医師と相談してから、治療方針を決めましょう。
子宮内膜症は不妊の原因になる病気ではありますが、必ず妊娠できなくなるわけではありません。まずは医療機関に相談の上、正しい判断のもとで治療や妊活を行うことが重要です。
にしたんARTクリニックでは、妊娠・出産の希望の有無を踏まえて、患者さまと相談しながら、ベストな治療方針を提案します。ぜひお気軽にご相談ください。
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