採卵について

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採卵前に知っておきたいことNeed to Know

採卵とは、体外受精・顕微授精(ICSI)で使用する卵子を卵巣から体外に取り出すことを指します。卵子のこと、採卵の方法、費用、スケジュールなどにしたんARTクリニックの取り組みをご紹介します。

卵子のメカニズム

卵子は、子宮の両側に1つずつ存在する卵巣の中に、複数の卵細胞に囲まれた状態で存在しています。この卵子と卵細胞を合わせて「卵胞」と呼び、卵巣はたくさんの卵胞から構成されています。そして、1個の卵胞の中に、卵子は1個しか存在しません。

卵胞が発育すると卵胞の壁が破裂し、その中の卵子が約1ヵ月に1回、卵巣の外に飛び出します(排卵)。たくさんの卵胞が同時に発育しますが排卵に至るのは1個だけであり、そのほかの卵胞は消滅してしまいます。つまり、自然周期排卵の場合、採卵数は約1ヵ月に1個だけということになります。
しかも、卵子のベースである卵胞は年齢とともに減少し、ほぼ0になると閉経します。当然ながら、卵胞が減少すれば卵子の数も減ってしまいます。

採卵の仕組み

採卵とは、体外受精・顕微授精(ICSI)で使用する卵子を卵巣から体外に取り出すことを指します。具体的な方法として、経腟超音波を使用し、モニターで卵巣内の卵胞の位置を確認しながら卵胞に針を刺し卵胞液ごと卵子を吸引します。

採卵手術では一度に複数の卵子を採取し、体外受精・顕微授精に臨みます。外科的な手術ではありますが、一般的には麻酔が用いられるので痛みは軽減されます。所要時間は約15〜20分です。

採卵には回数制限はありません。ただ、一度の採卵で複数の卵子を採取したほうが身体的・経済的な負担が少ないため、採卵前に薬剤などで卵巣を刺激し、卵子を成熟させる「卵巣刺激法(排卵誘発法)」が広く取り入れられています。

なお、採卵は排卵済みだと卵子を体外に取り出せないため、排卵前のタイミングで行います。排卵済みの場合は、人工授精(AIH)に切り替えることがあります。
ただし近年では、排卵済みの卵胞から卵子を回収して体外受精に成功したという研究報告もあり、現在も研究が進められているところです。
※出典 国立大学法人千葉大学「破裂済み卵胞から体外受精に成功」

排卵を誘発する卵巣刺激法

排卵を誘発する卵巣刺激法は、不妊治療のほか、月経周期を安定させる上でとても有効な手段として、多くのクリニックで取り入れられています。
卵巣刺激法は「高刺激法」「低刺激法」「自然周期法」の3種類に大別されます。刺激が高ければ高いほど採取できる卵子数は多くなりますが、身体的・経済的な負担が大きくなります。一般的には、病院でAMH(抗ミュラー管ホルモン)やホルモン検査でホルモン値を測定し、経腟超音波検査で卵巣の状態を確認した後に、各自に合った方法が医師から提案されます。

高刺激法

高刺激法とは、点鼻薬・内服薬・注射で卵巣を刺激する方法です。一度にたくさんの卵子を採取し、体外受精・顕微授精(ICSI)で出来た受精卵を凍結保存しておけば2人目以降の治療にも使用できるといったメリットがあります。デメリットは、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になるリスクが高まることや費用がかかることです。
なお、高刺激法は、「ロング法」「ショート法」「アンタゴニスト法」に細分化されています。

低刺激法

低刺激法では、内服薬・注射薬で卵巣を刺激します。薬による体への負担や経済的な負担は高刺激法よりも少ないものの、採卵数は少なめ。胚が保存できない場合は繰り返し採卵が必要になり、結果的に高額になることがあります。
低刺激法には、「クロミフェン法」などがあります。

自然周期法

薬は使わず、もしくは軽い排卵誘発剤の飲み薬だけを使うのが、自然周期法です。費用は安く抑えられますが、一度で採卵できるのは1~2個で、場合によって1つも採卵できない場合もあります。詳細を見る

自己注射について

排卵誘発法には、患者さまの年齢や卵巣の状態、AMH(卵巣予備能)の数値などによってさまざまな薬剤があり、薬剤によっては医師・看護師の指導にもとづいて自宅で自己注射をする方法があります。
自己注射は通院の回数を減らすことによって患者さまの負担を少なくするメリットがあります。詳細を見る

採卵の費用

2022年4月から不妊治療が保険の適用対象になったことに伴い、年齢などの条件付きですが、体外受精・顕微授精における採卵も、回数制限なく保険が適用されるようになりました。

保険適用後の料金は採卵数により変わります。採卵数は1個16,800円、2~5個で20,400円、6~9個で26,100円、10個以上は31,200円です。自費診療では0~5個で110,000円なので、半額以下での採卵が可能です。

ただし保険診療は、採卵から胚移植までの一連の治療に対して適用になります。将来の使用目的での採卵は保険対象外です。なお、保険診療で凍結した余剰胚がある場合、それらをすべて融解胚移植しないと、次回の採卵は保険適用にはなりません。

採卵の手順

卵巣刺激法で排卵誘発を行った際に行われる、採卵の具体的な手順についてご説明します。

1. 排卵誘発~トリガー

卵巣刺激法により排卵誘発を行います。内服薬で最も多く処方されているのはクロミフェンで、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生はほとんどありません。注射薬のほうが内服薬よりも育つ卵胞の数は多くなりますが、高刺激の場合注射の回数は増えますが、自己注射が可能な注射薬もあります。

超音波計測や血液検査により採卵日が決定したら、採卵の34~36時間前にトリガー(hCG注射と点鼻薬)を使用して、人為的にLHサージ(黄体形成ホルモンが一過性に放出される現象)を起こし、卵子を成熟させます。

2. 麻酔

採卵時には、一般的に麻酔を打ちます。「静脈麻酔」と「局所麻酔」の2種類があり、どちらにするかは医療機関の方針や本人の希望などにより異なります。静脈麻酔の場合、点滴で眠る薬を注入します。局所麻酔では、針を腟壁に刺します。
また、採卵する卵子が少ない場合や本人の希望により、無麻酔(座薬のみ)のケースもあります。
なお、麻酔をする場合としない場合で、それぞれ下記のようなメリット・デメリットがあります。

麻酔をする場合

麻酔は、痛みが最小限で済むのがメリットです。特に静脈麻酔では、眠っているあいだに採卵が終了します。なお、麻酔後は、数時間の安静が必要です。

麻酔をしない場合

麻酔をしないと、採卵時に痛みを伴うことがデメリットです。採卵後は安静が必要です。

3. 採卵

経腟超音波検査を行って排卵していないことが確認できたら、一般的には左右両方の卵巣から採卵を行います。経腟超音波プローブに穿刺針を装着し、適したポイントを確認しながら慎重に卵子が含まれた卵胞液を採取します。

4. 検卵

採取された卵胞液は、すぐに胚培養士のもとに運ばれます。卵子は顆粒膜細胞という細胞に包まれた状態で卵胞液に存在し、胚培養士は顕微鏡下で顆粒膜細胞に付着している血液などを取り除きながら、卵子を回収していきます。このとき、初めて卵子の数が明らかになるのです。超音波検査で観察している卵胞数は目安でしかなく、実際にその卵胞の中に卵子が入っているかは、顕微鏡下でしかわかりません。

胚培養士は卵子の質も観察します。採卵時の影響などにより卵子が変形していたり、成長が止まっていたりすると受精が難しいため破棄されます。

採卵された卵子について

採卵により採取した卵子は、顆粒膜細胞に覆われた状態です。これを、卵丘細胞卵子複合体(COC)と呼びます。顕微授精の場合は卵子に針を刺す必要がありますが、顆粒膜細胞があると針を正確に刺しにくいため、顆粒膜細胞を培養液中で取り除きます。

未熟卵と成熟卵

採卵で採れた卵子には、まだ受精の準備ができていない「未熟卵」と、受精の準備ができている「成熟卵」があります。未熟卵と成熟卵の判定は、胚培養士が顕微鏡で行います。
未熟卵は、1つの核が見えている(GV期)、核が見えない(MI期)状態です。一方の成熟卵は、減数分裂(有性生殖に関わる細胞を作る際に行われる細胞分裂)のときに出現する「極体」という小さな細胞が見えている(MII期)状態です。

培養器で、卵子を大切に育てます

胚培養士によって確認された卵子が未成熟で、精子を受け入れる状態ではない未熟卵だった場合は、培養液入りのシャーレやスポイト、卵子のサイズに加工したガラスのキャピラリーなどに収納し、培養器(インキュベーター)の中でしばらく培養して成熟を待ちます。

にしたんARTクリニックで使用する培養器「タイムラプスインキュベーター」は、子宮内と同じ環境(温度37.0℃、酸素5%、二酸化炭素5~6%)で、常に一定に整えられています。卵子をスピーディーに培養器に運ぶことで、卵子にとってストレスが少ない、より良い環境を実現しています。

なお、にしたんARTクリニックでは「培養室の見える化」 を推進しています。患者さまが培養室の内部をいつでもご覧いただけるよう、多くの院でガラス窓を採用しています。患者さまからお預かりしている大切な卵子を、胚培養士が丁寧に管理している様子をぜひご覧ください。

採卵日のスケジュール

にしたんARTクリニックでは、医師の診察のもと、卵子の成熟に合わせて採卵日を決定します。採卵日のスケジュールの一例をご紹介しますので、参考にしてください。
※8時に来院を指定されている患者さまを例にご紹介します。
※患者さまによって処置内容は変わりますので、目安として参考にしてください。
※当日の状況により、時間は前後いたします。

8:00 来院・受付

受付にて診察券と同意書を提出します。
精液をお持ちいただく場合は、スタッフにお渡しください。

8:15 着替え

リカバリールームにご案内。
ガウン・ショーツに着替えていただきます。

8:20 点滴投与開始

処置室へ移動して麻酔処置を行います(静脈麻酔の場合のみ)。

8:30 採卵室へ

採卵手術を実施します。所要時間は約15~20分です。

9:00 安静

リカバリールームで横になりゆっくりお休みいただくとともに、血圧・体温を測定します。
初回のお手洗いは、看護師が付き添います。

10:00 胚培養士からの報告

検卵を実施している胚培養士から、採卵数の報告があります。

10:15 医師による診察

体調や出血の有無などを医師が確認します。

10:30 会計・ご帰宅

麻酔を行った場合、ご自宅でゆっくりと過ごしてください。

※採卵当日は、化粧、ネイル・マニキュア、香水、コンタクトレンズを控えてください。また、飲水は当日7:00までは可能ですが、それ以降は絶飲食です。
※持ち物は、大きめのナプキン、飲み物、診察券、同意書。ご自宅で採取した夫(パートナー)の精液を持ち込む場合は、採卵当日の朝に採取された精液と夫(パートナー)の誓約書も必要です。
※採卵後は運動や飲酒、性交渉を避け、ご自宅で安静にする必要があります。

培養室からのメッセージ

採卵と同様に、採精もとても重要です。採卵は月に1回しかないとても貴重な日なので、男性も採卵日に合わせて体調に気を配り、精子の状態を整える必要があります。また、精液所見を良くするために、定期的な射精と採卵日前2~3日の禁欲期間をとるようにしてください。
採卵当日、女性が夫(パートナー)の精液をお持ちいただく場合は、外気温への対応が必要です。精子は寒すぎたり、温かすぎたりする環境下では運動能力が低下します。大切な精子がダメージを受けないよう、夏場は体温よりも高い環境での持参を避け、冬場は持ち運ぶ際にタオルで包んだり、保温ジャーに収納したりするなどの配慮をお願いします。

排卵誘発剤の副作用「OHSS(卵巣過剰刺激症候群)」

採卵の翌日からは普段どおりの生活を送っても問題ありませんが、生理2日目くらいの出血量がある場合、38℃以上の発熱がある場合、腹痛が軽減しない場合などは電話でお知らせください。翌日以降も体調不良が続くようなら、排卵誘発剤の副作用としてOHSS(卵巣過剰刺激症候群)*1を発症しているかもしれません。

OHSSでは、腹水や吐き気、喉の渇きなどの症状が現れます。OHSSが進行すると、点滴や腹水濾過濃縮再静注法(輸液や腹水を血管に戻す方法)による治療、入院治療が必要になります。PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)*2や中枢性無月経*3の方、排卵誘発時に成熟卵胞が10個以上出現した場合にOHSSが生じやすいといわれています。体の異変に気づいたら、必ず受診してください。

*1 OHSS:排卵誘発剤で卵胞が過剰に刺激されることによって、卵巣腫大や下腹部痛などの症状が起こる疾患。
*2 PCOS:卵巣で男性ホルモンが過剰に作られることで排卵しにくくなる疾患。女性の20~30人に1人の割合でみられる。
*3 中枢性無月経:中枢性の機能の異常により、卵巣の中で卵胞や卵子が正常に育たず、無月経や月経異常を生じている状態。

採卵をする時間帯Required Time

通常、クリニックでの採卵は午前中に行われます。
指定された時間にクリニックにご来院いただき、着替えや麻酔の処置をし採卵を行います。採卵後はリカバリールームで安静にしていただきます。その後胚培養士と面談をし、医師の診察後問題がなければお帰りいただけます。
基本的に午前中でお帰りいただけますが、当日中はなるべくの安静をお願いしています。
そのため午後の予定が入れにくかったり、丸1日仕事を休んでしまったり、時間的な制約が多くなってしまうこともあります。

患者さまファーストの夜間採卵Patient First

にしたんARTクリニック日本橋院品川院では、必要とされる方にとって採卵・卵子凍結のハードルを下げられるよう、クリニック内での運用を見直し、夜間に採卵・卵子凍結を行えるようにいたしました。
採卵方法や掛かる時間に変わりはありませんが、朝からコンディションを整えたり、術前まで通常通りにお仕事やご自身の時間をお過ごしいただけます。
また採卵の時間は夕方以降なので、丸一日お仕事を休むことなく採卵・卵子凍結が行えます。
日本橋院と品川院の夜間採卵についての詳細は初回カウンセリングにてカウンセラーへお問い合わせください。

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