卵巣刺激法(排卵誘発法)の種類

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卵巣刺激法(排卵誘発法)は、薬を多く使用して多くの卵子を確保する方法から、薬を使用せずに自然に発育した卵子を獲得する方法まで、さまざまな種類があります。

にしたんARTクリニックでは、体内にある卵子の数を推測できるAMH(抗ミュラー管ホルモン)検査の値や医師の診察により、一人ひとりの卵巣の状態に合った適切な卵巣刺激法を、下記の中から選択しています。

にしたんARTクリニックで主に行っている卵巣刺激法
ロング法(高刺激法)
ショート法(高刺激法)
アンタゴニスト法(高刺激法)
PPOS法(高刺激法)
マイルド法(低刺激法)
完全自然周期法

【卵巣刺激法1】ロング法(高刺激法)

ロング法とは、卵巣刺激法のうち、連日注射をして卵巣を直接刺激し、目安として10個の採卵を目指す高刺激法のひとつです。ロング法は、採卵を予定している前周期の高温期中期から採卵までの毎日、排卵を促すGnRHアゴニスト点鼻薬を、1日3回左右の鼻腔にスプレーします。
このように準備の開始が早く、採卵まで長期間にわたって薬を使用することからロング法と呼ばれています。

ロング法が向いている方

ロング法は、卵巣機能に問題がない方、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査でAMH値が高いことがわかった方を中心に、できるだけ多くの卵子を確実に保存したい方、仕事やプライベートの都合で採卵日を事前に特定し、計画を立てたい方などに行われる方法です。

ロング法の適用となる方
月経周期が25~38日の正常範囲内の方
卵巣機能が良好な方
年齢が若い方(20~30代)
AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が高い方

ロング法のスケジュール

1. 卵巣の状態や反応は人によって異なるため、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査や超音波検査を行って治療法を決定します。ロング法を実施することが決まったら、採卵の前周期である黄体中期の月経21目から採卵日まで点鼻薬を毎日投与します。

2. 月経の3日目から排卵誘発剤を6~10日間、毎日注射します。にしたんARTクリニックでは、hMG/recFSH(注射剤)などのホルモン剤から患者さまの状態に合うものを使用しています。

3. その後、卵胞の状態を見ながら、hCG注射をトリガー(排卵のきっかけ)とし、翌々日に採卵します。

ロング法のメリット

排卵日をコントロールしやすい

ロング法は、前周期から点鼻薬を使って排卵のセーブを始めるため、あらかじめ決めておいた日に採卵しやすいのが大きなメリット。仕事などで採卵日を事前に特定したい方に適しています。

多くの卵子を獲得できる可能性がある

ロング法では、複数個の卵胞の発育を促します。そのため、一度の採卵で多くの卵子を獲得することができます。ロング法の目標採卵個数は10個が目安です。

自然排卵してしまう可能性がほとんどない

ロング法では、脳の下垂体に働きかけるホルモンをしっかりと抑制してから排卵を誘発します。そのため、採卵のタイミングの前に自然排卵してしまう可能性は極めて低いです。自然排卵してしまうと採卵できなくなるため、重要なポイントといえます。

ロング法のデメリット

投薬量が多く、費用負担が重くなる

ロング法は、毎日3回の点鼻薬に加え、月経3日目から自己注射する排卵誘発剤、排卵のトリガーの自己注射と、投薬の量が多いのが特徴です。また、排卵を抑制することで、卵胞の成長に欠かせないFSH(卵胞刺激ホルモン)も影響を受けて抑制されるため、排卵誘発剤の使用がほかの卵巣刺激法よりも多くなります。投薬が多いため体への負担が気になるほか、ほかの卵巣刺激法よりも費用がかさむでしょう。

すべての方が適用になるとは限らない

ロング法は、卵巣を強く刺激して多くの卵子を獲得できる方法ですが、すべての方に適用となるわけではありません。若い女性に多い排卵障害のPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)がある方は、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクが高いため適用外になります。また、40代前後の高齢にあたる方や、卵巣内に残っている卵子の数が少ない方は、注射の反応が弱くなるため適用外です。

下垂体の回復に時間がかかる

ロング法では薬を使って下垂体の働きを抑制しますが、治療が終わった後も下垂体の回復には時間がかかります。下垂体の働きが抑制されたままの状態が長く続くと、妊娠できない、あるいは妊娠を維持することができない黄体機能不全を引き起こすことがあります。

【卵巣刺激法2】ショート法(高刺激法)

ショート法とは、毎日注射をして卵巣を刺激し、排卵を誘発する高刺激法のひとつです。ロング法に比べると薬剤の投与期間が短いため、ショート法と呼ばれています。

ショート法では、月経の初日から採卵前までGnRHアゴニスト点鼻薬を使用し続けてホルモンの分泌を抑え、月経の3日目から排卵誘発剤の注射をスタートします。短期間ですが、点鼻薬と注射は採卵まで欠かさず毎日行わなくてはなりません。採卵をすることが決まった段階で薬を中止します。

卵巣機能が低下している比較的年齢の高い人でも行えるため、ロング法にトライできなかった方も、ショート法ならチャンスがあります。成功すれば一度の採卵でたくさんの卵子を獲得することが期待できます。

ショート法が向いている方

ショート法は、卵巣機能が低下していてAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低く、ロング法をはじめとしたほかの方法では効果が得られなかった方、発育する卵胞数が少ない方に向いています。
また、投薬期間が短いため、長期的な通院が難しい方に適用することもあります。

ショート法の適用となる方
40代前後など年齢が高い方
月経周期が25~38日の正常範囲内の方
FSH(卵胞刺激ホルモン)の値が若干高めの方
月経周期初期の胞状卵胞数が少ない方

ショート法のスケジュール

1. 月経が開始したら、ホルモンの分泌を抑えるGnRHアゴニスト点鼻薬を使用し、採卵日まで続けます。

2. 月経3日目から連続で排卵誘発のための注射を開始。7~10日間、連続して行います。

3. 卵胞が一定の大きさに育ったらトリガーとしてhCG注射を行って、翌々日に採卵します。

ショート法のメリット

治療期間が短い

ショート法の最大のメリットは、強力な刺激で複数個の卵子の獲得が目指せる一方、治療期間が短くて済むことです。仕事やプライベートなどの都合で、通院回数に制限がある方には適しているといえます。

薬の使用量が少なくて済む

ロング法に比べて短期間で集中的に行う治療法なので、注射の回数、薬の使用量を減らすことができます。体の負担も少なからず軽減することができるでしょう。また、全体的な薬の使用量が少ないため、費用面もロング法より低く抑えられます。

卵胞を発育させやすい

月経開始時に排卵誘発剤を開始すると、一度下垂体ホルモンが抑え込まれることによってリバウンドを起こすため(フレアアップ)、卵胞発育に利用できます。

ショート法のデメリット

排卵スケジュールをコントロールしにくい

ショート法は、月経開始から排卵誘発剤の使用による刺激をスタートしていくため、排卵日が読みにくい面があります。計画どおりに採卵したい方には向いていません。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低いと、注射の回数が増えることも

ショート法は、ある程度AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が保たれている方に適応されます。AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低めの方は、なかなか効果が出ず注射の回数が増える可能性があり、それに伴って費用が増加します。
また、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値によっては、抑制効果が効きすぎて、卵胞発育が悪くなることがあることも知っておきましょう。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクがある

OHSSは、排卵誘発剤を使用することで卵巣が過剰に反応し、卵巣の腫れや腹水・胸水の貯留、血栓などを引き起こす疾患です。悪化すると、肺梗塞や脳梗塞といった生命に関わる病気に進展する可能性があります。従来に比べると減少しているといわれますが、排卵誘発剤としてゴナドトロピン製剤を使用した場合には、ほかの薬品に比べてOHSSが起こる確率が高まるといわれています。
ショート法では、卵子の成熟期にGnRHアゴニスト点鼻薬を使えず、hCG製剤(ゴナトロピン、フェルチノームなど)を使うため注意が必要です。

【卵巣刺激法3】アンタゴニスト法(高刺激法)

アンタゴニスト法とは卵巣刺激法のひとつで、ロング法、ショート法とともに高刺激法に分類されます。
アンタゴニスト法は月経3日目からFSH/HMG注射などを用いて体内の卵子を育て、ある程度大きくなったらGnRHアンタゴニスト製剤を併用して排卵を抑えます。この流れを、卵胞がしっかり発育して採卵できるまで続けるのが特徴です。

アンタゴニスト法は2006年に日本で導入され、メリットが多い卵巣刺激法として採用するクリニックが増えています。

アンタゴニスト法が向いている方

アンタゴニスト法は、あまり質の良くない未熟な卵胞を排卵する体質の人や、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクがあってほかの卵巣刺激法ができない方、ロング法やショート法で思うような結果が得られなかった方を含め、卵巣機能が極端に低下している方を除くほとんどの方に適用が可能です。

アンタゴニスト法の適用となる方
月経周期が25~38日の正常範囲内の方
LH値が高め(卵巣機能低下が見られる)の方
AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低い方

アンタゴニスト法のスケジュール

1. 低温期から卵巣刺激を開始するため、月経開始3日前までに受診します。胞状卵胞数、前周期の残りの卵胞の有無を超音波で確認するほか、ホルモン値の検査を行います。

2. 受診日から連日、卵胞を育てるためのFSH/HMGを注射。注射日数の目安は9~14日程で、毎日自宅で決められた時間にしっかり自己注射をすることができれば、月経開始から排卵日までの間に4~5回程受診するだけで済みます。

3. 月経8日目に超音波検査を行います。いくつかの卵胞のうち、一番大きいものが14~16mm以上の大きさに育ったら、排卵を抑えるアンタゴニスト注射を併用し、採卵できる状態になるまで複数の卵胞を育てていきます。

4. 月経11~12日目に超音波検査を行い、卵胞1個が16~18mm以上に達していれば、hCG注射やGnRHアンタゴニストGnRHアゴニスト点鼻薬をトリガーとし、翌々日に採卵します。

アンタゴニスト法のメリット

卵胞が発育しやすい

アンタゴニスト法は採卵周期の初期で下垂体ホルモンの抑制をしないため、ロング法やショート法に比べて卵胞が発育しやすいのが大きな特徴です。発育する卵胞が多ければ、採卵できる卵子も多くなります。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になりにくい

アンタゴニスト法は、ロング法に比べて排卵誘発剤の使用量が少ないこともメリットです。そのため、OHSSになりにくいでしょう。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクがあっても適用できる

OHSSのリスクがある方に対しては、OHSSのリスクが上がるhCG製剤を使わず、GnRHアゴニスト点鼻薬を使うことができます。OHSSのリスクが理由でほかの卵巣刺激法が行えなかった方も、アンタゴニスト法ならチャンスがあるといえます。

発育卵胞数が多くても自然排卵を抑えられる

自然排卵を抑えながら卵胞の発育が望めるため、発育卵胞数が多い場合も排卵リスクが低いです。自然排卵をおそれず、卵子の発育を待つことができます。

アンタゴニスト法のデメリット

治療費が高額になる可能性がある

GnRHアンタゴニスト製剤は、ほかの薬品に比べて値段が高めなのが特徴です。卵胞がなかなか発育しない場合、GnRHアンタゴニスト製剤の使用量が増え、費用が多くなる可能性があります。

まれに早期排卵することがある

排卵リスクが低いのがアンタゴニスト法のメリットですが、まれに早期排卵が起こることもあります。100%の精度ではないことを知っておきましょう。

排卵抑制に個人差が生じやすい

排卵抑制の度合いが個人によって大きく異なることもデメリットです。卵胞が予想よりも未成熟になったり、卵胞確認をこまめに行う必要が生じたりすることがあります。

【卵巣刺激法4】PPOS法(高刺激法)

PPOS(Progestin-primed Ovarian Stimulation)法は「黄体ホルモン併用卵巣刺激法」という意味の、比較的新しい卵巣刺激法です。その名のとおり、卵巣刺激に黄体ホルモン剤を併用して卵巣を刺激します。月経3日目からrFSH製剤もしくはHMG製剤で卵胞をしっかりと育てながら、デュファストンなどの黄体ホルモン剤を服用し、自然な排卵を誘起します。投薬期間が短いため通院回数が控えられる上、良好な胚に育つことが期待できる方法です。

PPOS法が向いている方

PPOS法は採卵の前周期からの準備が不要で、すぐに治療を始めることができます。投薬期間が短く、通院回数を抑えられるため、採卵や胚移植のスケジュールをしっかりと組みたい方や、不妊治療にかかる費用を抑えたい方に向いている方法といえるでしょう。
また、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクも最小限にすることもできます。

PPOS法の適用となる方
AMHの値が高い方
OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクが高い方
ほかの卵巣刺激法で採卵に至らなかった方

PPOS法のスケジュール

1. 卵巣の状態や反応は人によって異なるため、AMHや超音波検査を行って治療法を決定します。PPOS法を実施することが決まったら、月経3日目からhMG/FSH注射を行います。また、排卵を抑えるために、同時に黄体ホルモン製剤を経口投与し、採卵に備えます。

2. 卵胞の状態を見ながら採卵日を決定し、HCGをトリガーとして、翌々日に採卵します。

3. 黄体ホルモン製剤の影響で、ホルモンの値が着床に適さない状態なってしまうため、PPOS法では新鮮胚移植はできません。次の周期以降に、凍結胚移植を行います。

PPOS法のメリット

通院回数、治療費の削減につながる

PPOS法は治療期間が短いため、従来の治療よりも通院の回数が少なく済むのが大きなメリットです。スケジュールが組みやすく、忙しい方にぴったりな卵巣刺激法といえます。また、黄体ホルモン製剤はほかの薬剤に比べて安価であるため、不妊治療にかかる費用を抑えたい方にもおすすめです。

OHSS(卵巣過剰刺激症候)のリスクを抑えられる

PPOS法はOHSSのリスクを大幅に軽減することができます。ほかの卵巣刺激法が合わなかった方も安心です。

多くの卵子を得られる可能性がある

PPOS法は高刺激法に分類されていて、採卵で10個近くの卵子を得られる可能性があります。すべての良好胚を凍結保存し、子宮内膜が落ち着いた段階で胚移植することで、より確実な妊娠につなげることが可能です。

PPOS法のデメリット

新鮮胚移植はできない

PPOS法は、低温期のあいだに黄体ホルモン剤を経口投与するため、採卵後の子宮は着床に適さない状態になります。そのため、採卵と同じ周期に胚移植を行う「新鮮胚移植」は、原則行うことができません。採卵により得られた良好胚はすべて凍結保存し、次の周期以降に子宮内膜が整った段階で胚移植することになります。

新しい卵巣刺激法なので方法が確立されていない

PPOS法は、2014年に論文発表された比較的新しい卵巣刺激法です。新しい刺激法である反面、データが少なく、方法が確立されていないともいえます。
にしたんARTクリニックでは、臨床研究を重ねながら、PPOS法も有効な選択肢のひとつとして積極的に取り入れ、妊娠率の向上に寄与していきたいと考えています。

【卵巣刺激法5】マイルド法(低刺激法)

マイルド法とは、卵巣刺激法のうち、卵巣刺激が比較的緩やかな方法のことです。低刺激法とも呼ばれます。
質の良い卵子を1つでも多く採卵するために卵巣を刺激する点は高刺激法と同じですが、刺激の仕方が緩やかなのが特徴です。マイルド法を行うことで、完全自然周期法よりも採卵できる数は多くなり、妊娠率がわずかに上昇します。

マイルド法では、注射を一切使用せず、内服薬のみで排卵を誘発することも珍しくありません。状況に応じて注射を併用しますが、その回数はほかの卵巣刺激法より各段に少なく、体や経済的な負担を大幅に軽減することができます。

マイルド法が向いている方

マイルド法は、高刺激法のロング法、ショート法、アンタゴニスト法といった卵巣刺激法を試したものの効果がない方、高刺激法による副作用が不安な方に行われる方法です。
また、マイルド法は1回に採卵できる卵子は1~3個で、採卵する卵子の質が高くなるといわれています。そのため、比較的高齢でAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低く、高刺激法でも多くの採卵が見込めないと判断された方にも有用とされています。

マイルド法の適用となる方
AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低い方
30代後半から40代の高齢の方
OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクがある方

マイルド法のスケジュール

1. 月経3日目よりクロフェミン(クロミッド、セロフェン、フェミロンなど)を内服し、卵胞を育てます。

2. 卵胞の発育状態を確認しながら、必要な場合は少量の排卵誘発剤を注射。必要がない場合は内服薬のみです。

3. その後、卵胞の状態を見ながら、GnRHアゴニスト点鼻薬をトリガーとし、翌々日に採卵します。

マイルド法のメリット

注射の回数が少ない

マイルド法は内服薬が中心の治療で、注射を併用する場合もその数は少ないため、精神的・肉体的な負担を減らせます。また、薬品の数が少ないため、治療費が抑えられるのも特徴です。不妊治療にかかる経済的な負担を理由に、この方法を選ぶ方もいます。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の副作用の心配がほぼない

マイルド法は卵巣への刺激が優しく、採卵数は1~3個と限定的です。卵胞が数多く発育することによって卵胞が腫れるなどの症状が起こるOHSSを引き起こすリスクが低く、副作用の心配がほぼありません。

年齢が高くAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低めの方にも適用できる

マイルド法は、ほかの卵巣刺激法で卵子の成長が望めない方にも適用でき、内服薬と排卵誘発剤の注射の併用であれば、採卵のキャンセル率は比較的低めです。これまで卵胞・卵子が成長せず、採卵に至らなかった方も期待することができます。

マイルド法のデメリット

獲得できる卵子の数が少ない

マイルド法は卵巣への刺激が少ない分、獲得できる卵子の数は基本的に1個です。採卵前に排卵が起きてしまう可能性があることも押さえておいてください。

子宮内膜が薄くなることがある

マイルド法ではクロミフェン内服薬を使用することが多いですが、クロミフェンは子宮内膜が薄くなる傾向があります。子宮内膜が薄くなりすぎると、採卵した周期に胚移植する新鮮胚移植が行えないことがあります。

卵胞の育ち具合によって、刺激法が変更になることも

マイルド法では、卵胞が思うように育たないこともあります。その際には、卵巣刺激法を見直すことになり、当初の見込みより通院回数や費用負担が増えることも。体に合わないケースもありうることを知っておきましょう。

【卵巣刺激法6】完全自然周期法

完全自然周期法とは、卵巣刺激法の中でも排卵誘発剤も内服薬も一切使用せず、その名のとおり自然な周期に合わせて卵子を獲得する方法です。難治性不妊症の方や、比較的高齢で妊娠を希望される方など、卵巣機能が著しく低下していて、ほかの方法では効果が見込めない場合に適しています。できるだけ自然な妊娠をしたいと希望される方も、この方法を初期選択とする傾向があります。

完全自然周期法の場合、発育する卵胞は原則として1つのみです。「質の良い卵子をできるだけ多く取る」ことを目指す高刺激法とは違って、「質の良い1つの卵子を確実に取る」ことが完全自然周期法の目標です。

ただし、採血などのデータから、卵胞の状態などを想定するのが非常に難しいのが難点です。そのため、採卵時に排卵がすでに終わっていたり、採卵時に卵子が獲得できなかったりする可能性も高いといえます。

完全自然周期法が向いている方

完全自然周期法が向いている方は、できるだけ薬品を使わずに自然な排卵で妊娠したい方や、卵巣機能が低下していてほかの方法では良い反応が期待できない方です。薬で排卵をコントロールせずに採卵をするため、頻繁な通院が難しい方には向いていないといえます。

完全自然周期法の適用となる方
薬を使わない自然な方法で排卵・採卵に臨みたい方
30代後半から40代の高齢の方
卵巣機能低下のため、排卵誘発剤を使用しても卵子の発育が不良の方

完全自然周期法のスケジュール

1. 月経開始2~3日目に受診し、卵巣のチェックをします。

2. 月経8日目以降は頻繁に受診し、卵胞の発育、ホルモンチェックを行います。

3. 卵胞がしっかりと育っていることを確認できたらHCGをトリガーとし、翌々日に採卵します。

完全自然周期法のメリット

体への負担が少ない

完全自然周期法は、排卵誘発剤や内服薬を原則として使いません。そのため、排卵誘発剤に伴うOHSS(卵巣過剰刺激症候群)の心配がなく、体への負担を最小限に抑えることができます。

費用が抑えられる

完全自然周期法は薬品を使わない分、費用を抑えることができます。ただし、完全自然周期法で期待する結果が得られず、卵巣刺激法を変えた場合は別途費用がかかるので注意してください。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低くてもチャレンジできる

完全自然周期法は、卵巣機能が低下していて、排卵誘発剤を使用しても卵子の獲得見込みが低い方も妊娠にトライすることができます。ただし、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が低いから完全自然周期法しか選べないわけではありません。排卵誘発剤で治療効果がありそうな周期には、排卵誘発剤による治療を併用することも可能です。

完全自然周期法のデメリット

採卵しても卵子が取れないことがある

完全自然周期法の場合、採卵前に排卵してしまう場合があり、採卵時に良質な卵子が取れるとは限りません。一度に取れる卵子の数が極めて少なく、採卵できなかった場合は、あらためて採卵準備することになります。

採卵しても胚移植できない場合がある

採卵しても、すべての卵子が胚移植できる良質の卵子であるとは限りません。完全自然周期法で採卵できる卵子はそもそも母数が少ないため、採卵できても胚移植できないことがあることを知っておきましょう。

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