不妊治療

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不妊治療の成功率とは?妊娠を叶えるためのポイントを解説

不妊治療の成功率とは?妊娠を叶えるためのポイントを解説

公的保険の適用によって、不妊治療の裾野は広がりました。「経済的な負担が軽減されたことで、治療が現実的になった」と感じている人も多いのではないでしょうか。
しかし、1回あたりの治療にかかる費用を抑えられても、不妊治療の期間が長引いて費用が積み重れば治療にかかる総費用は高額になるおそれがあります。不妊治療の費用負担を減らすには、成功率を高める工夫が必須だといえるでしょう。

そこで今回は、不妊治療の成功率について解説するとともに、成功率を上げるためのポイントを紹介します。

妊娠は年齢との関わりが大きく、不妊治療の成功率も年齢とともに下がる

妊娠するために必要な力である妊孕力(にんようりょく)は、年齢とともに低下します。これは、自然妊娠であっても、不妊治療で妊娠を目指す場合でも変わりません。

下記のグラフは、女性の年齢に対する妊孕率の変化を示したものです。

女性の年齢と妊孕力の変化

※出典 一般社団法人日本生殖医学会「女性の年齢による妊孕力の変化

妊孕力が低下した年代では、自然と不妊症が増加します。
具体的な数値による不妊の頻度は、25~29歳で8.9%、30~34歳で14.6%、35~39歳で21.9%、40~44歳で28.9%です。30歳を境として割合が2桁になり、自然に妊娠する確率が減っていることがわかります。

年齢とともに妊孕力が低下する理由

妊孕力が年齢とともに低下する理由は、加齢によって卵子の数と質が低下するほか、妊娠の妨げになる子宮内膜症などの疾患が増加するからです。下記で詳しく見ていきましょう。

卵子の数の低下

女性の体内で卵子が作られるのは、お母さんのおなかにいる胎児のときです。妊娠20週の胎児の時期が卵子の数のピークとなり、その後は減少に転じます。赤ちゃんとして生まれた後も卵子の数は減り続けるため、年齢を重ねるほど少なくなります。

卵子の質の低下

年齢を重ねると、卵子の染色体異常が増加します。染色体異常とは、本来2本のペアである染色体の本数が異なる、染色体の一部が入れ替わるような転座や欠損が起こる、不活化などの機能異常が発生するといった現象です。染色体異常のある卵子は、受精しても受精卵(胚)として成熟しにくく、流産の確率が高いとされています。

妊娠を妨げる疾患の増加

子宮筋腫や子宮内膜症など、妊娠に影響を与える疾患の発症率は年齢とともに増加します。これらは必ずしも不妊に直結するわけではありませんが、症状によっては卵管の閉塞や着床不全を引き起こし、不妊の原因となりえます。
また、子宮内膜の血流が悪い・子宮内に炎症による癒着があるなどの症状があると、子宮内に到達した受精卵(胚)が育ちません。

不妊治療の妊娠成功率はどのくらい?

ここまで、年齢とともに妊孕力が低下する理由を見てきましたが、不妊は女性によってのみ起こるわけではありません。男性側に不妊の原因があることも少なくないため、男性もいっしょに検査をすることが重要です。それでは、ここからは治療法別の妊娠成功率を見ていきましょう。

不妊治療は、タイミング指導(タイミング法)・人工授精(AIH)が行われる「一般不妊治療」と、体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)などが行われる「生殖補助医療(ART)」の、大きく2つに分類されます。
治療の結果を見ながら、タイミング指導→人工授精→体外受精→顕微授精という順にステップアップしていくのが一般的です。

不妊治療のステップアップのイメージ

タイミング指導の妊娠成功率

タイミング指導は一般不妊治療のひとつで、排卵日の予測から最も妊娠しやすいタイミングを割り出して性交渉を行う方法です。不妊治療のファーストステップともいえます。病院に行かずともタイミングを図って試すことはできますが、病院では経腟超音波検査で卵胞の大きさを確認し、より予測の精度を高めることが可能です。
不妊症でない人がタイミング指導に基づいて性交渉を持つと、1回の月経周期で16~18%の割合で妊娠するとされています。しかし、不妊症の人がタイミング指導で妊娠する確率は、初期の月経周期で5%、経過観察6ヵ月で50%、24ヵ月で60%であり、半年を過ぎると横ばいの状況が続きます。よって、タイミング指導を受けて1年を経過しても妊娠に至らない場合、次の段階の治療にステップアップするのが望ましいでしょう。

人工授精の妊娠成功率

人工授精は、タイミング指導とともに一般不妊治療に含まれ、排卵の時期に合わせて子宮内に精子を注入する方法です。タイミング指導で成果が出なかった場合や、精子に元気がなく子宮まで到達しにくい場合などに選択されます。

人工授精は自然に近い方法であるため、1周期あたりの妊娠成功率は5~10%と決して高くありません 。人工授精を4周期以上行った累積妊娠率は、40歳未満で約20%、40歳以上で10~15%でした。このことから、40歳以上では80%以上が人工授精では妊娠が困難であることがわかります。
3~4周期にわたって人工授精を試しても妊娠しなければ、次のステップである体外受精に進むことが推奨されます。

年齢別・人工授精施行回数と累積妊娠率

※出典 公益財団法人日本産婦人科医会「栗林先生・杉山先生の開業医のための不妊ワンポイントレッスン 10.人工授精 2.AIHの妊娠率

体外受精・顕微授精の妊娠成功率

体外受精と顕微授精は、一般不妊治療の次の段階である生殖補助医療に該当します。

2023年に公益社団法人日本産科婦人科学会が発表した調査の結果によれば、2021年には全国で49万8,140件の体外受精・顕微授精が行われ、6万9,797人が誕生しました。
全年齢の胚移植1回あたりで見る体外受精・顕微授精の妊娠成功率は、年齢によって多寡はあるものの、平均すると41.2%です。

※出典 公益社団法人日本産科婦人科学会「2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績

体外受精・顕微授精の胚移植1回あたりの妊娠成功率を年齢別に見ると、下記のとおりです。

年齢別・体外受精・顕微授精の胚移植1回あたりの妊娠成功率

  • 20代(30歳未満):53.4%
  • 30~34歳:50.2%
  • 35~39歳:43.3%
  • 40~42歳:31.6%
  • 43歳以上:19.1%

妊娠成功率は30代後半から50%を切るようになり、40代になると30%台前半まで低下します。43歳以上では20%以下です。

体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)では凍結胚移植のほうが妊娠成功率は高い

生殖補助医療(ART)である体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)の成功率は、1回の胚移植あたりの妊娠率、1回の胚移植あたりの分娩率、移植した受精卵(胚)の個数あたりの着床率などで算出されます。

公益社団法人日本産科婦人科学会の発表によると、体外受精・顕微授精の胚移植において「新鮮胚」と「凍結胚」を用いた場合、それぞれの妊娠成功率は下記のように異なります。

新鮮胚・凍結胚の妊娠成功率(2021年)

 新鮮胚凍結胚
移植回数32,959件239,428件
移植あたりの妊娠数6,990件87,131件
移植あたりの妊娠率21.2%36.9%
※出典 公益社団法人日本産科婦人科学会「2021年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績

新鮮胚と凍結胚は、体外受精・顕微授精の最終ステップである胚移植の際に用いられる受精卵(胚)の分類で、その違いは下記のとおりです。

新鮮胚と凍結胚の違い

  • 新鮮胚:培養後に凍結されることなく、良好なものが1~2個選択されて採卵時と同じ月経周期で子宮に移植されます。
  • 凍結胚:分割期胚または胚盤胞まで培養後、液体窒素で凍結され、採卵周期以降に融解して子宮に移植されます。

「新鮮胚移植」は、移植から妊娠判定までの期間が短いこと、費用が安価であること、胚に凍結融解の負荷を与えないことなどのメリットがありますが、採卵で子宮や女性ホルモンが敏感になっているため、成功率は低めです。

一方の「凍結胚移植」では、子宮環境を整えてから胚移植を行えるという利点があります。例えば、子宮内膜が薄い方や、月経不順などで排卵日が予想できない方、妊娠が成立すると症状が悪化する中程度以上のOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を発症している方または発症する可能性がある方には、凍結融解胚移植が行われます。

ただし、凍結胚は一度融解すると再利用できないため、来院時の体調確認は重要です。にしたんARTクリニックでは、来院時に患者さまの体調を確認の上で凍結胚を融解します。

新鮮胚と凍結胚について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
新鮮胚移植と凍結融解胚移植の違い

体外受精と顕微授精で妊娠成功率は変わる?

体外受精と顕微授精の妊娠率の比較については、公的なデータが発表されているわけではありませんが、体外受精で妊娠に至らなかった際に顕微授精へとステップアップするように、一般的には顕微授精のほうが妊娠成功率は高いとされています。

体外受精は卵子に精子をふりかける方法であるため、精子自身の力で卵子の中に入り受精するのに対し、顕微授精は胚培養士が顕微鏡で確認しながら、卵子に精子1個を注入して受精をサポートします。どちらも最終的には精子と卵子の力で受精しなければなりませんが、サポートがある分、顕微授精のほうが妊娠の成功率は高くなります。また、精子の数が少ない、精子の元気がないといった男性不妊の場合でも、良質な精子が1個でもあれば受精できる可能性があるのも、顕微授精の成功率が高い要因のひとつです。

公益社団法人日本産科婦人科学会の発表によれば、2020年の不妊治療件数約45万件のうち、体外受精は8万2,883件、顕微授精は15万1,732件で、件数自体も顕微授精のほうがかなり多くなっています。
妊娠成功率を参考にしつつ、メリットやデメリットをしっかり検討した上で治療法を進めましょう。

不妊治療の成功率を上げるために知っておきたいポイント

不妊治療の方法は、個人の状態や希望、不妊の理由などを加味し、最短で最善の方法を医師と相談しながら決めていきます。
ここからは、妊娠を早期に叶えるため、実践したいポイントを6つご紹介します。

早期にクリニックで不妊の原因を検査する

妊娠が成立しない理由は多岐にわたります。前述したとおり、加齢は不妊の原因のひとつですが、詳しく検査をしなければ本当の原因を突き止めることはできません。治療を早期に妊娠に結び付けるには、原因に沿った治療を選択することが何より重要です。

まずは、パートナーとともにクリニックを受診し、自分たちの健康状態、卵子と精子の状態を知ることから始めましょう。妊娠・出産を考えている女性向けの健康診断である「ブライダルチェック」がおすすめです。不妊治療は早く始めるほど成功率が上がるため、妊娠・出産の希望がわずかでもある場合は、早期に検査をして今後の計画を立てておくといいでしょう。
女性は、卵巣の中に残っている卵子の数の目安と卵巣の機能の現状を知るAMH(抗ミュラー管ホルモン)検査を行うと、治療のスケジュールやステップアップなどの具体的な方法も検討できます。

まずは今の自分の状態を把握して、妊娠に向けてどのようなライフプランがあるのか考えておくと、岐路に立ったとき、それを踏まえて決断を下すことができます。

規則正しい生活を送る

不妊治療の成功率を上げるには、規則正しい生活を送ることも重要です。
妊娠してからではなく、妊娠を考え始めたときから生活を変えていくといいでしょう。夜は早めに就寝し、毎朝同じ時間に起きる健康的な生活習慣を意識することから始めてみてください。

適度な運動を心掛ける

適度な運動をすると、代謝が改善されて血流が良くなり、生殖機能にも良い影響があります。やせすぎや太りすぎは妊娠に関わるホルモン分泌を滞らせる可能性があるため、日常生活に取り入れやすいウォーキングやヨガなどで体重をコントロールしてください。
特に肥満は、流産、早産、妊娠高血圧症候群などの原因にもなるため注意が必要です。

体を冷やさないようにする

冷えによる血行不良は、不妊の原因のひとつといわれています。
体を温める効果がある食べ物や飲み物を積極的にとり、体温を上げて卵巣や子宮の冷えを防ぎましょう。水を飲むときは常温にすることや、首・手首・足首の3つの首を温めることを意識すると体が冷えにくくなります。

ストレスケアに努める

ストレスは自律神経を乱してホルモンバランスを崩し、生理不順や無月経を引き起こす可能性があります。
仕事や人間関係のストレス、妊活そのものへのストレスをうまく解消できるよう、自分に合った気分転換の方法を探してみましょう。

食生活を改善する

1日3食を基本とし、栄養バランスの良い食事をとりましょう。多様な栄養素をまんべんなく取り入れることによって健康的な体づくりができ、卵子の質の低下を抑えます。

不妊治療の成功率を上げたいなら、まずは不妊治療専門のクリニックで相談を

不妊治療の成功率を高める上で、年齢は大きなネックです。成功率が高い治療法でも加齢によって難度が上がることはよくあるため、妊娠したいと思ったら早めに医師に相談しましょう。

にしたんARTクリニックでは、全国のすべてのクリニックで患者さまファーストの治療を行っています。カウンセリングは何回でも無料です。ストレスなく治療を進められるよう、お悩みに寄り添ってまいりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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