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子宮内膜スクラッチは、子宮内膜にあえて小さなひっかき傷を作り、傷の修復のために分泌されるインターロイキンなどのサイトカイン(たんぱく質)の働きを利用し、着床しやすい子宮環境を生み出す方法のこと。体外受精(IVF/ふりかけ法)、顕微授精(ICSI)における胚移植前だけでなく、人工授精(AIH)、タイミング法(タイミング指導)でも実施するクリニックもあります。
高度生殖補助医療(ART)において、良好な胚を移植しているにもかかわらず、複数回にわたって着床・妊娠に至らないケースがあります。着床不全の背景には、子宮内膜症や子宮内膜ポリープなどさまざまな理由がありますが、中には原因不明の再発性着床障害も存在します。そこで、近年原因不明の再発性着床障害に有効な治療法として注目されているのが「子宮内膜スクラッチ」です。
子宮内膜スクラッチは、複数回の胚移植を行っても着床・妊娠に至らない患者さまを対象に選択する先進医療です。
体外受精(IVF)の場合、胚移植を行う前周期の黄体期(月経中)に、子宮体がんの検査に使用するような細い棒状の専用器具で子宮内膜を少しだけこすってごく小さな傷をつけ、サイトカインを分泌させます。分泌したサイトカインは、受精卵が着床する際の接着剤の役割を果たすことが期待できます。
治療の所要時間は5分程度。子宮内膜をこする際に、人によってはチクッとした痛みを感じることもありますが、大きな痛みは生じません。次の周期に予定どおり胚移植を行い、移植後10~14日後頃に妊娠判定を行います。
子宮内膜スクラッチは、着床しやすい子宮内環境を故意に作り、何度も繰り返す着床不全を改善するために行うものです。原因不明の再発性着床障害に悩む患者さまにとっては、着床率や妊娠率の向上が期待できます。
子宮内膜スクラッチで子宮内膜につける傷は極めて小さなものですが、人によってはチクリとする程度の痛みを感じることがあるでしょう。また、治療後2~3日程出血が見られることもあります。いずれの場合も、着床や妊娠に影響を与えることはなく、過度に心配する必要はありません。
子宮内膜スクラッチは、先進医療のため保険が適用されません。にしたんARTクリニックでは、11,000円で行っています。