体外受精

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体外受精(IVF)のデメリットとは?治療の流れやメリットと併せて解説

体外受精(IVF)のデメリットとは?治療の流れやメリットと併せて解説

不妊治療でステップアップを検討している方の中には、なかなか体外受精(IVF/ふりかけ法)を始める決心がつかないという方も多いのではないでしょうか。不妊治療の選択や決断には、メリットとデメリットを含めた治療への理解が大切です。この記事では、体外受精とほかの治療方法との違いや、体外受精のメリット・デメリットなどについて、詳しく解説します。

体外受精(IVF)は体外で卵子と精子を受精させる不妊治療法

体外受精とは、卵子と精子を体外で受精させて子宮内に移植し、妊娠率を高める不妊治療のことです。体外で受精させる不妊治療法には、ほかに顕微授精(ICSI/イクシー)があり、体外受精と顕微授精を総称して生殖補助医療(ART)といいます。厚生労働省の「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」によると、生殖補助医療によって生まれた赤ちゃんは2021年には約12人に1人となるなど増加傾向にあり、日本でも一般的な治療になりつつあります。

体外受精は、一般不妊治療で妊娠に至らなかった場合に行うのが一般的です。しかし、年齢によっては体外受精から不妊治療を始める患者さまもいらっしゃいます。

体外受精(IVF)とほかの治療方法との違い

不妊治療は、一般不妊治療と生殖補助医療に大きく分けられます。一般不妊治療は、女性の体内で受精するタイミング法(タイミング指導)と人工授精(AIH)を指します。妊娠しやすいタイミングを図って性交渉を持ったり、人工的に精子を注入したりして、受精をサポートすることで自然な妊娠を促す不妊治療です。 生殖補助医療は、前述のとおり、女性の体外で卵子と精子を受精させて子宮に移植する、体外受精と顕微授精を指します。両者の違いは、受精方法です。体外受精では、ディッシュという容器内で卵子に精子をふりかけて受精させます。顕微授精は、質の良い精子を1つだけ選別し、顕微鏡下で卵子に直接注入して受精を促す方法です。

体外受精(IVF)のメリット

一般不妊治療や顕微授精に比べて、体外受精にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、体外受精の5つのメリットを、詳しく見ていきましょう。

1.一般不妊治療に比べて妊娠しやすい

体外受精の一番のメリットは、一般不妊治療に比べて妊娠しやすいことです。タイミング法や人工授精といった自然妊娠に近い不妊治療法で妊娠に至らなかった場合でも、体外受精では体外で受精させた受精卵(胚)を子宮に戻すため、妊娠の確率が高くなります。妊娠率が高まる分、一般不妊治療に比べて早期に妊娠することが可能といえます。

2.女性に不妊因子があっても妊娠しやすい

体外受精には、女性に卵管性不妊や排卵障害、免疫性不妊といった不妊因子がある場合でも妊娠する可能性があることもメリットの1つです。卵管性不妊は、卵管に何らかの異常があり、精子が通れず卵子までたどり着けない、あるいは受精しても受精卵(胚)が子宮まで降りられないことが原因となる不妊因子で、不妊女性の25~30%に見られます。体外受精では受精卵(胚)を直接子宮に移植するため、卵管を使用することがなく、卵管性不妊に対してメリットの大きい治療法です。また、卵巣刺激によって正常な排卵を促し、体外で受精させることから、排卵障害や卵子の免疫性不妊に対しても妊娠率の向上が期待できます。

3.男性不妊症でも妊娠の可能性がある

体外受精のメリットには、男性不妊症でも妊娠の可能性があることも挙げられます。男性不妊症の要因は、自然妊娠に必要な精子の量や、精子が卵子にたどり着けるだけの運動率を満たしていないことです。体外受精では卵子に精子を直接ふりかけるため、精子の移動距離が短縮され、受精しやすくなります。また、受精卵(胚)が着床しやすい状態になるまで培養して子宮内に移植するため、妊娠の可能性が高まります。(重度の男性不妊症の場合は、体外受精が行えず顕微授精1択となる場合もあります。)

4.顕微授精(ICSI)に比べて卵子の負担が少ない

体外受精は、顕微授精に比べて卵子の負担が少ないこともメリットです。体外受精の場合、受精する場所が体外というだけで、卵子と精子はみずからの力で受精します。一方、顕微授精の場合は、卵子に細いガラス針で精子を直接注入するため、卵子が傷つく可能性を考慮しなければなりません。卵子の状態にもよりますが、細胞膜に針が入ることで、卵子が変性してしまうリスクが数%程度あります。

5.複数の受精卵(胚)が得られる

体外受精のメリットの1つに、複数の受精卵(胚)が得られることがあります。採卵時に複数の卵子を体外に取り出すことができれば、それぞれ受精卵(胚)として培養し、子宮に移植しなかった分を凍結して保管しておくことが可能です。一度の胚移植で妊娠に至らなくても、新たに採卵する必要がなく、胚移植からチャレンジできます。

体外受精(IVF)のデメリット

いくつものメリットがある体外受精ですが、デメリットも考慮した上で検討することが大切です。体外受精への理解を深めるためにも、デメリットについて知っておきましょう。

卵巣刺激や採卵によって体に負担がかかる

体外受精のデメリットとして、卵巣刺激や採卵といった治療過程で、女性の体に負担がかかることが挙げられます。卵巣刺激は質の高い卵子が正常に排卵されることを促しますが、そのために使用される排卵誘発剤によって、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を発症する可能性があります。OHSSは、卵巣が過剰に反応することによって、卵巣の腫れや血栓などを引き起こす疾患です。また、採卵に必要な医薬品の服用や注射のほか、腟に器具を入れて行う採卵そのものも、体に負担がかかる可能性があります。

精子の数がたくさん必要になる

体外受精のデメリットに、たくさんの精子が必要になることがあります。体外受精は、1~複数個の卵子に対して精子をふりかける方法で行われます。ふりかけた後は精子が自力で卵子に入り受精する必要があるため、たくさんの精子が必要です。一般的には、1回の受精で10万~20万個の精子が必要とされていますが、元気な精子を集める処理過程で元の精子数よりも少なくなるため、なるべく多くの精子が必要となります。男性不妊症で精子の数が少ない場合、体外受精をしても受精率が上がらない可能性があるため、良好な精子が1個あれば受精可能な顕微授精が選択される場合もあります。

多精子受精の可能性がある

体外受精では多精子受精することがあり、デメリットの1つとされます。1回の射精では数千万~数億個の精子が放出されますが、精子の運動量には個体差があり、自然妊娠の場合、卵管までたどり着けるのは数百個程度ともいわれています。さらに、卵子に1個の精子が到達すると、ブロック機能が働いてほかの精子が入り込むことは基本的にありません。しかし、体外受精で卵子に直接精子をふりかけると、一度にたくさんの精子が向かうため、卵子のブロック機能をかいくぐって、多精子受精することがあります。多精子受精した卵子は一定の段階までしか成長しないため、子宮に戻すことができません。

通院回数が多くなりやすい

体外受精のデメリットとして、通院回数が多くなりやすいことが挙げられます。体外受精を行うためには、不妊の原因を探ったり、排卵の様子を確認したりする事前の各種検査が必要です。また、卵巣刺激や排卵誘発、採卵、胚移植などさまざまな治療が必要となり、どうしても通院回数が多くなります。

こうした状況から、にしたんARTクリニックでは平日でも通いやすい診療時間を設け、患者さまのご都合に合わせた治療スケジュールを立てています。各院は主要駅からアクセスしやすく、仕事帰りにも立ち寄りやすい立地です。

一般不妊治療より費用がかかる

体外受精は、一般不妊治療よりも治療費がかかることがデメリットです。体外受精は一般不妊治療に比べて治療のステップが多く、治療ごとに費用がかかってしまいます。そのため、一般的に体外受精はタイミング法や人工授精よりもトータルの費用が高くなりがちです。ただし、現在では体外受精にも保険が適用されるため、その負担は軽減されています。

体外受精(IVF)の治療の流れ

体外受精のメリットとデメリットを押さえた上で、実際にどのような治療を行うのかを見ていきましょう。なお、体外受精と顕微授精では、治療の流れはほぼ同じとなり、受精方法だけが異なります。体外受精の治療の流れは、下記のとおりです。

1.スクリーニング検査を行う

体外受精を実施する前に、男女共に不妊の原因を探ったり、排卵の様子を確認したりするための検査を行います。女性が行う検査には、超音波検査、感染症検査、甲状腺機能検査、AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査などがあります。男性が行う検査は、精液検査や精子の形態を見るクルーガーテスト、感染症検査、抗精子抗体検査などです。

2.自然排卵を防ぐために投薬を開始する

十分に発育した卵子を得るため、自然排卵を防ぐ投薬治療を開始します。自然排卵を防ぐ投薬治療は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)を患っている場合や、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクが高い場合に行われるのが一般的です。自然排卵を防ぐ治療方法には、アンタゴニスト法などがあります。
アンタゴニスト法について詳しくは、こちらのページをご覧ください。
採卵時のアンタゴニスト法とは?メリットやデメリットを解説

3.卵子を育てるための卵巣刺激を開始する

採卵に向けて、月経3日目頃から卵巣刺激を行います。卵巣刺激の主な方法は、高刺激法、低刺激法、自然周期法の3種類です。刺激する方法に応じて、経口薬や点鼻薬、自己注射などが処方されます。
卵巣刺激について詳しくは、こちらのページをご覧ください。
卵巣刺激法(排卵誘発法)とは?

4.採精する

採卵に合わせて、採卵当日に夫(パートナー)の精液を採取します。採精には、クリニックの採精室で採取する方法と、自宅で採取した精液を、女性が採卵時にクリニックに持ち込む方法があります。

5.採卵する

月経12~18日目には、成熟した卵子を卵巣内の卵胞から採取する採卵手術を行います。経腟超音波で卵胞の状態を確認しながら、卵胞に採卵針を刺し、卵胞液ごと吸引するのが一般的な方法です。
採卵について詳しくは、こちらのページをご覧ください。
採卵について

6.受精操作(媒精)を行う

胚培養士が、卵子と精子を受精させる受精操作(媒精)を行います。体外受精の受精方法は、ディッシュに置かれた卵子の上に精子をふりかける「ふりかけ法」です。

7.胚培養する

受精卵を子宮内と同じ環境になるよう調整された培養器に入れ、培養します。細胞分裂を始めた受精卵は「胚」と呼ばれ、分裂を繰り返して成長します。受精卵(胚)は着床しやすい状態になるまで培養され、その期間は当院では最長6日間です。

8.胚移植する

受精卵(胚)が着床しやすい状態まで育ったら、子宮内に戻す胚移植を行います。受精卵(胚)は、やわらかいカテーテルを使って、着床しやすい場所に丁寧に置かれます。胚移植には2つの方法があり、1つは採卵周期に行われる新鮮胚移植、もう1つは受精卵(胚)を凍結保存し、別の周期に融解してから行われる凍結融解胚移植です。
胚移植について詳しくは、こちらのページをご覧ください。
胚移植とは?

9.黄体補充

胚移植後は、受精卵(胚)が着床しやすくなるように子宮内膜を整える黄体補充の投薬を行います。使用する薬剤には貼り薬や内服液などいくつかの種類があり、プロゲステロン(黄体ホルモン)の数値から医師が判断して薬剤を決定します。体の状態を見て判断されるため、すべてのケースで処方されるわけではありません。

10.妊娠判定を行う

胚移植から1~2週間後に、医師による妊娠判定を行います。判定は血液検査と超音波検査で行い、陽性判定が出た場合は妊娠の経過を確認し、妊娠8~9週目に問題がなければ、産婦人科を受診します。

体外受精(IVF)には保険が適用される

2022年4月より、不妊治療にも保険が適用されるようになりました。体外受精も健康保険による治療の対象となり、費用面でのデメリットは大きく軽減されています。ただし、保険適用のためには下記のような条件があるため、事前によく確認しておきましょう。

不妊治療における保険適用の条件

  • 治療を開始する時点で、女性の年齢が43歳未満であること
  • 治療開始が40歳未満だった場合、回数は1子につき通算で6回まで
  • 治療開始が40歳以上だった場合、回数は1子につき通算で3回まで

体外受精(IVF)のメリット・デメリットを理解した上でステップアップを検討しましょう

体外受精には、一般不妊治療に比べて妊娠率が高いこと、男女それぞれの不妊因子に対して有効であること、顕微授精に比べて卵子の負担が少ないことなどのメリットがあります。その一方で、卵巣刺激や採卵による体への負担や、通院回数が多くなりやすいなど、生殖補助医療ならではのデメリットがあることも否めません。メリット・デメリットをよく理解した上で、納得して治療を進めることが大切です。

にしたんARTクリニックでは、患者さま一人ひとりに寄り添い、お体の状態に合わせた適切な治療方法をご提案します。全国にあるすべての院で無料カウンセリングを行っておりますので、不妊治療について聞いてみたい方、体外受精に興味がある方は、お気軽にご相談ください。

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