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LHサージとは?排卵が起こる仕組みを知って妊娠率を上げよう

LHサージとは?排卵が起こる仕組みを知って妊娠率を上げよう

不妊治療を行っている方なら、「LHサージ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。LHサージは、LH(黄体形成ホルモン)によって起こる排卵には欠かせない現象です。
この記事では、LHサージや排卵の仕組み、LHサージを検知する方法のほか、妊娠率が高まるタイミングなどを解説します。

LHサージはLH(黄体形成ホルモン)が大量分泌される現象

LHサージは、LH(黄体形成ホルモン)が急激に増加する現象のことをいいます。LHは、卵巣に働きかけて排卵を誘発し、排卵後の卵胞を黄体化させてプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌を促す性腺ホルモンです。LHの分泌量は月経周期の中頃に急激に増えるのが特徴で、増え始めてからは一気にピークに達します。このピークに達する現象がLHサージです。

LHサージは排卵のサインともいわれ、一般的にはLHが増え始めてから36~42時間後に排卵が起こるとされています。不妊治療を行う上で、性交渉や採卵の適切なタイミングを知るためには、LHサージを把握することがとても有効なのです。

LHサージと排卵の関係

ホルモンの循環とLHサージが起こる仕組み

LHサージは単独で起こることはありません。脳のホルモン分泌から始まる一連の循環の中で起こります。月経がある女性の体は、約1ヵ月に1回の排卵を正常なサイクルで行うために、下記のように体内でホルモンを循環させています。

女性の体内で起こるホルモンの循環

最初に動き出すのは、脳の視床下部から分泌されるGn-RH(ゴナドトロピン放出ホルモン)です。Gn-RHがゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)を分泌する指令を出すと、下垂体からゴナドトロピンの1種であるFSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌されます。FSHが卵巣に刺激を与えると、数十個の卵胞が成長し始め、卵胞からエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌されます。数十個の卵胞のうち、卵子となるのは1つの卵胞だけです。

1つの卵胞が成熟するとエストロゲンが最大量に増え、妊娠に向けて子宮内膜が増殖します。これを妊娠可能な合図と受け取って、排卵を促すLH(黄体形成ホルモン)の血中濃度が急上昇するのです。こうしてLHサージを迎えると排卵に至り、子宮内では受精可能な環境が作られます。

排卵後の卵胞は、黄体となってプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌し、子宮内膜をさらに厚くして受精卵(胚)の着床を待ちます。着床しなかった場合に、子宮内膜が血液と共にはがれ落ちる現象が月経です。 このように、女性の体の中では約1ヵ月のあいだにいくつものホルモンが循環し、相互に影響し合っています。

月経周期とホルモン分泌量の関係

月経周期は、ホルモン分泌量の変化によって4つの期間に分けられます。1回の月経周期は、月経開始日から次の月経開始日の前日までの期間です。月経周期の長さは人それぞれですが、一般的には25~38日間とされています。ここでは、月経周期の4つの期間について解説します。

月経期:月経1日目~月経終了まで

月経期には、妊娠に備えていた子宮内膜がはがれ落ち、血液とともに腟から排出されます。これは、前の月経周期で受精しなかったためにプロゲステロン(黄体ホルモン)が減少し、厚くなった子宮内膜を維持できなくなったためです。この間、腹痛や頭痛、下痢などの症状が見られることがあります。

卵胞期:月経の終わり頃~月経周期の中頃まで

卵胞期には、月経の開始と共に分泌され始めたFSH(卵胞刺激ホルモン)によって、卵胞が育ち始めます。卵胞が成長するに従いエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が増え、気分は安定していることが多い期間です。卵胞の発育と共にFSHの分泌量が減っていき、エストロゲンの分泌量は上昇し続けます。

排卵期:排卵日前後の16~32時間

排卵期には、卵胞の成熟によってLH(黄体形成ホルモン)が大量分泌され、LHサージを引き起こします。LHの分泌量がピークを迎えた12時間後くらいに排卵が起こるのが一般的です。
排卵された卵子が受精できるのは、排卵から24時間程度までといわれています。この期間には、少し腰痛を覚える人もいます。

黄体期:排卵後~次の月経開始日まで

黄体期には、LHの作用で排卵後の卵胞が黄体化し、プロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌します。エストロゲンの分泌量も高いままなので、子宮内膜はより厚くなって水分と栄養素で満たされ、体は妊娠を維持するのに適した状態です。気分は不安定になりがちで、イライラしたり、憂鬱になったりすることもあります。
妊娠していなかった場合は徐々にプロゲステロンとエストロゲンの血中濃度が下がり、次の月経周期が始まります。

LHサージを検知する3つの方法

妊娠を望む人や不妊治療を行っている人にとって、排卵日を予測できるLHサージを把握することは、妊娠成功率を高めることにつながります。ここでは、LHサージを検知する方法を3つご紹介します。

基礎体温を測る

LHサージを検知する方法のひとつが、基礎体温を測って記録することです。基礎体温は、朝目が覚めたときに寝たままの状態で測る体温のことで、排卵後にプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されると0.3~0.5℃程上昇し、高温期が14日程続きます。

また、人によっては基礎体温が上昇を始める直前にがくんと下がる日(体温陥落日)があり、体温陥落日とLHサージの開始が一致することもあります。基礎体温が上昇し始める日がわかれば、LHサージの開始を検知することができるのです。
ただし、基礎体温の上昇タイミングには個人差があり、体温陥落日がない人もいるため、基礎体温の測定だけで正確にLHサージを検知することは難しいかもしれません。

基礎体温の変化とLHサージの関係

尿中LH濃度を測定する

LHサージを検知する方法のひとつが、尿中LH濃度を測定することです。LHは尿に排出されるため、尿に含まれるLHの量でLHサージを検知します。一般的に、LHサージが始まるとされている尿中LH濃度は20mIU/mL以上です。尿中LHの検査キットは市販されており、一定濃度以上のLHが検出されると陽性反応が出るようになっています。

ただし、尿中LH濃度は人によって異なるため、日頃から多く排出されている人は陽性反応が続くことがあります。そのため、一度の検査でLHサージを見極めるのは難しく、数日にわたって測定することが必要です。
検査キットは薬局などで購入でき、手軽な検査方法ではありますが、基礎体温の測定などほかの方法と併用するのがおすすめです。

経腟超音波検査で卵胞の大きさを測る

LHサージを検知する方法に、クリニックの経腟超音波検査で卵胞の大きさを測定する卵胞モニタリングがあります。経腟エコーとも呼ばれる検査で、親指ほどの大きさをした経腟用プローブという器具を腟に挿入して行います。

卵胞は排卵が近づくにつれて成長し、排卵するときの大きさは20mm前後です。経腟超音波検査で卵胞の直径サイズを測定することで、排卵が近づいているかどうかを判断し、LHサージを検知することができます。
経腟超音波検査では子宮内膜の厚さや状態、卵巣の確認もできるため、総合的に子宮を検査することで不妊の原因を突き止めたり、病気があればその状態を確認したりすることも可能です。

LHサージと妊娠成功率が高まるタイミング

妊娠成功率を高めるには、LHサージを把握して正確な排卵日を予測することが大切です。排卵日が予測できれば、性交渉をいつ持つのかといった計画に加え、タイミング指導(タイミング法)や人工授精(AIH)、生殖補助医療(ART)での採卵といった不妊治療も効果的に行うことができます。
ここでは、排卵日の予測を活用した妊娠成功率が高まるタイミングについて解説します。

妊娠率が高い性交渉タイミングは排卵日の1~2日前

公益社団法人日本産婦人科医会が引用している「排卵日とタイミング時期の妊娠率」のデータによると、排卵日前後の性交渉による妊娠率は排卵の1~2日前が最も高く、25~30%という高い数字を示しました。
一方、排卵6日以前と排卵日翌日以降の性交渉では、妊娠率がゼロとなっています。排卵日より前の性交渉で妊娠率が上がるのは、精子の寿命が長く、約72時間は受精能力を維持できるためです。卵子の寿命は約24時間であるため、排卵されてくる卵子を精子が待っている状態が妊娠率を高めます。

排卵日とタイミング時期の妊娠率

※出典 公益社団法人日本産婦人科医会排卵日とタイミング時期の妊娠率

LHサージを検知した場合の受精タイミング

LHサージの検知によって排卵日を予測し、妊娠成功率を高めるには、LHサージを検知した当日と翌日に受精のタイミングを持ちます。排卵はLHサージの開始から24~36時間、LHサージのピークからは10~12時間で起こるといわれているため、検知の当日と翌日であれば、精子が卵子を待っている状態を作ることができます。性交渉による自然妊娠を目指す場合、LHサージが起こる直前から排卵後24時間以内であれば妊娠の可能性が高まるタイミングといえるでしょう。

LHサージに合わせた性交渉のタイミング

LHサージを誘起する排卵誘発剤

妊娠を叶えるためには、LHサージによって質の高い卵子が排卵されることが不可欠です。何らかの理由で排卵が行われていない場合、まずは正常な排卵が起こるように促す必要があります。なかなか妊娠しないという方は、不妊治療専門のクリニックを受診し、正常な排卵があるかどうか検査を受けてみましょう。
検査の結果、治療が必要だった場合、排卵誘発剤によって成熟した卵胞の排卵を促し、LHサージを引き起こす治療方法があります。排卵誘発剤には、「卵子を育てる薬」と「排卵を促す薬」「排卵を抑える薬」の3種類があります。

卵子を育てる排卵誘発剤

卵胞を成熟させてLHサージを引き起こす排卵誘発剤に、クロフェミンという内服薬があります。処方される薬品名は「クロミッド」「セロフェン」「フェロミン」などです。比較的軽い排卵障害や排卵の遅れ、排卵のばらつきがある方に有効とされています。
クロフェミンの効果が見られない場合は、ゴナドトロピン製剤を用いることもあります。ゴナドトロピン製剤は「ゴナピュール」、「hMGフェリング」、「フェリスチム」などの薬品名で処方される注射剤です。下垂体から分泌されるゴナドトロピンと同じ成分でできており、卵巣に直接作用して卵胞を発育させます。

排卵を促す排卵誘発剤

排卵を促す排卵誘発剤には、注射剤のhCG製剤があります。hCG製剤はLH(黄体形成ホルモン)と同じ成分なので、投与することでLHサージが引き起こされます。排卵が起こるのは、hCG製剤の投与から約36~48時間後です。hCG製剤には、自宅で自己注射できる「hCG注射」などがあります。
そのほかに、GnRHアゴニスト製剤という点鼻薬もあります。GnRHアゴニスト製剤は視床下部から分泌されるGn-RHと同じ成分でできており、卵巣に働きかけて排卵を促す薬です。長期間使用するとかえって排卵を抑える作用があるので、専門医の診断のもと使用期間に留意しながら使用します。

排卵を抑える排卵誘発剤

排卵誘発剤には、GnRHアンタゴニスト製剤というLHサージを抑えるための薬も含まれます。LHサージを起こしたいのになぜ抑制するのかと思うかもしれませんが、GnRHアンタゴニスト製剤の目的は、自然な排卵を抑えることで卵胞をしっかりと育てることです。排卵日をコントロールすることで質の良い卵子を育て、最適なタイミングで採卵することもできます。
ただし、年齢などによって卵子の数が少ない場合は卵胞がうまく育たず、未成熟になってしまう可能性もあります。

排卵誘発法について、詳しくはこちらのページをご覧ください。卵巣刺激法(排卵誘発法)とは?

LHサージを逃さず検知することが、妊娠成功率を上げる

LHサージは、排卵日を正確に予測するために有効な判断材料のひとつです。LHサージを把握できれば、排卵日を逃すことなくタイミング指導(タイミング法)や人工授精(AIH)、生殖補助医療(ART)における採卵などの不妊治療を行うことができます。
LHサージを検知する方法には、基礎体温の測定や尿中LH濃度の測定、経腟超音波検査などがありますが、どれかひとつの方法で確実に把握するのは難しいこともあります。妊娠成功率を高めるためには、不妊治療クリニックで医師の診断を受けながら、LHサージのタイミングを見極めていくことが大切です。

にしたんARTクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添い、お体の状態に合わせた適切な治療方法をご提案します。全国にあるすべての院で無料カウンセリングを行っておりますので、不妊にお悩みの方はお気軽にご相談ください。

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