不妊症

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抗精子抗体による不妊症とは?原因や治療方針を解説

抗精子抗体による不妊症とは?原因や治療方針を解説

抗精子抗体とは、体内で精子を異物と認識して攻撃する抗体のことです。この抗体は、妊娠率を低下させる原因になるため、妊娠を希望する場合は不妊治療の対象になります。

この記事では、抗精子抗体の原因や検査方法、不妊治療を行う場合の詳細について解説します。抗精子抗体が原因の不妊が疑われる方は、参考にしてください。

抗精子抗体は不妊の原因のひとつで自然妊娠は難しいため不妊治療が推奨される

抗精子抗体とは、精子を異物とみなし、攻撃する抗体のことです。この抗体は頸管粘液内、子宮内、卵管、卵胞液に生じるほか、まれに精液内にあることも確認されています。抗精子抗体がある場合、女性の体内で精子がうまく機能しなくなるため、自然妊娠では受精に至ることができません。抗精子抗体が原因の不妊は、不妊全体の3~4%といわれています。

ただし、抗精子抗体の発生は時期によって変動するため、自然妊娠の経験がある方でも突然、抗精子抗体反応が陽性になることもありえます。一方で、抗精子抗体をもつ方が、自然妊娠することもあるでしょう。

抗精子抗体のイメージ

抗精子抗体の検査

抗精子抗体を持っているかどうかは、血液検査で判明します。原因不明の不妊症の場合や、性交渉後の子宮頸管粘液内に残っている精子の数や運動の様子を確認するヒューナー検査(フーナー検査)が不良の場合、抗精子抗体を疑って検査することが多いでしょう。
前述のとおり、抗精子抗体は変動するため、一度陰性だったとしても、定期的な確認が必要です。
ヒューナー検査については、詳しくはこちらのページをご覧ください。
ヒューナー検査とは?検査の目的や方法、判定基準を詳しく解説

抗精子抗体が陽性となる原因

抗精子抗体が陽性となる原因は、男女で異なるメカニズムが関係しています。それぞれ、主な理由を見ていきましょう。

抗精子抗体が陽性になる女性側の原因

女性の体内では、本来精子が異物と認識されない仕組みがありますが、免疫システムの働きによって、精子を異物とみなす可能性が約3~4%あるとされています。これは、何らかの要因で免疫系が過敏に反応し、精子を攻撃対象と見なしてしまうことが原因です。この状況は特に、子宮頸管や子宮内で発生しやすいとされています。

抗精子抗体が陽性になる男性側の原因

男性の体内で抗精子抗体が作られるケースは、主に精巣や精巣上体に問題が生じた場合です。例えば、精巣や精巣上体の炎症、または外傷が原因で、精子と血液が混ざる状態が発生すると、免疫システムが精子を異物として認識し、抗体を生成してしまいます。このような異常が起きることで、精子の運動能力や受精能力が低下し、不妊につながることがあります。

抗精子抗体が陽性の場合の不妊治療の選択肢

抗精子抗体が陽性の場合、その抗体そのものを取り除いたり、無効化したりする治療法は現時点では存在しません。妊娠を目指す方法としては、体外受精(IVF/ふりかけ法)か顕微授精(ICSI/イクシー)が有効な選択肢とされています。こうした生殖補助医療(ART)であれば、抗精子抗体の影響の回避が可能です。

体外受精や顕微授精の有効性

体外で精子と卵子を受精させる体外受精や、精子を直接卵子に注入する顕微授精は、抗精子抗体の影響を完全に回避できる治療法です。これらの方法を用いれば、妊娠の可能性は十分に期待できます。特に顕微授精は、精子の運動能力が低下している場合にも適しており、抗精子抗体を原因とする不妊の有効な解決策となっています。

抗精子抗体による不妊症が診断された場合は、医師と相談しながら、自分たちに適した治療法を選びましょう。

人工授精(AIH)が難しい理由

人工授精(AIH)は、洗浄・濃縮した精子を子宮内に直接注入し、精子と卵子が体内で出会うための物理的なプロセスをショートカットする方法です。抗精子抗体が陽性の場合、子宮頸管を通らずに精子が子宮内に入ったとしても、子宮内膜や、卵子が待つ卵管内で精子が抗体の影響を受けてしまう可能性があります。妊娠成功率は低くなるため、人工受精は適応されません。

にしたんARTクリニックの生殖補助医療についてはこちらをご覧ください。
生殖補助医療(ART)

なかなか妊娠しないな、と感じたらまずは不妊治療専門クリニックへご相談ください

不妊の原因のひとつである抗精子抗体は、血液検査で調べないと判明しません。妊娠を希望するご夫婦(カプル)がなかなか妊娠しないな、と感じた場合は、早めに不妊治療専門クリニックに相談することをおすすめします。初期検査をおふたりで受けることで、不妊の原因を探ることができ、適した不妊治療を受けることが可能です。

もしも抗精子抗体が陽性の場合は、体外受精や顕微授精といった生殖補助医療が第一選択となるため、信頼できるクリニックを選ぶことが大切です。全国にあるにしたんARTクリニックでは、初めて不妊治療を始める方や、転院を希望される患者さまに丁寧なカウンセリングを無料で実施しています。お近くのにしたんARTクリニックに、ぜひご相談ください。

この記事の監修者

にしたんARTクリニック
胚培養士・品川院培養室マネージャー

小野寺 寛典

日本卵子学会生殖補助医療胚培養士。2012年より不妊治療専門クリニックで胚培養士を務め、多くの一般不妊治療、生殖補助医療にかかわる。2022年よりにしたんARTクリニック品川院培養室マネージャーとして、患者さまファーストの不妊治療にあたるほか、全国にあるにしたんARTクリニックの培養室スタッフの連携を推進し、スタッフの育成・指導、管理体制の改善にも貢献している。

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