培養(分割期胚から桑実胚、胚盤胞へ)

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培養についてEmbryo Culture

採卵した卵子と精子が正常に融合すると「受精卵」となり、細胞分裂を繰り返しながら成長していきます。生殖補助医療(ART)においては、体外受精(IVF)、あるいは顕微授精(ICSI)で受精が行われ、培養しながら受精卵が「分割期胚」で胚と呼ばれるようになり、「桑実胚(そうじつはい)」を経て「胚盤胞(はいばんほう)」に成長。この段階で子宮に戻して着床を促すことになります。

着床率を上げるには、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)でより良い受精卵(胚)を得ること、そして良い受精卵(胚)を良い胚盤胞へ育てることが重要です。良い胚盤胞になるかどうかは、それぞれの受精卵(胚)が持つ力と、お母さんのおなかの中に極めて近い発育環境で胚を育てる、「培養」と呼ばれるプロセスにかかっています。

にしたんARTクリニックでは、専任の胚培養士が採卵後の卵子と夫(パートナー)の精子をお預かりして受精させ、胚にストレスが少ない最新のタイムラプスインキュベーターを使って大切に培養しています。

良好な受精卵(胚)とは?

採卵した卵子が精子と融合しても、受精卵(胚)の状態が悪いと移植までたどり着くことができません。受精卵(胚)の状態には、卵子と精子の質が影響しており、必ずしもすべての受精卵(胚)が良好に成長するとは限らないのです。採卵できて受精に至ったにもかかわらず、次のステップに進めない場合があるのはそのためです。

では、良好な受精卵 (胚)とは、どのようなものなのでしょうか。
受精卵(胚)の良し悪しを判断するひとつには、分裂を繰り返した細胞の大きさで判断することができます。良い受精卵(胚)は、分裂後の大きさがほぼ均一で、着床を妨害する「フラグメント」と呼ばれる細胞のかけらが少なめです。
反対に、フラグメントが多かったり、卵子の大きさがバラバラだったりする受精卵(胚)は形態不良とされ、培養を続けても順調に育つことはまれです。なんとか培養を続けて子宮に戻しても、着床に至る可能性は低いでしょう。体外受精(IVF)を行った場合に、受精卵(胚)が子宮に戻せる状態にまで成長するのは、正常に受精したうちの50%ほどともいわれています。

受精卵(胚)の成長には投薬などの医療的な介入はできないため、成長を助けるための培養環境を整え、タイミングを図って観察を続けるしかありません。

培養の流れと胚の育ち方

ここからは、にしたんARTクリニックが行っている培養の流れと胚の育ち方についてご紹介します。

1. 採卵・受精

不妊治療において採卵した卵子が受精する能力を有する成熟卵子は、培養液の中で受精させます。受精の方法には、体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)があります。
培養液に入れた卵子と精子は、温度やガスの濃度、pHがお母さんの子宮内に限りなく近いタイムラプスインキュベーターに入れて培養をスタートします。

2. 培養1日目:受精の確認

培養を始めた次の日(1日目)に、まず受精したかどうかの確認をします。
核が2個確認できたら正常受精ですが、核が3個以上の場合は異常受精、核の確認ができず成長も見られない場合は未受精で、原則として移植に使うことはできません。受精した卵子は「受精卵」と呼ばれるようになります。

以前は培養庫から出して顕微鏡で受精したかどうかを確認していましたが、にしたんARTクリニックでは撮影機能のある最新の培養庫、タイムラプスインキュベーターを導入し、培養庫に入れたまま胚培養士が受精卵(胚)の様子を観察できるようになりました。これにより、温度や光、pHの一時的な変化によるストレスを受精卵(胚)に与えることなく、これまでは見ることができなかった時間帯の受精卵(胚)の様子も確認することができます。

3. 培養2~3日目:細胞分裂がスタート

培養1日目の1つの細胞から、2日目になると4細胞、3日目には8細胞と細胞分裂を繰り返していきます。2日目で4細胞前後、3日目で8細胞前後が良好な発育速度だといえるでしょう。分裂し始めた受精卵は「胚」と呼ばれるようになり、この時期の胚を「分割期胚」といいます。
ただし、この時点で良好であっても、順調に成長を続けるか否かを見分けることはできません。

4. 培養4日目:細胞同士がくっつき始める

胚が8~16分割くらいになると、細胞同士がくっついて「桑実胚」と呼ばれる状態になります。
活発に細胞分裂を繰り返す時期で、自然妊娠では桑実胚まで成長した頃に子宮内にたどり着くといわれています。

5. 培養5~6日目:胚盤胞になる

桑実胚が隙間を作りながら広がっていくと、「胚盤胞」の状態になります。成長速度は桑実胚によって異なり、5日目に胚盤胞になるものもあれば、6日目までかかるものもあります。
また、分割が止まったり、分割しても接着しなかったりする胚もあります。

分割期胚・桑実胚・胚盤胞の違い

不妊治療において、胚は成長とともに「分割期胚(初期胚)」「桑実胚」「胚盤胞」と名前を変えていきます。それぞれどのようなものか、詳しく解説します。

分割期胚(初期胚)

採卵2日目から3日目で、分割された数を目視で確認できる胚を分割期胚(初期胚)といいます。
良好な分割期胚は、受精してからの日数に見合った細胞の数で、フラグメントが少なく、大きさは均等できれいに分割されています。この段階での胚移植を「分割期胚移植」といいます。

桑実胚

桑実胚は、分割期胚となって増えた細胞がくっつき、ひとつのかたまりになった状態の胚のことです。一見すると桑の実のような見た目であることから桑実胚と呼ばれます。

胚盤胞

桑実胚からさらに細胞が増加すると、将来赤ちゃんになる部分である「内部細胞塊(ICM:inner cell mass)」と、胎盤になる部分「栄養外胚葉(TE:trophectoderm)」に分かれ、中心部分に空洞が生まれます。
内部細胞塊、栄養外胚葉ともに細胞数が多いのが良好な胚盤胞です。この段階での胚移植を「胚盤胞移植」といいます。

胚の成長プロセスと胚移植についてProcess

ここからは、胚の成長プロセスごとの移植について、詳しく見ていきましょう。

体外受精(IVF)による胚移植は、1978年にイギリスで初めて成功し、従来の不妊治療では妊娠が叶わなかったカップルの希望の光となりました。その後、胚凍結や顕微授精(ICSI)などが生まれ、不妊治療の技術や知見は飛躍的な進化を遂げています。

胚移植に伴う培養も、著しい進化を遂げた技術のひとつです。初期の胚移植では、培養液や培養技術に限界があり、培養器の中で桑実胚、胚盤胞まで育てることができませんでした。ですから、分割期胚を移植するしかなかったのです。
現在では、受精卵を良好な桑実胚、胚盤胞まで育ててから移植する方法が一般的になりました。特に胚盤胞移植は、自然妊娠によってお母さんのおなかで着床するときと同じ状態の胚を移植できるため、妊娠率が高くなります。最近の生殖補助医療(ART)では、胚盤胞まで育ててから移植するのが一般的な手法となりました。

ただし、現在の培養液や技術でも、適切な培養が行えるのは受精から144時間(6日)まで。成長速度がゆっくりで6日目以降に胚盤胞になる胚もありますが、正常胚盤胞として成長するものはまれです。移植するかどうかは、医師と胚培養士が胚を十分に観察した上で決定します。
なお、5日目に胚盤胞まで成長していれば、採卵と同じ周期内に新鮮胚を移植することが可能です。ただし、卵巣の腫れの状態や、子宮内膜の状態から医師が胚移植できると判断した場合に限ります。

分割期胚のグレード

胚移植の可否や優先順位は、胚培養士が胚の形態を見て胚の「グレード」を評価することで決まります。グレードの高い胚は着床・妊娠の確率が高いため、優先的に胚移植に使用していきます。
培養を始めた段階から、胚培養士は胚の観察を開始。分割期胚のグレード評価は数字が小さいものほど高く、高いグレードのほうが良好な胚盤胞まで成長する可能性が高くなります。

分割期胚は、「成長速度はどれくらいか」「フラグメントの量が多すぎないか」「細胞が均等に分割されているか」によって評価され、総合的なグレードが決まるもの。グレードは、胚移植や胚凍結ができるかどうか、また、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)でできた複数個の胚のうち最も良質なものはどれかを判断するときに使用します。

グレードのつけ方は胚の成長度合いによって異なり、分割期胚では「Veeck分類」と呼ばれる分類法が用いられることが多いでしょう。Veeck分類は、下記の評価基準に沿って、グレード1~5に分類します。

分割期胚の評価基準
成長速度はどれくらいか
受精後の日数と割球(細胞)の数を照らし合わせて、適切な数の割球(細胞)が育っているかを見ます。
フラグメントの量が多すぎないか
フラグメントが多いものは、グレードが低くなります。
細胞が均等に分割されているか
細胞の大きさが均等で、見た目がきれいに分割されているものが良い胚であるとされます。

基本的には、割球の数が適切でフラグメントがほとんど見られず、細胞がきれいに分割されている所見のない分割期胚がグレード1に該当します。
以降、所見が1項目あるとグレード2、2項目あるとグレード3と、次第に評価が下がっていきます。

Veeck分類のグレードとその内容

グレード1

割球(細胞)の大きさは均等。フラグメントはありません。

グレード2

割球(細胞)の大きさは均一ですが、フラグメントがわずかに見られる状態です。

グレード3

割球(細胞)の大きさが不ぞろいで、均一ではありません。フラグメントはない場合と、わずかに見られる場合のいずれかです。

グレード4

割球(細胞)の大きさが不均一で、フラグメントが25~50%程見られます。

グレード5

全体の約50%以上がフラグメントで、割球(細胞)の数がいくつあるのかわかりません。

分割期胚移植では、採卵から2日目から3日目の胚のグレードを確認し、適切な胚が移植に使用されます。
グレード1の胚は、細胞の大きさにばらつきがなくきれいに分割されており、フラグメントは一切見られません。染色体の異常も少ないことが多く、胚盤胞まで育つ可能性も高い胚です。

一方、グレード5の胚は、フラグメントが全体の50%以上を占めており、細胞を認めることができません。胚盤胞に至る前に発育が止まってしまう可能性が高い胚であると判断されます。
一方、グレードは、あくまでも生殖補助医療(ART)の成功確率を上げるために用いられるものであり、グレードの低い胚が妊娠に至ることもあります。また、妊娠が成立した後、胚のグレードが胎児の発育異常に影響することはありません。

胚盤胞のグレード

採卵から5~6日間培養した胚盤胞は、体外で培養できる最後の段階であり、順調に発育していれば妊娠の確率が高い胚です。そのため、胚盤胞のグレードのチェックは重要です。複数の胚盤胞を得ることができた際、妊娠が期待できる胚から移植できるよう、胚培養士が一つひとつの胚の状態を確認し、グレードを判定します。
ここでは、にしたんARTクリニックにおける胚盤胞を評価する基準についてご紹介します。

胚盤胞の成長ステージを数字で評価

にしたんARTクリニックで胚盤胞を評価する際に準拠しているのは、世界的な基準である「Gardner分類」です。胚培養士が胚盤胞の成長ステージと、赤ちゃんになる内部細胞塊、胎盤になる栄養外胚葉のそれぞれの見た目の形態を観察することによって評価し、判定しています。

にしたんARTクリニックでは、胚盤胞の成長段階を胞胚腔の広がりにより評価。「Blast1」から「Blast6」の数字は胚盤胞の発育の段階を示していて、「Blast4」「Blast5」の状態を胚移植・胚凍結の対象としています。Gardner分類は下記のとおりです。

胚盤胞のGardner分類
Blast1(初期胚盤胞)
胞胚腔ができ始めているが、全体の50%未満しかない。
Blast2(胚盤胞)
胞胚腔が50%以上まで広がっている。
Blast3(完全胚盤胞)
胞胚腔が全体に広がっている。
Blast4(拡張胚盤胞)
胞胚腔が拡大し、透明帯が薄くなっている。
Blast5(孵化中胚盤胞)
栄養外胚葉が孵化し、透明帯の外に出始める。
Blast6(脱出胚盤胞)
栄養外胚葉が透明帯から完全に脱出している。

内部細胞塊と栄養外胚葉の発育をそれぞれ3段階で評価

Blast3以上の胚盤胞の評価では、内部細胞塊と栄養外胚葉それぞれの発育の状態を観察し、胚移植に適しているかどうかを3段階で評価し、判断します。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。

内部細胞塊がA、栄養外胚葉がAの「AA」が良好な状態で、「CC」は移植や凍結の対象にはなりません。「AB」「BB」であれば、着床・妊娠に至る可能性は十分にあります。

内部細胞塊と栄養外胚葉の評価

移植する胚盤胞のグレード

複数の胚盤胞が得られたとき、どの胚から移植に使用するかは、胚培養士が胚盤胞を総合的に評価し、判定します。この判定の基準となるのが、胚盤胞のグレードです。状態の良い胚盤胞を移植することで、着床・妊娠につながりやすくなります。
ここでは、移植する胚盤胞のグレードについて、例を挙げて見ていきましょう。

胚盤胞のグレードの例

4AB

胚盤胞がBlast4、内部細胞塊はA、栄養外胚葉はBという評価です。拡張胚盤胞で、内部細胞塊・栄養外胚葉の状態がともに良い状態といえます。

5BB

胚盤胞がBlast5、内部細胞塊はB、栄養外胚葉はBという評価です。孵化中胚盤胞で、内部細胞塊・栄養外胚葉の状態がともに良い状態といえます。

グレードの評価と移植・凍結の判断はクリニックによって異なりますが、一般的にはグレードBB以上で、よりAAに近いものを良好な胚として移植・凍結に使う場合が多いようです。

ただし、胚盤胞のグレードでCがついていても妊娠に至ることはあり、分割期胚と同じくあくまでも目安とするのが望ましいと考えられます。
また、胚盤胞を含めた胚の状態には、患者さまの年齢も大きく関わってきます。年齢が高くなるほど妊娠率は低下するため、胚盤胞を評価する際は採卵時の年齢も加味する必要があります。

培養室からのメッセージ

培養室は、患者さまとパートナーの大切な卵子と精子が受精卵になり、胚となっていくプロセスを安心・安全な環境でお守りする場所。にしたんARTクリニックの中心部であり、受精率・発生率・着床率に大きな影響を与える極めて重要な設備です。

特に、受精卵、および胚となってからの「培養」は、お母さんの体の中に近い環境で行うことが発生率・着床率に大きな影響を与えるため、胚培養士一人ひとりが責任を持って大切に扱っています。

一口に「胚」といっても、卵子や精子の質、採卵時の患者さまの年齢などによって成長の度合いはさまざまです。グレードが高いにもかかわらず成長が止まってしまう胚や、低いグレードでも驚くほどすこやかに成長していく胚もあります。
また、胚盤胞まで無事に育って移植をしても、子宮内で無事に妊娠に至るかどうかはわかりません。私たちにできることは、培養室の環境をできる限りお母さんの子宮の中に近い自然な状態に整え、丁寧に育てることです。クリニックによってさまざまな方針がありますが、当院の培養室では、受精から数日が経ってグレード判断が低い場合も、培養を止めず6日目まで見守ることを基本としています。

どの段階で胚移植をするかは医師と胚培養士が相談して判断することになりますが、成長過程の状態がどうであれ、「ひとつでも多くの胚を移植できる状態に育て、妊娠・出産のサポートをしたい」という気持ちは変わりません。
当院の培養室はガラス張りで、受精卵(胚)の管理状態をいつでも自由にご覧いただけます。私たちといっしょに、受精卵(胚)のすこやかな成長を願い、見守っていきましょう。

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