アシステッドハッチング(AHA)について

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アシステッドハッチング(AHA)とは?

アシステッドハッチング(AHA)とは、排卵直後の卵子や受精卵(胚)を保護する役割を持つ透明帯(卵の殻の部分)を人工的に切開し、胚から胚盤胞が脱出する手助けをする治療技術です。透明帯からの孵化(ハッチング)を補助(アシスト)することから、この名前がついています。

2022年4月から不妊治療が保険の適用対象になったことに伴い、アシステッドハッチング(AHA)も保険適用の治療になりました。現在、国内の多くの医療機関において、アシステッドハッチング(AHA)が実施されています。

アシステッドハッチング(AHA)の目的

アシステッドハッチング(AHA)の目的は、受精卵の着床率・妊娠率の向上です。アシステッドハッチング(AHA)によって、胚の透明帯の一部を削ったり穴を開けたりすることで胚盤胞が孵化(ハッチング)しやすくなることで、着床が起こりやすくなるのです。

なお、胚盤胞の孵化を妨げる直接的な原因は、透明帯の厚さや硬さで、それを引き起こしているのが加齢や胚の凍結です。
透明帯から胚盤胞が孵化できなければ、胚は着床できません。つまり、受精卵が発育しないので、妊娠が叶わなくなってしまいます。

アシステッドハッチング(AHA)を利用できる対象者

アシステッドハッチング(AHA)の主な適用対象者は、良好胚を移植しても妊娠に至らない方、凍結融解胚移植を行うことで透明帯の硬化が懸念される方、高齢で透明帯が硬くなってしまったりした方です。なお、2014年のASRM(米国生殖医学会)のガイドラインによると、概ね38歳以上の高齢患者、体外受精(IVF)を数回行っても妊娠継続に至らない反復不成功の方、胚の質が不良な方が適用対象とされています。

ただし、多胎妊娠やレーザーによる熱の影響などのリスクもわずかながらあることから、現在はアシステッドハッチング(AHA)が有効だと医師が判断した患者のみに施術を行う医療機関も多いようです。

アシステッドハッチング(AHA)の種類

アシステッドハッチング(AHA)には、3つの方法があります。にしたんARTクリニックでは、より安全性が高く正確な、レーザーによるアシステッドハッチング(AHA)を採用しています。

機械式アシステッドハッチング

機械式アシステッドハッチングは「PZD法」とも呼ばれ、1990年に初めてアシステッドハッチング(AHA)を考案したCohen氏が発表した方法です。「PZDピペット」という針状のピペットを透明帯と胚盤胞本体の隙間に刺し、ホールディングピペットと透明帯をこすり合わせることでT字切開します。難度が高く、培養者の技術力が求められます。

レーザーアシステッドハッチング

レーザーアシステッドハッチングは、安全かつ簡便に行うことができることもあり、現在のアシステッドハッチング(AHA)の主流といえる方法です。透明帯に赤外線レーザーを照射し、受精卵を覆う透明帯を薄くしたり(透明帯菲薄化法)、穴を開けたり(透明帯開口法)します。レーザーを照射する部分は透明帯のみなので、胚そのものへのダメージを極力抑えることが出来ます。

にしたんARTクリニックでは、モニターにレーザーを照射するポイントを表示し、ピンポイントでレーザー照射を実施。胚培養士が安全・正確な照射を行っています。

化学式アシステッドハッチング

化学式アシステッドハッチングとは、酸性タイロード液など、特殊な薬剤(酸性溶液)を用いて透明帯の外側を溶解することで透明帯を薄くする方法です。薬液による胚へのリスクが懸念され、現在はあまり実施されていません。

細分化されるレーザーアシステッドハッチング

現在のアシステッドハッチング(AHA)の主流といえるレーザーアシステッドハッチングは、胚の状態によって一般的には3つの方法が行われています。

透明帯開孔法

透明帯開孔法(ZD法)は、透明帯の一部に穴を開けて孵化をしやすくする方法です。開孔部が小さいと、ハッチングを起こすときに内部細胞塊(ICM)が分断し、結果的に一卵性双胎になる確率が上がるリスクが懸念されます。レーザーによる熱の影響も最小限にするため、少ない照射でなるべく大きく開口することが重要です。にしたんARTクリニックでは透明帯開孔法を採用しています。

透明帯菲薄化法

透明帯菲薄化法(ZT法)は、透明帯の一部を薄くする方法です。

培養室からのメッセージ

基本に忠実、そして確実に。

アシステッドハッチング(AHA)にはさまざまな方法がありますが、にしたんARTクリニックでは細かく正確に行えるレーザーアシステッドハッチングを導入しています。特に、凍結融解胚移植の際、採卵周期に凍結した胚を融解することで透明帯が硬くなってしまった患者さまに、アシステッドハッチング(AHA)を行う事例が多いです。

アシステッドハッチング(AHA)はレーザーを使用するので、熱が発生します。にしたんARTクリニックでは、胚への影響が極めて少ない波長のレーザーを採用しているため、少ない回数のレーザー照射であれば問題はないと考えています。しかし連続で照射すると、どうしても熱の影響を受けてしまうため、適切な回数と量のレーザーを照射するように心掛けています。

にしたんARTクリニック 培養室マネージャー
小野寺 寛典

モニターで確認しながらレーザー照射を行うことから、ほかの方法よりも安全で正確といわれるレーザーアシステッドハッチングですが、繊細で相当な集中力を求められるシーンもあります。患者さまの大切な卵子をお預かりするからこそ、準備や手順をしっかりと守ることが最重要課題になります。私も先輩から指導を受け、現在はスタッフに基本を守ることの重要性を伝えています。実践的トレーニングとして、廃棄卵を使用した疑似アシステッドハッチングも行い、研鑽に励んでいます。

また、年齢の若い患者さまがアシステッドハッチング(AHA)を希望されることもありますが、元々高齢の患者さまよりも妊娠可能性が高いので、医師と相談しながら進めることをおすすめします。

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