生殖補助医療
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SEET法とは、自身の受精卵(胚)を培養した培養液を保存しておき、胚移植する2~3日前に子宮内に注入する治療法で、妊娠率の向上が期待できます。どのような治療法なのか、実施した後に注意点はあるのか、気になっている方も多いことでしょう。
この記事では、SEET法の具体的な内容と流れについて詳しく紹介します。妊娠率の向上が期待できるSEET法以外の先進医療についても紹介しますので、治療法選択の参考にしてください。
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受精卵(胚)を培養し、胚移植を行うSEET法SEET法の目的とメカニズムSEET法の対象となる方SEET法の流れSEET法後の過ごし方は?SEET法以外の不妊治療領域の先進医療SEET法などの先進医療を不妊治療で実施するなら、にしたんARTクリニックへSEET法(Stimulation Endometrium Embryo Transfer)は「子宮内膜刺激術」ともいい、自身の受精卵(胚)を培養した培養液を凍結保存しておき、胚移植を行う2~3日前に子宮内膜に注入する治療法です。
SEET法を行うことにより、子宮内膜を着床しやすい状態に整えてから胚移植を行うことができ、妊娠率の向上につながることが期待されます。
なお、SEET法は不妊治療における先進医療のひとつです。
先進医療とは、厚生労働大臣が認める高度な医療技術を用いた治療法のうち、有効性・安全性を一定基準満たすものの、まだ保険適用の対象となっていない治療法を指します。
にしたんARTクリニックのSEET法については、こちらのページをご覧ください。SEET法について
先進医療は自由診療のため、2022年4月から保険適用となった人工授精(AIH)などの「一般不妊治療」、体外受精(Conventional-IVF/ふりかけ法)・顕微授精(ICSI)などの「生殖補助医療(ART)」との併用は原則としてできません。
ただし、実績を積んで確立されている治療であると認められた一部の先進医療については、保険診療との併用が認められています。
SEET法をはじめとした不妊治療に伴う先進医療への費用助成の取り組みは、さまざまな自治体で進んでおり、経済的な負担を軽減しながら最新の治療に取り組みやすくなりました。
例えば東京都では、1回の特定不妊治療(保険診療)と併せて実施した先進医療について、治療開始日の妻の年齢が39歳までの夫婦は6回まで、40歳から42歳までの夫婦は3回まで助成を受けることができます。
先進医療の費用負担については、こちらのページをご覧ください。
不妊治療における先進医療
自然妊娠では、受精卵(胚)は5~6日かけて子宮内膜に向けて移動し、成長した胚盤胞になる頃に子宮に到着します。この間、受精卵(胚)は子宮内膜に向けて「受精卵(胚)を迎えるための準備をしてほしい」というシグナルを送っています。
子宮内膜はこのシグナルを受け取ると、ふかふかで厚い状態になり、受精卵(胚)を受け入れて着床する準備を始めます。これと同様の仕組みを、培養液を注入することによって再現するのがSEET法の目的です。
体外受精(C-IVF)や顕微授精(ICSI)の場合、受精と培養は体外で行うため、受精卵(胚)が子宮内膜にシグナルを送る工程がありません。
受精卵(胚)の培養に使用した培養液には、このシグナルの元となる成分(主に成長因子など)が溶け出していると考えられています。そのため、この培養液を胚移植の2~3日前に子宮内膜に注入することによって、受精卵(胚)と子宮内膜の対話(クロストーク)が再現され、シグナルを伝えることができるのです。シグナルを受け取った子宮内膜は、自然妊娠と同様に厚くふかふかの状態になり、受精卵(胚)を迎えて着床するための準備を始めると考えられています。
二段階移植とは、同じ周期内に2回に分けて胚移植する方法で、受精後2~3日目の初期胚1個を先に移植し、同じ周期内の5日目に胚盤胞1個を移植します。SEET法と同じく受精卵(胚)が出すシグナルの仕組みを利用して、妊娠率の向上を目指す方法です。先に移植した初期胚が子宮内膜に向けてシグナルを届けてくれるため、着床に向けて子宮内膜が準備を整えることができ、妊娠率が向上すると考えられています。
しかし、二段階移植は受精卵(胚)を2個移植することになるため多胎になる可能性が高く、妊娠・出産のリスクが増がります。そのため、最近ではSEET法が検討されるようになりました。日本生殖医学会も、「多胎妊娠のリスクが高い35歳未満の初回治療周期においては、移植胚数を原則として1個に制限することが望ましい」としています。
※出典 一般社団法人日本生殖医学会「多胎妊娠防止のための移植胚数ガイドライン」
SEET法は先進医療のため、一般的な保険診療を受ける中で患者が希望し、医師がその必要性と合理性を認めた場合に行われます。主な対象者は下記のとおりです。
ここからは、SEET法の具体的な流れを紹介します。SEET法には準備が必要なので、希望する場合は採卵を実施する前に、医師やカウンセラーに相談しておきましょう。
体外受精(C-IVF)や顕微授精(ICSI)で得られた卵子とパートナーの精子を胚培養士が受精操作し、受精卵(胚)ができます。培養器で約5日間培養し、胚盤胞になるまで育ててから凍結保存しますが、SEET法を実施する場合、培養に使用した培養液も別途凍結保存します。培養液には、受精卵(胚)が培養される過程で排出した、シグナルの元となる物質が含まれています。
移植周期では、患者さまは通院時に超音波検査で子宮内膜の厚さを測り、薬剤で子宮内膜の状態を調節します。医師が十分な厚みがあると判断したら、胚移植の日が決定します。
決定した胚移植する日の2~3日前に、凍結しておいた培養液を胚培養士が融解します。培養液をカテーテルで吸い上げ、医師が子宮内膜に注入します。注入する培養液はごく少量で、患者さまに痛みはありません。これで、子宮内膜にシグナルを送る準備が整います。
SEET法を実施した2~3日後に、胚移植を行います。凍結しておいた胚盤胞を胚培養士が融解し、医師がカテーテルを使って子宮内膜に受精卵(胚)を移植して完了です。着床して妊娠が成立するのを待ちましょう。
胚移植について詳しくは、こちらのページをご覧ください。胚移植とは?
SEET法では、カテーテル挿入時にまれに出血し、2~3日程続くことがあります。SEET法を実施した当日は激しい運動や入浴は避けてください。
なお、注入する培養液はごく少量であり、すぐに子宮内膜に浸透するため、普段どおりの生活をしていても漏れてくるようなことはありません。2~3日後には胚移植を控えているので、あまり神経質になりすぎず、ストレスなく過ごすことが一番です。
アルコールは卵巣の働きを低下させる作用があるため、胚移植をする周期には飲酒は避けるほうが安心でしょう。性交渉は子宮収縮につながる可能性があるため、SEET法直後は控えることをおすすめします。
また、ウォーキングやサイクリング、軽いジョギング程度の運動は着床率を向上させる報告もある一方、高強度の運動は体への負荷が大きいため、運動はレベルのコントロールを心掛けてください。
規則正しい生活を送り、バランス良く栄養を摂る食生活を送ることで、胚移植後の着床率アップ、妊娠成立後の順調な推移が期待できます。
不妊治療領域で先進医療として認められている治療は、SEET法だけではありません。先進医療は、大きく「先進医療A」と「先進医療B」に分けられます。
先進医療Aとは、先進医療技術とともに、使用する医薬品や医療機器などが薬機法上で承認・承認・適用されている治療法のことです。人体への影響が極めて小さいとされていて、保険医療に移行する可能性が高いと考えられます。
使用する医薬品や医療機器等が未承認、あるいは薬機法適用外の治療法は先進医療Bに該当します。先進医療Aよりは保険医療に移行する可能性が低いと考えられます。にしたんARTクリニックでは扱っていません。
SEET法(子宮内膜刺激術)とは、自身の受精卵(胚)を培養した培養液を保存しておき、胚移植する2~3日前に子宮内に注入する治療のことです。培養液には、子宮内膜に受精卵(胚)を受け入れる準備を促すシグナルの元が含まれているため、妊娠率の向上を目指すことができます。
PICSI(ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)とは、成熟した精子がヒアルロン酸と結合する特性を活かし、正常な成熟因子のみを選択して顕微授精(ICSI)に用いる技術です。受精卵(胚)が成長しにくい方に有効とされています。また、胚移植後の流産率の低下も期待できます。
IMSI(強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別法)とは、1,000~1万2,000倍の顕微鏡を用いて、形態から質が良いと予想される精子を選定し、顕微授精(ICSI)を行う方法です。高倍率の顕微鏡を使うことで、精子の頭部内にある空胞まで観察することが可能です。
EMMA/ALICE法(子宮内細菌叢検査)とは、胚移植の実施日と着床のタイミングを合わせるために行う検査です。 子宮内の善玉菌が多いほうが着床率、妊娠率が高いとする報告にもとづき、子宮内フローラを健全な状態に近づけるために実施します。
ERA(子宮内膜受容能検査)とは、EMMA/ALICE法と同じく、胚移植の実施日と着床のタイミングを合わせるための検査です。子宮内膜が受精卵(胚)を受け入れる状態になっているかどうかを調べます。
子宮内膜スクラッチ法(子宮内膜擦過術)とは、胚移植をする前の子宮内膜に軽く人工的な傷をつける方法です。傷を修復するために分泌される成長因子によって、着床率・妊娠率の向上が見込めるとされています。
子宮内フローラ検査とは、子宮内膜の細菌環境を総合的に見る検査です。慢性子宮内膜炎に関連する10種類の病原菌がいる場合、着床不全や早期流産の原因になるため投薬で治療します。
インキュベータとは、母体の体内環境を再現した培養器のことで、タイムラプスインキュベータでは顕微鏡内臓のカメラで撮影をしながら培養することが可能です。培養中の受精卵(胚)を外気にさらすことなく、細胞分裂する様子を、内部カメラを通して観察することができます。受精卵(胚)に余計なストレスがかからないのが大きなメリットです。
二段階胚移植法とは、胚移植を行う同じ周期内に、2回に分けて受精卵(胚)を移植する方法です。先に移植した受精卵(胚)からシグナルを受けて、子宮内膜は受精卵(胚)を受け入れる準備を始めます。子宮内膜が着床しやすい環境に整った2~3日後に2つ目の受精卵(胚)を移植することで、妊娠率が高まることが期待できます。
SEET法は、培養液を活用して子宮内膜にシグナルを送り、着床環境を整える先進医療です。胚移植の2~3日前に培養液を注入するだけなので痛みもなく、患者さまの負担を抑えて妊娠率を高めることができます。
不妊治療において着床率向上を目指す先進医療をご希望の方は、にしたんARTクリニックまでお問い合わせください。
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