卵子凍結

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卵子凍結とは?メリット・デメリットや流れまで徹底解説

卵子凍結とは?メリット・デメリットや流れまで徹底解説

妊娠の可能性を高めるために関心が高まる「卵子凍結」。さまざまな事情から、誰もが若いうちに妊娠できるわけではありません。将来の妊娠に備えるためにも、卵子凍結について正しく理解することが大切です。
本記事では、卵子凍結について今注目されている理由や、対象となる方、メリット・デメリット、費用について詳しく解説します。また、にしたんARTクリニックで実際に行われている卵子凍結の流れについても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

卵子凍結とは?

卵子凍結とは、女性が将来妊娠する可能性を高めるために、若くて質の良いうちに自分の卵子を凍結する医療技術です。卵巣から取り出した卵子を-196℃の超低温の液体窒素の中で凍結させ、自身が出産できるタイミングまで保存します。
超低温では化学変化はほとんど起こらないため、卵子の状態を数十年も変化させないまま保存することが可能です。
日本では、2013年に初めて一般社団法人日本生殖医学会の倫理委員会が、近年の未受精卵子および卵巣組織凍結技術の急速な進歩とその臨床応用の現況を考慮して「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関するガイドライン」を提示しました。
それにより、未受精卵子の凍結・保存は、現状では妊娠は難しいものの、将来的に妊娠を希望する女性にとって有効な手段となります。また、近年では不妊治療の保険適用開始や行政からの卵子凍結費用補助 などの動きもあり、卵子凍結は身近になりつつあります。

卵子凍結には医学的適応と社会的適応がある

卵子凍結は「医学的適応」と「社会的適応」に分けられ、それぞれ対象となる方や凍結するための理由が異なります。

医学的適応

医学的適応は、がんや悪性腫瘍などに罹患していて、その治療を行う主治医の許可がある女性が対象です。未婚で悪性腫瘍などに罹患した方が、その治療を行うことで卵巣機能が低下する可能性がある場合に、妊娠するための力(妊孕性)を温存するために卵子を凍結します。

社会的適応

社会的適応は、卵子凍結を希望する健康な女性が対象です。加齢などにより生殖能力が衰えてきてしまい、妊娠できない状態になる前に卵子を凍結します。

胚凍結とは?

胚凍結とは受精卵凍結、胚盤胞凍結とも呼ばれ、卵巣から採卵し、卵子のまま凍結保存するのではなく、精子と受精させ、正常に細胞分裂が行われた受精卵の段階で凍結保存することです。にしたんARTクリニックでは生殖補助医療(ART)の「体外受精(IVF)」と「顕微授精(ICSI)」の過程の一部として行われます。
受精卵は卵子よりも発育しているため、妊娠の可能性をかなり正確に評価することができます。
将来的に出産を望むご夫婦あるいは事実婚のカップルが加齢などによる生殖能力の衰えに備え、先に受精卵を凍結することを目的に行われます。

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卵子凍結が注目されている理由

卵子凍結が注目されている理由には、女性の社会進出と晩婚化が影響していると考えられます。具体的には、次のような理由が挙げられます。

女性の社会進出による晩婚化と妊娠率の低下

近年の日本は、女性の社会進出とともに、晩婚化も進んでいます。
2022年の厚生労働省の調査 によると、日本の女性の平均初婚年齢は29.7歳です。妊娠適齢期(20〜30歳くらい)とされる20代を過ぎてから結婚し、妊娠を迎える女性が増えていることがわかります。
こうした背景がある中、年齢を重ねるほど妊娠が難しくなることを懸念する女性が増え、若くて質の良い卵子を凍結保存する卵子凍結が関心を集めるようになりました。
卵子凍結によって、女性はキャリア設計と妊娠・出産をコントロールしやすくなるといえるでしょう。

病気による将来的な妊娠率の低下

卵子凍結は、加齢だけでなく、病気によって将来的に妊娠率が低下するおそれがある場合にも行われます。今は健康でも、将来妊娠に影響する病気にかかる可能性はゼロではありません。
がんなどの悪性腫瘍をわずらうと、外科的な治療や放射線療法を施すことで卵巣の機能が低下し、妊娠しにくくなってしまう場合があります。
こうした場合に、あらかじめ卵子を凍結保存しておき、妊娠率をできる限り維持するためにも卵子凍結は行われます。

年齢を重ねると妊娠が難しくなる理由

なぜ、加齢とともに妊娠しにくくなってしまうのでしょうか。女性の卵巣内には、生まれたときにすでに一生分の卵子の数が決まっていて、年齢とともに卵子の数は減少し、老化していきます。減ってしまった分の卵子が、新たに体内で作られることはありません。
また、同じ体内にあった卵子でも、20歳のときの卵子よりも30歳のときの卵子のほうが、歳を重ねた分だけ質が下がっているのです。
卵子は老化により質が下がるとうまく成長できなかったり、途中で成長が止まったりする卵子が増えるとされています。高齢になるほど妊娠が難しくなるのはそのためです。

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卵子凍結の対象となる方

今は仕事を優先したい状況にある方

今は仕事を優先させたい時期で、パートナーを作る時間や結婚・出産の予定はないけれど、将来的には子供を産みたいと考えている方は卵子凍結の検討対象といえます。

将来出会うパートナーのために今できることをしておきたい方

将来出会うパートナーと子供を持つことを見越して、年齢が若いうちに卵子凍結を行っておけば、将来子供を望んだときに若い時の卵子が使えるようになります。

介護などの理由で、今すぐの妊娠・出産が難しい方

仕事以外の理由として、親族の介護などの理由で今は妊娠や出産が難しいけれど、将来的に子供を産みたい方も卵子凍結の検討対象といえるでしょう。

パートナーはいるが、今すぐ結婚する予定のない方

パートナーはいるけれどお互いに仕事を優先したい、相手も自分もまだ結婚や出産は考えていない状況だけれど将来的に子供は欲しいという方も、卵子凍結を受ける検討対象といえます。この場合、受精卵の凍結保存という選択肢もあります。

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卵子凍結のメリット

卵子凍結は、キャリア形成などですぐには妊娠・出産が難しい女性にとって、将来の妊娠・出産に希望が持てる技術といえます。実際に卵子凍結を検討する上で、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。

妊娠や出産時期を自分でコントロールできる

卵子を凍結保存しておけば、将来自分が妊娠や出産を望んだタイミングで顕微授精を行うことができます。
妊娠や出産の時期を自分でコントロールできるため、キャリアプランやライフプランも立てやすくなるでしょう。

加齢とともに減っていく卵子を将来の妊娠のために保管しておける

キャリア形成などのさまざまな理由で女性がすぐに妊娠・出産ができない場合に、卵子凍結をしておくことで、加齢とともに減少していく卵子を将来の妊娠に向けて保存することができます。

卵子の質を今のまま保存し、将来の妊娠に備えることができる

卵子は加齢とともに老化し、若いときよりも質が悪くなっていきます。卵子凍結を行うことで現在の質のいい卵子を凍結保存し、将来の妊娠に備えることができます。

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卵子凍結のデメリット

卵子凍結にはいくつか注意点があります。メリットだけでなくデメリットも十分に理解した上で検討しましょう。

将来、必ずしも妊娠するとは限らない

卵子凍結をしても、必ず将来の妊娠・出産に結び付くわけではありません。
いざ凍結しておいた卵子を使おうというときは、次のような課題をクリアする必要があります。

妊娠につなげるための課題

  • 融解した卵子が受精できる状態か
  • 正常に受精するか
  • 受精卵が移植できる状態まで成長するか

また、胚が着床しても、妊娠初期に流産する可能性もあります。

凍結することで卵子の質が低下する可能性がある

一度卵子を凍結・融解するため、卵子凍結を行わない体外受精と比べて、卵子がダメージを受ける可能性があります。
卵子は受精卵に比べて水分量が多く、凍結時の水分膨張によって組織破壊が起こり、融解時の卵子の質が低下する可能性があるのです。卵子の質の低下は、その後の受精や受精卵の発育にも影響します。

妊娠や出産には年齢の限界がある

若い頃に卵子凍結をしても、実際に妊娠・出産するときの年齢が高いと、加齢によるリスクが生じます。凍結によって卵子の老化は止められても、本人の体や臓器の加齢は止められません。
このような理由もあり、卵子凍結は一般的に39歳以下の女性が対象とされています。

受精方法は顕微授精(ICSI)となる

凍結した卵子を使って妊娠したい場合は、体外受精の方法のひとつである「顕微授精(ICSI)」しか選べません。これは、顕微鏡で見ながら卵子に精子の入った針を刺し、精子を注入する方法です。
凍結された卵子は融解後に表面が固くなり、精子が侵入しにくくなります。また、卵子を凍結するためには体外受精(いわゆるふりかけ法)に必要な卵子の周りを覆っている顆粒膜細胞を取り除かなければなりません。そのため、顕微授精で受精をサポートする必要があるのです。

費用がかかる

卵子凍結は病気の治療ではなく、将来に備えて妊娠・出産の可能性を残しておくものです。そのため、保険適用ができず、すべて自費診療となります。また、凍結費用のほか、保管料が毎年発生します。

体に負担がかかる

卵子凍結では、排卵誘発剤によって複数の卵子の成長を促しますが、副作用としてOHSS(卵巣過剰刺激症候群)が起こる可能性があります。
OHSS とは、排卵誘発剤が卵巣を過剰に刺激することで卵巣が腫れ、おなかや胸に水が溜まるなどの症状が現れること。重症化すると、腎臓がうまく機能しなくなる、血栓ができるといった症状を引き起こすこともあります。
また、採卵するときには出血と感染リスクがあることにも留意しなければなりません。採卵の際に腟から卵巣に向けて細長い針を刺しますが、そのときに卵巣から多量の出血があったり、卵巣周りの臓器が傷ついたり、感染症を引き起こしたりすることがまれにあります。

保管時のリスクがある

卵子凍結では、-196℃の超低温で卵子を凍結し、液体窒素タンクの中で何十年も状態変化なく保存させることができます。
しかし、長期保存期間中に災害などによって液体窒素タンクが破損したり、長期間の停電によって低温が保たれず、凍結された卵子が使えなくなってしまったりするリスクもゼロではありません。医療機関によっては、停電時に非常電源などに切り替えて対応する場合もありますが、万が一の災害時のバックアップ体制や返金規定などを確認しておくことも重要です。

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卵子凍結の流れ

続いては、にしたんARTクリニック新宿院における卵子凍結の流れについて見ていきましょう。

1.カウンセリング・初回

にしたんARTクリニックでは最初に、カウンセラーによる無料カウンセリングを行います。卵子凍結の流れや費用についての説明も初回来院時に行います。

2.再診(来院2回目)

検査結果の報告や卵子凍結のスケジュール説明を行います。

3.採卵周期開始(来院3回目)

効率良く卵子を採取するために、内服薬や注射剤などを使用し複数の卵子を育成。排卵誘発、経腟超音波による卵胞チェック、ホルモン検査(採血)などを行います。月経開始の2~3日目に来院します。

4.採卵周期(来院4回目以降)

排卵誘発、経腟超音波による卵胞チェック、ホルモン検査(採血)などを行います。来院4回目以降から採卵までは、3~4日に一度来院します。

5.採卵

卵巣から採取した卵子は、ガラス化凍結法により、液体窒素で凍結保存を実施。採卵後はリカバリールームにて、2~3時間程安静をお願いしています。その後、医師の診察と、培養士より採卵結果の説明を行います。

6.パートナーが決まり、出産時期を決める

パートナーが決まり、出産時期も決まったら融解し、妊娠・出産に向け顕微授精を行い胚移植を行います。

胚移植について詳しくは、こちらのページをご覧ください。胚移植とは?

卵子凍結について詳しくは、こちらのページをご覧ください。卵子凍結について

不妊治療の注意点

個人の状態やクリニックによって卵子凍結の流れや通院時の検査内容は異なるので、時間やスケジュールには余裕のある時期を選ぶことをおすすめします。
採卵当日は仕事をしている方は仕事を休む必要がありますが、翌日からは普段どおりの生活を送っても良いことが多いです。ただし、採卵後に体調不良が続くこともあるので医師の指示に従うことが重要です。
また、費用については、排卵誘発法や採卵できた個数、凍結保存する個数によって変動する場合と一律の場合があります。クリニックを選ぶ際には、しっかりと確認しておきましょう。

卵子凍結にかかる費用

卵子凍結は保険適用外の自費診療とされていました。そのため、公的な支援や助成はこれまでほとんどありませんでした。
しかし、近年では東京都が少子化対策として卵子凍結の費用補助制度を導入したり、民間企業が福利厚生で卵子凍結の費用補助をしたりする動きも出ています。
なお、にしたんARTクリニックで卵子凍結にかかる費用は、下記のとおりです。

初診料3,300円
初診スクリーニング検査22,990円
術前検査9,460円
卵子凍結440,000円(低刺激・高刺激に関わらず一律)
卵子凍結保管料49,500円/年(卵子の数に関わらず一律)円(低刺激・高刺激に関わらず一律)

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卵子凍結の補助制度を自治体が導入

卵子凍結の補助制度を導入する自治体もあります。例えば東京都では、次のような補助を受けられます。

卵子凍結の対象と補助金上限額

  • 対象:18~39歳の女性
  • 対象となる施術:採卵準備のための投薬、採卵、卵子凍結
  • 補助金上限額:20万円(次年度以降、保管更新時の調査に回答した際に、最大5年間、1年ごとに一律2万円の補助を予定)

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卵子凍結の補助制度を福利厚生に導入する民間企業もある

民間企業でも、従業員の長期的なキャリア形成を支援することを目的に、福利厚生の一環として卵子凍結の費用を補助する動きが見られます。ここでは、2社の事例を見ていきましょう。

事例1:卵子凍結への費用補助を福利厚生制度に導入

女性社員の自律的なライフプラン設計の支援を目的に、卵子凍結への費用補助を、2023年10月から国内社員向けの福利厚生制度として導入しています。
卵子凍結管理サービスと提携するほか、社員が卵子凍結を行うクリニックに対して支払う費用を、34歳以下の女性社員を対象に40万円を上限として補助するという制度です。
また、卵子凍結に関する理解を深めるために社員向けのセミナーも実施し、社員のヘルスリテラシーの向上を図っています。

事例2:全社員を対象に、卵子凍結に関する費用を一子につき200万円まで補助

多様な人材が活躍できる環境を創ることを目指し、「卵子凍結支援制度」を福利厚生に導入しています。
卵巣刺激、採卵、麻酔、凍結保存、凍結卵子融解、凍結保存延長、検査などの卵子凍結に関する費用について、一子につき200万円を上限として補助を受けられます。全社員(社員の配偶者・パートナーを含む)が対象です。

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卵子凍結は女性が将来の妊娠・出産に備える保険になる

晩婚化をはじめ、キャリア形成の優先や親の介護など、妊娠・出産を将来的には望むけれど今は難しいという事情を抱える女性が多い現代。卵子凍結は、将来子供を産める可能性を残しておくための有効な選択肢となります。
費用を補助する動きも出てきているため、お住まいの自治体や勤務先の福利厚生によっては、経済的な負担を抑えつつ不妊治療を受けられる可能性もあります。
メリットとデメリットを理解した上で、卵子凍結を人生設計の選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。

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