卵子凍結

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卵子凍結で後悔しないために、注意しておきたいポイントを徹底解説

「将来、パートナーができたときのために」「昇進してしばらくは妊娠・出産が難しいから」など、少しでも若いときの卵子を凍結保存し、将来の妊娠に備えるという社会的卵子凍結が注目されるようになりました。実際に卵子凍結を望む方、検討し始めている方がとても増えています。

しかし、卵子凍結は、妊娠を必ず保証するものではありません。将来後悔しないためには、卵子凍結のマイナス面も理解した上で実施を決めることが大切です。
この記事では、卵子凍結で後悔したくない方に向けて、卵子凍結で考えられる注意しておきたいポイントを中心に解説します。

卵子凍結を後悔しないために注意しておきたいポイント

卵子凍結には多くのメリットがある一方、注意しておきたいポイントも存在します。ここでは、卵子凍結を検討する上で注意しておきたいポイントを5つ紹介します。

卵子凍結の流れや各プロセスについては、こちらのページをご覧ください。卵子凍結について

凍結・融解により、卵子の質に影響が出ることがある

卵子凍結では、卵子の凍結・融解で卵子がダメージを受け、質の低下につながる可能性があります。

卵子凍結は、採取したときの年齢の卵子を将来にわたって維持し、将来、妊娠を希望したときのタイミングに備えるものです。卵子は年齢を重ねるにつれて質が低下し、妊娠率が低下する原因になるため、年齢が若いうちに卵子を凍結しておくことは非常に有用です。

卵子の凍結は液体窒素を使い、専用のタンクで-196℃の状態で安定的に保存します。しかし、凍結・融解のプロセスは自然妊娠にはないものであり、卵子にダメージが及ぶことは否めません。
卵子は受精卵よりも水分が多いため、凍結した際に水分が膨張して組織を破壊してしまうことがあるのです。これにより、融解した卵子の質が低下するリスクがあります。

長年の研究を経て確立された卵子凍結の技術をもってしても、現時点では凍結・融解に伴う卵子の質の問題を完全に解消することはできません。未受精卵子を凍結した場合、赤ちゃん誕生につながる卵子は、卵子1個あたり4.5~12%であることがわかっています。そのため、1回の妊娠・出産のためには10~15個の卵子を凍結しておくことが理想ともいわれています。

未受精卵子から赤ちゃん誕生に至る確率

妊娠を保証できるものではない

卵子凍結をすれば必ず妊娠・出産できるわけではないことも、卵子凍結をする前に知っておきたいポイントです。卵子凍結は、あくまでも将来の妊娠・出産の可能性を上げるための選択肢のひとつであり、妊娠・出産を保証できる治療ではありません。

体内から取り出して凍結保存した卵子が着床できる可能性は100%ではありませんし、妊娠・出産を考えた際、パートナーに男性不妊の原因があることも考えられます。仮に良質の卵子を凍結することができても、ほかのことが原因で妊娠・出産に至らない可能性があることも知っておきましょう。

副作用や合併症の可能性がある

卵子凍結では、採卵する際に副作用や合併症が起き、体に負担がかかる可能性があります。

手術をする際には、できるだけ多くの卵子を得ることを目的に排卵誘発剤を使うため、高頻度ではないもののOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こすことがあります。OHSSとは、卵巣が腫れたり、腹水が溜まったりする排卵誘発剤による副作用のひとつです。重症化すると、腎不全や血栓症といった重大な合併症を引き起こすこともあります。

また、患者さまによっては、術前の検査時の注射や、経腟超音波検査の際に痛みを感じることもあります。採卵前後の出血、感染症などもリスクのひとつといえるでしょう。
これらのリスクは、卵子凍結の治療を始める前に、対策を立てることで未然に防ぐことができます。医師とよく相談し、治療を進めることが大切です。

なお、将来凍結した卵子を使う段階で、出産年齢が上がることによるリスクがあることには注意が必要です。子宮筋腫や子宮内膜症などの疾患に罹患している確率が上がるほか、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病にかかりやすくなったり、早産が起きやすくなったりするといった問題もあります。

費用を高く感じることもある

卵子凍結にかかる費用に対して妊娠に至る確率は低く、費用を高く感じられることがあるかもしれません。

近年、不妊治療に関わる費用助成を設ける自治体が増加し、卵子凍結を望む女性にも費用助成を検討する動きが全国で進んでいます。しかし、2024年6月現在で、卵子凍結に対する助成金制度を実施しているのは東京都のみです。

卵子凍結は自由診療であるため、助成を受けたとしても経済的な負担は大きなものです。また、採卵で得られた卵子を凍結して保管する保管料も、毎年ランニングコストとしてかかります。凍結卵子を使用して妊娠するためには、生殖補助医療(ART)の顕微授精(ICSI)が必須であり、その際にかかる治療費は全額自費になることも視野に入れておかなければなりません。

卵子凍結を実施するか検討する際は、こうしたランニングコストや将来かかる費用面についてもシミュレーションすることをおすすめします。

凍結した卵子が使えなくなることがある

凍結した卵子は、妊娠・出産を希望するタイミングまでクリニックや提携機関で大切に保管しますが、完全には守ることができないことも知っておきたいポイントです。

凍結した卵子は、液体窒素を充満させた-196℃の専用タンクで超低温凍結保存します。理論的には、この状態で半永久的に卵子を保存することは可能です。しかし、外部からの予期せぬダメージは防ぎきれません。

例えば、地震や雷、台風などの自然災害でタンクが損壊したり、保管しているクリニックが経営破綻したりした場合、保存していた卵子を使えなくなることも考えられます。
卵子凍結を決断する際は、万が一の事態に対してどこまでの補償があるのか、バックアップ体制を含めて確認しておきましょう。

卵子凍結のメリット

卵子凍結の注意しておきたいポイントを理解したところで、メリットについても見ていきましょう。メリットは大きく、次の2つがあります。

妊娠・出産の可能性を残せる

卵子凍結の最大のメリットは、卵子凍結で現時点の卵子を残すことにより、将来的な妊娠・出産の可能性を拡大できることです。

女性は、卵子のもとになる原始卵胞を持って生まれます。生後、原始卵胞が新たに作られることはなく、年齢とともに減少の一途をたどります。同時に、妊娠・出産に耐えうる質の良い卵子も少しずつ減り、流産する可能性が高い卵子が増えていきます。
そのため、年齢を重ねると妊娠に至らなかったり、妊娠しても流産したりする可能性が高くなります。

女性の妊孕性(妊娠できる力)は、誰でも年齢を重ねるほど低下していくのです。卵子凍結をすることで、妊孕力の高い自分の卵子を将来に残すことができます。

ライフプラン選択の自由度が上がる

ライフプランを考える際の自由度が上がり、女性自身の意思を大切にすることができるのも、卵子凍結のメリットです。

妊娠・出産は、女性にとって人生を揺るがす一大イベントといえるでしょう。どんなにパートナーが協力的であっても、一定期間の休みを取る必要があり、キャリアに与える影響も少なくありません。妊娠中や産後の体調によっては、仕事への復帰が遅れることも考えられます。

仕事や趣味を大切にしている女性にとっては、「今、妊娠したらキャリアはどうなるんだろう」「今は子供を育てられないけど、何年か後ならチャレンジしたいかも…」といった、漠然とした不安を持つ方もいるかもしれません。

本来なら自然に任せるしかない妊娠・出産のタイミングを、ある程度コントロールできる卵子凍結は、女性が自分らしく生きるための手段のひとつといえます。また、若いときの凍結卵子があることが、現在および今後の人生の中で、精神的な支えにもなるでしょう。

卵子凍結の流れ

ここからは、卵子凍結の具体的なスケジュールを紹介します。にしたんARTクリニックの場合を例に、卵子凍結の流れを見ていきましょう。

卵子凍結のスケジュール

1.カウンセリング

卵子凍結では、カウンセラーによる事前のカウンセリングを必ず受けていただきます。治療の流れや、費用について説明も受けてください。疑問や相談にお答えすることも可能です。治療が始まった後も無料で、回数の制限なくご利用いただけます。

2.初診・スクリーニング検査

卵子凍結をすることが決まったら、医師が初診であらためて卵子凍結の説明を行います。その後、スクリーニング検査や術前検査を実施し、卵子凍結に向けて病気や異常がないかを確認します。

3.再診・採卵周期開始

初診時に実施した検査結果の報告や、卵子凍結のスケジュール説明を行います。多くの卵子を効率良く得るために、卵巣を刺激する内服薬や注射剤などを使用しますが、その方法や使用する薬剤については、医師が診察の上決定します。

その後、採卵する周期の月経が開始したら、月経2~3日目に来院し、経腟超音波検査、ホルモン検査(採血)を実施して卵胞を確認し、卵巣刺激の調節をします。採卵までは3~4日に一度来院し、採卵日を決定します。

4.採卵・凍結保存

経腟超音波で卵巣に針を刺し、卵胞液ごと吸い上げる採卵手術により体内から卵子を採取します。その後、胚培養士が卵子の成熟度を確認し、液体窒素タンクで凍結保存します。
採卵後はリカバリールームで、2~3時間程お休みください。その後、医師の診察と胚培養士による採卵結果の説明があります。

凍結保存した卵子は、クリニックで大切に保管します。その後、妊娠を考えるまで、クリニックへの通院はありません。にしたんARTクリニックでは、卵子の凍結は原則40歳まで、凍結した卵子の保管は50歳まで可能です。40歳以上の方で卵子凍結を検討している方は、まずはカウンセリングでご相談ください。

5.妊娠を望むようになったら、顕微授精(ICSI)・胚移植を行う

妊娠を望むようになったら、凍結した卵子を保存しているクリニックに連絡し、相談してください。手続きやクリニック指定の書類の提出が終わったら治療の準備に入ります。卵子を融解し、妊娠・出産に向けて顕微授精(ICSI)を行い、受精卵(胚)にして胚移植をします。

将来、凍結卵子を使って妊娠するために必要なこと

卵子凍結をしただけでは、将来、妊娠・出産に至ることはできません。将来、凍結卵子を使って妊娠するには、下記に挙げるいくつかのハードルがあります。

融解した卵子が受精できる状態であること

融解した卵子の発育は不確実で、何らかの要因がある場合や、融解時にダメージを受けた場合は受精できない可能性があります。最終的に受精卵(胚)にまで育つ数はかなり減ることを知っておきましょう。そのためにも、採卵する際に、できるだけ質の良い卵子を多く得ておくことが重要です。

パートナーに不妊の原因がないこと

凍結保存した卵子が正常でも、将来のパートナーに不妊原因があると妊娠には至りません。精子に異常がある、精子の通り道に問題があるといったケースがあることが判明したら、パートナーの治療をしてから顕微授精(ICSI)を実施します。

受精が正常に行われること

顕微授精(ICSI)では、胚培養士が凍結していた卵子を融解し、同じタイミングでパートナーが採取した精液から精子を取り出し、受精操作を実施します。理論上、卵子1つに対して正常な精子が1匹だけいれば受精できますが、 その成功率は100%ではありません。

胚移植できる状態まで受精卵が成長すること

受精卵(胚)は、細胞分裂をしながら成長します。胚移植できる「胚盤胞」と呼ばれる状態まで成長して、初めて子宮に戻すことができます。途中で成長が止まり、胚移植できないこともあります。

胚移植について詳しくは、こちらのページをご覧ください。胚移植とは?

着床後、初期流産を乗り越えること

妊娠12週未満の流産を初期流産といい、6~7人に1人は経験するといわれています。 初期流産は、子宮内膜に着床した受精卵(胚)の発育が停止することによって起こります。原因は染色体異常が多いとされていますが、加齢とともに初期流産の数も増え、原因がわからないことも少なくありません。出産に向けて、まずは初期流産を乗り越えることが必須です。

卵子凍結を後悔しないためのクリニックの選び方

卵子凍結を後悔しないためには、クリニック選びも重要です。下記のポイントを押さえて、より良いクリニックを選んでください。

不妊治療専門のクリニックを選ぶ

卵子凍結は、不妊治療専門のクリニックで実施するのがおすすめです。不妊治療で行う採卵や胚凍結の技術が、卵子凍結でも応用されるからです。また、将来妊娠を希望する際にも、スムーズに顕微授精(ICSI)や胚移植を実施することができます。
卵子凍結で後悔しないためには、専門的な技術や知識を備えている不妊治療を専門領域とする医師がいることを確認してください。

価値観が合うクリニックを選ぶ

卵子凍結や不妊治療において、クリニックの価値観との親和性はとても重要です。患者の話をよく聞いてくれること、悩みに親身に寄り添ってくれることなど、ご自身の希望に合った診療方針をとっているクリニックを選びましょう。

また、仕事をしながら通いやすい場所にあるか、診療時間が長いかどうか、土日祝も診療しているかどうかも確認することをおすすめします。

バックアップ体制が充実したクリニックを選ぶ

せっかく凍結した卵子が使えなくなるというリスクをできる限り低減するために、万が一の事態に対してどこまでの補償があるのか、バックアップ体制を含めて確認することをおすすめします。
また、凍結卵子は長期間にわたって保管をクリニックに任せるので、その保管方法や取り違え防止策、クリニックの経営基盤なども併せてチェックしておくと安心です。

卵子凍結で後悔しないために、
にしたんARTクリニックにご相談ください

卵子凍結には、メリットもありますが注意しておきたいポイントもあります。両方をよく検討し、自分にとって価値があると思える選択をすることが大切です。ただし、採卵も妊娠も年齢と関わりが深く、若ければ若いほど良いとされています。

にしたんARTクリニックでは、卵子凍結に向けた悩みについてもカウンセラーが相談にのります。実際に卵子凍結をするかどうかにかかわらず、卵子凍結をしようか迷っている方やわからないことがある方は、そのままにせず、まずはお気軽にご相談ください。

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